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信じられないでしょうけど、天地の神のチェス盤です!

普段は、薄暗く、明かりのない不思議な空間がそこにある。


しかしこの空間は今、何処からか現れ、ふよふよと浮遊する多数のシャンデリアのようなもので煌びやかに輝いていた。


存在が何処に在るとは定義できない、不明瞭かつ不確定。


真っ白な『面』が在るだけで地面はなく、薄暗くともわかる白き空間に天を遮るものはない。


そしてその空間を仕切る壁もなければ、行き止まりもない。


そんな場所に一つ、縦に伸びたテーブルがある。


テーブルは長く、長く、ただ長い。


どこまで続くのか想像することすら許されないと言わんばかりの空間にどこまでも伸びている。


そのテーブルには、数えきれない量の料理が並んでいる。


しかして、一定間隔で並ぶ椅子は今はほとんど使用されてはいない。


神々の宴が開かれている会場となっているその場から、ほとんどの神が一時的とはいえ退室しているからだ。


「久しいな地獄神」

「んあ? 天の字」


わざわざこの場ではなく、最高神が居るべき場所で真面目に代理を務め切った青年『天空神』が、その役目を終えたからであろう、この場に姿を現し手を上げて地獄神に挨拶をした。


話しかけられた地獄神といえば、天空神へと顔を向けることすらせず、もぐもぐと実に美味しそうに食事をし、ハムスターのように頬袋を膨らませる食神の汚れてしまった口元を拭きながら、適当に返事を返した。


「よう」


感情豊かで悪戯好きの地獄神にしては珍しい、シンプルかつ簡素な受け答え。


「私も座っていいか?」


しかし天空神はその仕草に軽く苦笑いをしただけで、特に気分を害した様子もなく二人の前の席に座った。


「ちょいちょいちょーい。今楽しく食神ちゃんと食事をしてるところなんだからさぁ。空気読もうぜ天の字よぉ」

「お前は相変わらずだな。食神も。久しいな。息災だったか」

「うん。天空神も、元気そう」

「んんー? 久々に会った相手をいきなり口説くとか、下半身野郎は相変わらずお盛んだねぇ」


地獄神が暗さを隠そうともしない笑顔で毒を吐き、天空神の後ろに控えていた女神達が一様に顔を顰める。

一方の天空神は慣れているのか、頭が痛そうに目頭を揉みながらため息をついた。


「……本当に、相変わらずな奴め」

「地獄神、めっ」

「へいへーい。ま、謝らないけどねぃ〜」


この場にいた他の神、というか天空神に好意を寄せている女神達からすればとても気分が良いものとは呼べない会話だが。

このようなやり取りは、この三人、いや、この場にはいない残りの二人を合わせた五人にとっては日常のようなものだった。


だからこそ、天空神もそこまで気に止めることもなく目頭から手を離し、食神も慣れたように地獄神に人差し指を可愛らしく立てて優しく戒め、地獄神も頭の後ろで手を組んで、椅子の背もたれに体重を預けへらへらと笑い、反省のかけらも見せず右の耳から左の耳へとスルーパスを敢行する。


「しかし、食神が『神々の盤上』に参加するとは思わなかったな。なんの心境の変化だ?」

「おん? 何言ってんのお前。食神ちゃんは観戦だろ?」

「そうなのか?」

「じゃなかったらお前、こんなところで俺と飯食ってるわけねーべ」


他の神々は、宣告がなされたすぐ後に一時この場を離れ、各自プライベートな空間へと篭りに行った。

それも当然なことで、実質、ルールに認められた方法で神託(メッセージ)を我が子へと送ることができるのは今回が初なのだ。

神々の宣告(ルール)に定められたソレを、守る(・・)神の方が少ないのは確かだが。


それでも、コソコソせずに堂々としていられるのだ、今か今かと待ちわびていた瞬間でもあり浮き足立つのも仕方がないことである。

それだけ、神が我が子に言葉を残す機会は貴重な事なのだった。


「ううん、ワタシ、参加者」

「ほうほう。こーりゃ驚いた。そうだったのかー。ごめんごめーん。勝手に勘違いしちゃっよぉ〜。食神ちゃん神託(メッセージ)送りに行かないんだもんなぁ。なんでなんでー? ねえなんでよー、お兄さんに言ってみー、んー?」

