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異世界失敗転生!? 元殺人鬼の青年は異世界で冒険者になるようです  作者: 平凡もやし
二章 二人組の盗賊、孤独な少女
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96話 『三人パーティー初めての仕事』

「で? どんな依頼受けるの……?」


「お、お姉ちゃん?」


「アルス。なんでそんなに不機嫌なのか聞いてもいい?」


「はぁ? 別に不機嫌じゃないわよ。いつも通りよ!」


 なんて言いながらいつも以上に機嫌の悪そうなアルスを見て俺はカルスにだけ聞こえるような小声で聞く。


(なんでアルスが不機嫌なのかわかる? カルスくん)


(……多分ですけどモルスさんが『ステーキはおかわりしたらダメ』って言って今日朝ご飯にステーキをおかわりできなかったから不機嫌なんだと思います)


(え、そんなことで機嫌悪くしてるのか? アルス)


 というかステーキはおかわりしたらダメって……自分で言ったことだけど意味不明だな! ステーキってそもそもおかわりするものじゃないだろ。なんで俺はこんなことを……あーそうだ。

 アルスが朝からステーキを頼んで食べ始めたと思ったらおかわりしようとしてたから慌ててカルスと一緒に止めた時に俺が言ったんだ。

 さすがに冒険者としてそこそこ稼いでいたとしても毎日毎日ステーキを何枚も何枚も朝昼晩注文されたら俺の皮袋(サイフ)が死んでしまう。

 ……今思えば朝からステーキを頼んでいた時点でアルスを止めるべきだった。


「……アルス、ごめん。まさか君がそんなにステーキ大好きだとは思わなくて……よし。この依頼を終えたらステーキ……3枚ぐらいならおかわりしてもいいから機嫌直してくれ」


「……4枚」


「え?」


「4枚!」


 なん……だと……!?

 ステーキ3枚でも苦渋の選択だったのに!

 え? 聞き間違いかな? 聞き間違いだよね?


「ごめんもう一回言っーー」


「4枚!!」


「…………カルスくん」


「……間違いなく聞き間違いじゃないと思います……すいません本当に……」


 あぁそうか。

 カルスくんが言うのなら間違いないんだろう。

 つまりアルスは本気でステーキ4枚食べさせろ、そう俺に言っているのだ。

 信じたくないがこれは現実。

 俺の所持金は今日高確率で死ぬ(ゼロ)になる。

 目を背けたくなる気持ちをぐっとこらえて俺は冒険者組合(ギルド)にあるボードに貼り付けられている依頼の紙を剥がし手にとった。

 まずは一旦ステーキのことを考えることをやめて本来の目的に俺は戻る。

 俺は決して自分の所持金がゼロになるかもしれないという絶望、悲しみを味わいに冒険者組合(ギルド)にきたわけじゃない。

 アルスとカルス、二人とパーティーを組んで初めての依頼を受ける……というのが本来の目的だ。


「……わかった。4枚までステーキをおかわりしてもいい。だから機嫌を直して一緒に依頼を受けよう……ね?」


「! わかったわ! 依頼を受ければステーキを4枚までおかわりしてもいいのね! 忘れないでね? じゃあさっさと行くわよ!」


 その言葉を聞いて俺のやる気は一気にダウンした。依頼を終わらせる(イコール)所持金ゼロということに改めて気付いたから。

 だがやるしかない。

 俺は依頼の紙を持って受付に向かった。

 後ろからカルスの『申し訳ない』という思いと可哀想という思いが含まれた視線を感じる。

 ……なぜだかすごく泣きなくなった。


 ☆☆


(モルスさん……)


 僕はモルスさんの力のない背中を見てすごく悲しくなった。その原因が自分の姉だとわかるからなおさら。


(モルスさん……僕も依頼を全力で頑張ります! だから……無理しないでください……!)


 心の底からそう思う。

 そして隣で『ステーキ、ステーキ、4まいま〜い♪』と機嫌良さそうな姉に呆れる僕だった。



最後まで読んでいただきありがとうございます!ぜひブクマや評価、感想をくださると嬉しいです!

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