信じられないでしょうけど、それぞれの戦いです!
「そっかー。あんたがねぇ。ユベルはどうだった?」
「どうだった、と言われましモねー。ま、強いて言うのならぶっ飛んでましたねー」
「そうだろそうだろ〜! あいつはソロ仲間の一番星だからよーお! あ、オネーサンこっちにエール10パーい!」
王都ゼウスにて、私が所属している場所が場所のため、こんな事態を招いてしまったのは自覚していますし、奢るといったので構いませんが、よく飲みますネー。
《……マスター。いいの? こんなとこにずっといたら》
「まぁ、慎重になるに越したことはありませんが……そればかりでは息も詰まると言うものですヨ」
「あーん。それでユベルのことなんだがなぁー」
「はいはい。何でもかんでも有る事無い事幾らでも喋りますよ」
フムフム。困りましたね。
このままではユーガノーズ氏が潰れてしまいマース。
この後の移動もありますが、今にも「もう一軒イコー」と言いださんばかりです。
ま、それでも構いませんカネ!
《構うよ! マスターのバカ!》
「まあまあキャンディーちゃん。落ち着きましょうって」
《マスターなんて知らない!》
「ゲッ。マーター黙り姫ですか? 勘弁してほしいところデスねー」
とは言えそうですね。
今や王都は、半分以上は信仰が進んでいると考えていいでしょう。
傍迷惑な話ですガネ。
「うーん?」
「おや?」
唐突に酒場にて響く爆発音と、客達の悲鳴。
これはこれは。
はぁ……またデスか。
「あ、あんた達も逃げろ! また『シャドー』だ! 『シャドー』が出やがったんだ!」
オヤ? 店主自らエールを持って来てくれたので?
いや、ナーンにももっておりませーんね。
「店主さんおちついてくだサイ。ふむ。それで、エール10杯はいつ届くんデスかーね?」
「は?」
おっと、ユーガノーズ氏が拳を打ち始めました。
酔っ払いながらもやる気十分
「うー……たーのいしたーのしいドリンクタイムをよお……邪魔すんじゃねえよ、ぶっ飛ばすぞこのっいー……俺様はつえーんだぞ。めっちゃつえーんだぞぉー」
……というか、酔っ払ってるせいで正常に思考が働かず、本能で動いますねーコリャー。
現在王都で連日たび重なり起こる事件、『シャドー事件』。
ある時は真昼間、ある時は早朝、ある時は深夜。
時間場所、所構わず、なんの前兆もなく、誰かの足元にある『影』が人の形を保ったまま地面から浮かび上がり、市民を害する。
その影のイヤらしいところは、『物理無効』というある一定基準のテイムエネミーではどうしようもない点に加え、人間・エネミー含めアビリティすら一部を除きそのほとんどが効果をなさないという体質にあります。
ほとんどの人が対応できずに、逃げるしかできないという状況です。
この国でも混乱は相次ぎ、国の閉鎖に強い抗議もあって、そろそろクーデターが起こっても不思議ではありません。
早いところ、『あの男』を探し出さなければなりませんが……ハテサテ。
閉鎖しているというのに、一向に尻尾を掴ませないその所業には、脱帽を通り越して脱服してしまいそうデスよ。
「何やんてんだあいつ! おい、あんた! あの酔っ払いのツレだろう! なんとかしろ!」
「だから落ち着いてくださいと言っておるでショーっよ。ハイハイハーイ。深呼吸アーンドゥシッダウンプリーズ」
『逃神ノ闇』発動!
掴みかかってきた店主の腕を避けて掴み、立ち上がり掴んだ手をかーるくグイーッと私が座っていた席へと座らせマス。
「は? へ?」
「幾らでも待つのでエールはいつでもいいですよ。ですから落ち着いてー。クール、クール」
「で、でも!」
「ご安心なさーい。おっと、自己紹介が遅れましたねー。私、こう見えて防衛軍第零番隊隊長・伝霊七獣騎士の一人を務めております。ウィーアードというものです。どうぞよろしく」
おっと、まるで陸に打ち上げられた魚が陸で息ができた時のような目をしてどうしました?
「第、零番隊……って、シャドー事件、専門の……」
「イエース。おーけー?」
「お、おーけー?」
「トラストミー。因みに彼も、今はその一人です。まぁ、今だけなんですけどね! そもそもこの隊自体が今だけですが! というわーけーで、落ち着いて見ていてくださって結構デースよ」
さてさて。そろそろ私達も加勢に行くといたしまショウ!
キャンディーちゃん! 『魔王化』!
《…………》
オー…………
無視でスかー。
おーい。キャンディーちゃーん。ヘーイ。ヘイユー。マージーでーすーか?
こーれは無理ですね。完全にキャンディーちゃんがヘソを曲げてしまいました。
こうなったら向こう一週間は口を聞いてくれませんね。
「では私はエールを待つとしましょう」
なーんもできることありゃあせんね。
席に座ってツマミを加えます。
そもそも、助けなんていらないですし。
キャンディーちゃんもその辺は理解しているでしょう。
その上で、行動デショウからねー。
「やれやれ、ユベル氏もデスが……物凄いというか、規格外というか、ほんっとうに、面白い人達デスねー。彼ら『プレイヤー』という方々は」
そもそもの話、どうやったら『物理無効』の相手を、『拳』で圧倒できるんですかって話ですよ。
あの『光る肉体』に秘密がありそうですねー。
あの『シャドー』、それの大本となる『黒き太陽』を作り出した張本人、かの影男『ジャック』との戦闘時でも、彼はその拳と肉体で闇を払いました。
果てさて、この国もだいぶ大混乱に陥っていますが、ユベル氏は大丈夫ですかねぇ。
店の天井を眺めながら、我が友の今を考えて見ます。
おっと、右フックいいのが入りましたねーっとここで相手も負けじと、なんとなんとそんなものは知ったことかとジャーマンスープレックスだーー!