「…………」


地獄神が面白そうに笑いながら食神に問いを投げかけるが、食神はピクリと体を震わせ、少し頬を染めた。


「地獄神、と、一緒、だから」


食神が意味ありげに、ちょっぴりもじもじしながら上目遣いで地獄神を見る。

ほほう、と顎に手をやりニヤニヤとする天空神も地獄神に視線を向けた。


等の地獄神といえば、自分を指差しきょとーんとした顔で「俺様ちゃんと?」などと呟いている。


「そっかそっかそっかー。俺様ちゃんもいられるからねー。なんだよなんだよ〜、嬉しいこと言ってくれるじゃ〜ないのぉ〜。おー、よしよし〜。いい子いい子ー」


そう言って笑顔で食神の頭を撫でた。

自分に向けられた言葉の意味を理解していない残念な神であった。


「……はぁ」

「あん? どしたいため息なんてついて」

「地獄神……お前という奴は……な、なぁ、食神よ」


天空神は呆れ果てたと言わんばかりの表情を浮かべ、いつも控えめな食神にしては頑張ったのにと、どんな言葉をかけようか迷いながら食神に声をかけようとし。


にへら、と緩みに緩みまくった食神のにやけた顔を見て絶句した。


(食神よ、お前はそれでいいのか……?)


悲しそうな顔どころか、今が世界で一番幸せの絶頂期ですと言わんばかりのふにゃっふにゃの笑顔である。


自慢ではないが異性との関わりや経験は豊富であると思っている天空神をして、食神の思考を一向に理解できなかった。

乙女心とは、やはり男では永遠にその深淵に到達することはできない無限の迷宮であると改めて実感した瞬間であった。


(ま、まぁいい)


いくら考えても泥沼であると、今までの経験から察した天空神は思考を切り替え、ここにきた本当の目的を果たそうと行動を始めた。


「食神はともかく、お前は行かないのか地獄神」

「俺様ちゃんはなー、子がなんか意識不明でさ。まぁ、俺様ちゃんの力を無理やり引きずりだしちゃったから体がヤベー状況になるのも納得だが。なんとか安定したっぽいけど、取り敢えずまだなぁ」


地獄神がしばらくはこの場を離れるつもりがないということを確認し、天空神は口を開く。


「時に地獄神、お前は今回の『神々の盤上』、強制参加組ではなかったよな」

「おう。俺様ちゃんは自由参加型で参加したってー、ことになってんなぁ」

「……やはりか」

「なんだなんだー? なんでお前がそんなこと知ってんだよ?」

「容易に想像がつく……『死神』が、自由参加で参加したからであろう。今まで一度だって、強制参加に召集されることも、自由参加で参加することもなかったあの姉弟(ふたり)が」


