95話 『おはよう!』
「アルス、カルス、おはよう! 下の階で朝ご飯食べて冒険者組合に行こう……って」
「うぅ、もう食べれないわよ……ステーキ……むにゃむにゃ……」
「夢の中でもステーキ食ってるの!? いや好きすぎでしょステーキ……あれ? カルスくんはーー」
「ーーあ、モルスさん! おはようございます」
ガチャリと部屋のドアが開いたかと思うとカルスが部屋に入ってきた。
どうやら俺よりも早く起きていたらしい。
「おはようカルスくん。起きるの早いね。……アルスは……爆睡してるみたいだけど……起きるかな?」
「お姉ちゃんは爆睡したら十分以上は確実に寝ます……だからほっといてもいいと思います。そのうち起きますから」
「そうなんだ……」
姉はだらしないのに弟がしっかりしているなんて……いや姉がだらしないから弟がしっかりしないとダメなのか?
見た目からして10、11歳ぐらいの子供なのにあまりにもしっかりしすぎているカルスに朝から俺は驚かされた。
アルスが起きるまで時間があるので俺はカルスの言った通りアルスを起こさず、起きるのを待つことにした。その間俺はカルスと部屋でそれとない会話をしていた。
「朝早くに起きてたみたいだけど……何してたの?」
「えっと、これは盗賊の時のクセなんですが周りの安全確認……みたいなものです」
「安全確認? ……あぁもしかして身を隠していたところが誰かに見つからないかっていう確認をしてたってこと?」
それにカルスは『はい』と頷いた。
安全確認……それはとても大事だ。
特に誰かに追われていたりするならなおさら。
俺も元殺人鬼の時には誰にもバレないような隠れ場所を探しそこを住処にしていた。
まぁたった数週間であっさり誰かしらにバレるのだが。
「……それにしてもアルスはぐっすり寝てるな……カルスくんと違って安全確認とかアルスはしないのか?」
「お姉ちゃんもいつもは一緒に周囲の安全確認をしてるんですけど……きっと久しぶりのベッドだからなかなか起きれないんだと思います」
「久しぶり? ってことは今まではベッドでも寝てなかったってこと!? 本当に?」
「……はい。今までは盗賊だったので普段は身を隠せるということを重視した場所にいました。毛布なしの冷たい床で寝るなんてしょっちゅうでした」
「そうだったんだ……それは大変だったな」
元殺人鬼としてカルスの言うように身を隠せるということを重視してまともな寝床を確保できなかったという経験は俺にもある。
だがアルスとカルスはまだ少女、少年と呼べる歳の子供だ。そんな子供がそんな環境で生きていた……というのはあまりにも酷すぎる……そう思う。
「はい、でもだからこそモルスさんにはすごく感謝してるんです。僕もお姉ちゃんも。こんなところに泊めてくれたのもそうですけど私たちに『冒険者にならないか? 俺とパーティーを組まないか?』と提案してもらって……本当にありがとうございます」
深々と頭を下げるカルス。
あまりにも年相応のものではないそれに俺は二人が今までどんなに大変な毎日を送っていたか理解する。
だからこそ二人ににはしっかりとした職でお金を稼いでしっかり生きてほしい。
「……どういたしまして。これから冒険者として一緒に頑張ろうねカルスくん」
「は、はい!」
その数十分後に起きたアルスの第一声の『ステーキ! ……あれ夢?』に俺とカルスは思わず笑ってしまった。笑っていたカルスの顔は年相応の少年のものだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!ぜひブクマや評価、感想をくださると嬉しいです!




