悪か、正義か。
都内の私立高校。2年生の教室は、女子や男子が輪を作りそれぞれの話題で盛り上がっている。いつもはその和の中にいる飛鳥も、昨日の盗みの疲れで1人机につっぷしていた。
「なぁなぁなぁ聞いてくれよ京極!」
そう話し掛けてきたのは、飛鳥の中学からの親友、吉田和也だ。和也は常にハイテンションで、飛鳥はそのウザさにマイカイ振りまわされている。
「なんだよ朝からギャーギャーギャーギャー」
「また出たってよ!怪盗吉三!」
ドキ。
その名前に飛鳥は一瞬びくっとした。バレたのかと思った。
「へぇ、そうなんだぁ。和也さ好きだなぁ吉三」
平常心を保ち呟く飛鳥を、和也は気にもとめずにずかずかと話を続ける。
「ほら見てみろよ新聞一ページ特集組まれてよ、吉三ファンのブログなんて一秒ごとのコメントよ。カッコイイよなぁ吉三!!!」
何気なく飛鳥は和也が取り出した新聞に目をやる。
“またやった怪盗吉三!揺るぎない真実と引換に全ての財宝を盗む”
そうかかれた見出しの下に、俺が自撮りした写真と、麻薬所持の疑いで逮捕される佐伯の写真が掲載されていた。
「…しっかし、はえぇなぁ。警察もメディアも。」
「あ?なんか言った?飛鳥」
別に。飛鳥は再び視線を机に戻した。
「飛鳥、お前分かってねぇよ。怪盗吉三の見力をよぉ。」
いやいや、俺本人ですから。
「だってほら、こんなに別嬪で小柄で色白なのに、正体は男なんだぜ?なんでわかったかっていうと、吉三ってのは、歌舞伎の演目、三人吉三の女装して盗みをするお譲吉三から来てんだよ。すげぇよなぁ。忍び込むのも堂々とターゲットを自分の虜にしてから玄関から入るんだ。まさに平成の大怪盗っ!!」
はいそれはどーも。俺は認めたこともない吉三ファンクラブのインターネット版のコメントを見る。
“また出たって!吉三様!
よっ!平成の大怪盗(☝ ^ิω^ิ )☝
食品会社の社長を狙うってやばすぎでしょwww
でもその男麻薬やってたんだとさ~!
え?まぢ?ぢゃあお手柄じゃん♡さすが*°
でもやってる事は所詮盗み↯↯
(╭☞•́⍛•̀)╭☞それな
解ってねぇなぁてめぇら新聞の見出し見てみろよアホか”
賛否両論の話題が繰り広げられている。でも、俺は悪を裁くわけでも、純粋に盗みをしたいわけでもない。
怪盗吉三が生まれたきっかけは、もっと単純な事だ。そう、
あの1言からすべては始まった。
「なんさぁ、伝説の男になりたい。」
次回、怪盗吉三の生まれたきっかけはいかに…?そして新たな怪盗作戦が幕開く!
読んで頂き、誠にありがとうございました。