地獄神もある程度は想像できたことであるため驚きはしない。

しかし天空神が、今、この場で、なぜ、その話を始めたか。

そこに少々の違和感を感じた地獄神は、目線のみで『何が言いたい』と天空神に語りかけた。


天空神もまた、通じたことをありがたいと思い一度目を瞑り。


他の神に気取られぬよう気を使い天空神は自らの神威権能すら行使して地獄神に耳打ちする。

その行為は、地獄神のすぐ傍にいた食神が、ギリギリ把握出来るか出来ないかというほどのレベルの絶技であった。


「『創生神』には、気をつけろ」

「あぁ?」


天空神の言葉に、食神がガタリと反応し目を見開き、地獄神の目がスッと細められる。

その二人の反応を、なんの表情も感じられない目で見つめた天空神は、一度目を閉じ、ふっと表情を柔らかくさせてから、一度パチンと指を鳴らした。


「そうだな。地獄神。チェスでもどうだ? 『神々の盤上』の前哨戦とでも洒落込もう」

「…………俺様ちゃんに勝てると思ってんのかね? ボコボコにして気分良くなっちゃおうかなぁっと」


天空神付きの低級の神が、数人がかりで、一つのチェス盤を持ってきた。

そのチェス盤と天空神を一度視界に収め、ほんの数秒でありとあらゆる思考を巡らせた地獄神がニヤリと口元を歪ませて同意を示す


「お前はチェスはそこまで経験があるわけでもなかろう。ハンデだ、先手はくれてやる」

「確かに確かに、俺様ちゃんはチェスより将棋の方が得意だが……あんまナメてっと痛い目見んぜ?」


二人が対面に座り、地獄神は特に悩む様子もなくニヤニヤと笑いながら軽快に駒を動かす。

一見何も考えていないような行動に見えるが、地獄神の頭の中でもう既に『勝ち』まで『読んで』の行動だった。

天空神もまた、地獄神が『読んで』いるであろう『勝ち』を『読み』、それに策を加え自らの『勝利』の道筋を『読み』、駒を動かす。

このような動きを見せる二人であるが、二人の思考はこんなところに割かれてはいなかった。


チェスの駒を無言で動かしながら、二人は『盤の上で繋がった回線』を用い会話を行う。


「『あのクソビッチの話をするとはねぇ……お前も嫌ってただろうに、どういう了見かね天の字よ』」

「『元最高神、いや、この場はあえて時空神と呼ぼうか。時空神の様子がかねてより少し変でな。個人的に気になったため調べた。なにより、今回の『神々の盤上』。おかしな点が多過ぎる」

「『時空神ちゃん?』」

「『時空神はこう言った、『我が真名【クロノス】の名において、『神々の盤上』を執り行う』とな」


その言葉を聞いて、地獄神はニヒルな笑みを浮かべ、にっしっし、と声を出して笑った。


「『神の真名を使ったのか……時空神ちゃん、無理するねぇ。つうか天の字ぃ。いつになったらクソビッチの話に戻んのかね?』」

「『安心しろ、今からだ。まだ、決定的な確信がある訳ではない。だが、奴の『神力』に限りなく近い力の残滓が、ある場所で検知されたことが判明した』」

「『…………成る程ね』」

「『落ち着け。お前の気持ちもわかるがな。まぁ、ここまで言えばもうわかったであろうが、そのある場所というのが』」


そして天空神は繋げる。


地球、であると。


「『奴がなにを考えているのかわからんが、もし奴が、復活を果たし、力を取り戻そうとしているのなら』」

「『神々の盤上を執り行うことで、あのクソビッチの力の大元になる強い精神力を持った奴らを出来るだけこっちの世界に引きずり込んで、俺たちの子にする事でクソビッチの干渉から防ぎ復活を阻止しようとした、ってか? はいはいはいはーいっとぉ、チッ、あのビッチが……ん?』」


