03 長男ジェフ目線
あの講習会の最終実技を、わたしははっきり覚えている。
「見ろ、ジェフ。あの子だ」
父が顎で示したのは、静かな目をした少女だった。
ダイアナ。
同じ処方、同じ材料。だが、出来上がった薬の濃度、沈殿の少なさ、保存安定性。突出していた。
「下級処方でこれか……」
父が低く言った。
講習会のあと、彼女に目を付けた薬屋は多かった。それでくじ引きになった。運よく彼女を引き当てた。
二人目は競争相手がいなかったから、知り合いから頼まれた少女、マリアで決まった。
だが——。
最近、わたしは彼女が作った薬を見ながら、眉をひそめている。
「おやじ」
父は奥で乾燥棚を見ている。
「なんだ」
「間違えたな」
父が振り向く。
「なんだと」
「見誤った」
机の上に並ぶ瓶を指で弾く。
「同じ基礎処方だぞ。下級の中でも基本中の基本。それでここまで差が出るか?」
父は無言で瓶を手に取る。
「これは……」
「最高と最低だ。同じ日、同じ水、同じ材料だ。なんとか売り物になる程度だ」
今日は、それぞれの箱から二本抜いて、念入りに品質検査をした。
混ざり方が均一で、粒子がそろっている。安定しているから、保存期間も長い
だが、もう一方はひどい。
沈殿がわずかに出る。なじみが甘い。規格外ではないが、最低評価だ。
「同じ見習いで、ここまで差が出るか?」
父は黙っている。
わたしは吐き捨てるように言う。
「ダイアナは外れだったな」
父がゆっくり言う。
「講習はたまたまか?」
「そうだな、講習は講習だ。現場は現場だ」
「だが、最近、全体的に品質が良くなっている」
「どうも、マリアの頑張りを見て他の薬師が自分もがんばるぞと思ったそうだ」
「そうか、知り合いにもいい報告が出来るな」
他の薬師に聞くとマリアが薬を運んでいる間、ダイアナは部屋で休んでいるそうだ。
最後の掃除もマリアに押し付けているとか。
そして大切な計量がいい加減ではらはらすると。マリアが言っていると聞いた。
わたしは抜き打ちで見習いの作業場に行ってみた。
すると清浄な空気に満ちていた。これがマリアの掃除なんだな。
奥の作業台で窯をかき混ぜていたダイアナは、ぼーっとしていてこちらを見なかった。
マリアの
「あぁ、ポイード様」の声でちらっとこちらを見て黙礼するとすぐに窯に目を戻した。
当たり前だが、この日の薬もマリアの出来にダイアナの出来は及ばなかった。
それとなくマリアに確認したら、ダイアナはかき混ぜるのか好きだとか??
なんだ、それは、どうでもいいことだ。
俺はマリアのぱーっと広がる笑顔に見とれた。
いつも読んでいただきありがとうございます!
誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。
とても助かっております。
楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。
それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




