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やりません。やれませんのよ。  作者: 朝山 みどり


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17 ばあさんを殺したんだな


薬師管理組合の会議室に入った瞬間、胸の奥がわずかに沈んだ。

広い部屋だった。

磨かれた長机が中央に置かれ、その両側に椅子が整然と並んでいる。

窓から差し込む光は弱く、空気はどこか冷たかった。


わたしはホースシューのみんなと並んで座った。

椅子の脚が床をこする音が、やけに大きく響いた。


職員が淡々と全員を紹介していく。


向かい側にはマリア。

その隣にお姉様。

さらにグレースさんとルイーズさん――おばあ様が二人。

少し離れた席には、ポイード薬局のジェフ様が静かに座っていた。


逃げたい気持ちは、もうなかった。

ただ、この重い時間が早く終わればいいと思った。


職員が静かな声で告げる。


「では始めます。今回は、ダイアナさんの免許取り消しについて、証拠に疑問が出たため再確認を行います」


その言葉が落ちた瞬間、空気がわずかに揺れた。

マリアがすぐに声を上げる。


「そんな必要あるんですか? 証拠は出ています。ブローチがダイアナの鞄から出てきました」


胸の奥が、きゅっと痛んだ。

あの日の光景がよみがえる。

鞄から出てきたブローチ。

わたしは知らない。今でも知らない。


ルイーズさんが言う。


「そうだよ。あれは大事な物だよ」


もう一人も続ける。


「そうだよ。泥棒はうそつきだね」


わたしは黙っていた。

会議室の空気は、少しずつ重さを増していく。


そのとき、ホースシューのリーダーが口を開いた。


「亡くなった祖母の形見だと記録に残っているが」


わたしは顔を上げた。

リーダーは椅子にもたれたまま、職員に向かって言う。


「記録が間違っているのかな?」


「記録は正確です」


その返事に、マリアの肩がわずかに震えた。


グレースさんが言う。


「なに、縁起でもないことを。わたしたちは生きてるわ」


ルイーズさんも続ける。


「そうだよ。二人で店に出てる」


「おばあちゃんは黙ってて」


マリアの声が、張りつめた空気にひび割れのように走った。


リーダーはマリアのお姉様に向き直り、ゆっくりと言う。


「おばあさまは、お二人とも元気ですね」


会議室が静まり返った。

誰も息をする音さえ立てない。


職員が紙をめくる音が、やけに大きく響く。


「記録では、亡くなった祖母の形見となっています」


マリアの顔色が変わった。


「それは……」


言葉が途切れ、しばらく沈黙が落ちたあと、


「昔の祖母です!」と声を張った。


ホースシューのマイクが笑う。


「昔と今と、ばあさんがいるのかい?」


マリアは、苦しそうに答える。


「はい」


職員が尋ねる。


「お姉様に聞きます。昔の祖母が誰かわかりますか?」


お姉様は少しだけ目を伏せ、


「わかりません」と答えた。


グレースさんが声を荒げる。


「なんてことを言うんだ。マリアが憎いのかい?」


ルイーズさんも続ける。


「そうだよ、おまえは昔から」


わたしは何も言わなかった。

胸の奥の重さが、ゆっくりとほどけていくのを感じた。


そのとき、ジェフ様が静かに言った。


「マリア、確かに薬師管理組合の人間に『亡くなった祖母の形見』だと言ったな」


パーシーが言う。


「ダイアナを陥れるのに、ばあさんを殺したんだな」


マイクが続ける。


「そうだな。怖いねぇ」


会議室の空気は、もう完全に凍りついていた。



いつも読んでいただきありがとうございます!


誤字、脱字を教えていただくのもありがとうございます。

とても助かっております。

楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。

それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。


新作の投稿をしています。「春の避暑地で」読んでみてください。



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