エールを待ちながら、声援を送りましょう。声援だけにぃ。おひょひょひょひょひょひょ。
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「う……ぐ……が……」
『使えぬ玩具め。大人しく我が軍門に降れば、苦しまずに済むというものを……」
「だ……が……てめ……な、ぞに……せ……っく、ベル……が、くれ……チャンス……む……でき……っよぉ……!」
『黙れ!』
「がああああああああああああああああああ! あああぁ! ああああああああ!」
ぐ……あああ……負けっか……負けっかよぉ……
……んな気持ちはもう、十分ダァ!
ベルがくれたせっかくのチャンスを、それでも無駄にするようなことをもし俺ができるのなら、俺は誰よりも俺自身を許せない!
……どうしようもない? んなの、前のどうしようもなさに比べれば、……屁でもねぇっつーだよなぁ!
根性見せやがれ……ケンゾウ……諦めるな……怒りを燃やせ……怒りを動力源に自分を稼働し続けろ!
『くっ、しぶとい。何故だ……アレだけの戦闘後に、何故……』
何故だろうなぁ。
……は、はははっ! 不思議か? 不愉快か? はははははははははっ!
何故だろうなぁ? 何故でしょうねぇ!
んなの皆んなとまた胸はって面と向かって会うために決まってんだろうがよぉ!
それだけだ! それだけで、てめえの洗脳なんざ、耐えられんだよ!
『ぐぅう……ええい! 壊れたところで愚鈍な玩具が一つ消えるだけだ!』
「ぎゃあああああああああああああ!」
うわ、あ、あ、あ、あ、し、ね。殺す。殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロス
誰を?
てめえ……………だ、クソッ、タレ!
はああああああ! 気ばれや俺のメンタル!
皆んなでお互いに鍛え上げたメンタル力見せろやコンチクショーーーーーー!!
不愉快か? 自分の思った通りにならなくてストレスか? ハゲるか?
俺は非常に愉快でーーーーーーーーーーす!!
お前の不幸で飯がうまいうまいうまーーーーーい!
チックショウォォォオオオオオ!
「ぎゃあああああああ! うぐあ……ぎゃぎぎ……ぐ、あああああ!」
「ケンゾウさん! どうしたっすか!」
「……うぐお……あああああ!」
ぐ、ルー、お、おい、やめろ、入ってくんな!
「なんなんスかコレ! ちょっと神さん! 話が違うっす!」
『待機していろと、言ったはずだよ『グルーメルト』』
「ケンゾウさんの様子があまりにおかしいから、ちょっと様子を見に来たんすよ! こんなのおかしい! ケンゾウさんを治してくれるんじゃなかったんすか! 今すぐやめてくださいっす!」
やめ……ろ……グルー。
お前まで、操られちまう。
お前は……女だから……このクソッタレが手を出すのを控えているだけで、やろうと思えばお前も俺の二の舞だ。
『グルーメルト。聞き分けなさい。これは、ケンゾウを治療するのに必要な措置なんだ。痛みが伴うのは、私が治癒を専門とした神ではないから。それだけケンゾウは酷い状況であるという事』
「でも、だからって……」
『今だけの苦しみと、長らく続く苦痛、どちらが良い?』
「う……ぐ」
『安心しなさい。時期に『元』の『ケンゾウ』に戻るから』
「………………は、はいっす」
そうだ、それでいい。
この地下倉庫みてえな場所なら、俺がいくら叫ぼうが誰に聞こえることはない。
この世界の住人だろうが、関係のない奴だろうが、自分に不利益をもたらすなら、このクソッタレは容赦しない。
はやく、出て行け……俺が助けをすがる前に……早く……
「ぐがああああ」
……んな心配そんな目で見んな。
クソッタレが言った通りだ。
直ぐに、とは無理だが、必ず、『ゲーム時代』の『俺』に戻ってやる!
「ベル……ミル……」
皆んな……今度は、失敗しない。
騙されない。諦めない。誰でもない、正真正銘の『俺』として、頑張るから。
こんなクズには負けねぇ。
それからも、『ソロ仲間』と、仲間でいたいから、友達で、いたいから。
絶対に俺を取り戻して……『ソロ仲間』のところに行くよ。約束する
ベルには、ふざけながら謝るし、マニコとはいつも通り喧嘩するし、マイクロズとは、またユベルも加えて三人で、研究するし、ウラミンは、貸したゴールド返されてねえからぶっ飛ばすし、ブールとは、一緒に美味い飯屋散策するし、ユーガノーズとは、また『永久地下』の攻略をする。
まだまだやるこたぁ山積みだ。
こんな、こんな世界でも、またお前たちと会えたら。
そん時は、そん、とき、は……
また、『ソロ仲間』と一緒に、笑わせてくれ。