地獄神が悪態を築こうとしたところで、袖を引っ張られてその原因へと目を向ける。

すると袖の先には食神がおり、食神はちょっぴり悲しげな顔で言った。


「『仲間はずれは、やだ』」


どうやら地獄神に触れたことで、食神にも回線がつながったようだ。

二人に念波が届き、ふたり同時に柔らかい笑みを一瞬浮かべ、天空神は直ぐに真面目な顔に、地獄神は飄々とした表情に戻る。


「『あー、えっとだねぇ、食神ちゃーん』」


地獄神は早速とばかりに話を切り出し、天空神との話をざっくりとだが食神に伝える。

食神は、お世辞にもポーカーフェイスが得意とは言えない。

このような話を聞けば言わずもがな、目を見開き、体を震わせ、俯いた。


幸運なことといえば、あたりにいる神からは、地獄神と天空神のチェスが凄まじくそれに見入っているのだと勘違いしてくれたことだろうか。


「『ありえない、そんなの、だめ、ありえない、だって、だって、アレは』」


食神が震えていたのは、強い悲しみと強い怒り故だった。

二人はその理由が痛いほどわかる。

地獄神が自らの手を、自分の服の裾を握って震えている食神の手に添えて、きゅっと握った。


「『時空神が仕事から逃げたと言ったが、あれは方便だ。現時空神すらも動員し、二人で時空の彼方まで奴の痕跡を探しに行った』」

「『……ま、今回の神々の盤上、死神さんたちが参加する時点でなーんかキナ臭いとは思ってたんだけど、こりゃ想像以上だ。参ったねこりゃ』」

「『だからこそ、気をつけろ。奴がもし、今回の神々の盤上に干渉してくるのだとしたら、お前らの子や、お前ら本人にも、危険が及ぶ可能性が高い』」


天空神は、他の神がわからないほどの些細な変化であるが、苦しそうに顔を歪めた。

その変化を理解できるものは、天空神の前に座っている二柱の神だけだ。


「天空神、大丈夫?」

「ああ。私はだいじょ」

「転生召喚に失敗して脱落した大ボケ野郎なんて心配する必要皆無だよぉ〜食神ちゃん」

「ぐっ……」


しかし地獄神は容赦が無い。

そこまでわかっていて、いや、わかっているからこそ、危険であるとわざわざ忠告しにくるこの男が。

誰よりも、この神々の盤上から、『脱落』していることに細やかな怒りを感じたからだ。


「し、しかしだな」

「言い訳なん聞きたくないなー」

「わ、私はだな。よく考えたからこそ、最善の手を」

「ピーチクパーチクやかましいなぁこの低脳の鳥は。喋り過ぎるやつは基本三下って定理を知らんのかね?」


地獄神はニヤニヤと笑いながら煽りまくる。

天空神の額に、ピシリと青筋が浮かんだ。


「ふ、フフフフ……相変わらずよく喋る……躾が足らんな」

「んー、なんか言ったかねぇ? 低脳の言葉は理解しづらくて困るなぁ〜」

「…………黙らせてやる。犬」

「…………ほざくじゃねぇの、鳥」


黙々と駒を動かしていた二人が、そこに食神を加えた三人が、急に話だし辺りの神は困惑していたが。

その困惑は次第に、恐怖へと引きつっていく。


「負けた方はしばらくの間相手に様付け、とかが妥当じゃないかね鳥頭」

「お前にしては中々に名案だ、犬畜生には、立場というものをわからせてやらねばな」

「にししっ」

「クククッ」


二人とも笑い出す。

ある種の怒りで笑えてきた二人。

その笑いを聞いていた神々は、とてもじゃないが笑えなかった。


「「ぶっ潰す」」


やはりこの二人も、存在格から対極に位置する二人。

それらは互いに反発し合い、互いに格を高め合う。

そのようにこの世界はできている。いや、神達の世界、では。


特に神々の中で『天地二大神』と呼ばれ畏怖される最高位にも届きうるポテンシャルを十分に秘めた神格を持つ二人である。


その二人の戦いが、そう簡単に終わるはずがない。


数週間、人間の体感で数秒の間、神々にとっては長きにわたり決着のつかないその戦いは。


最終的に、二人が神威権能すら行使し始めたところでストップがかかり、引き分け(ステイルメイト)判定になり終幕となった。


その際、納得のいかなかった二人に一人の神が『引き分けだから、ここは間をとって、今までずっと二人の間で審判をしていた食神さんを二人が様付けするでいいんじゃないかな?』という意見を出した。


そんなこんながあり、天空神は普通にしばらくの間食神を様付け。

地獄神は食神の強い希望により、しばらくの間、食神をお姫様のように扱ったとか、そうでないとか。


Q、シリアスな展開だったはずなのに。

どうしてこんな感じに落ち着くんだろう。


A、最近ギャグが足りなくて作者の病再発

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