87話 『追いついた人、追いつかれた人』
主人公の投げたものが狙い通りに当たったのはただ単に運が良かったからです。
(決して主人公に何かを投げる才能があったからというわけではありません!)
「! 当たった! よし、これで追いつける!」
思いっきり、全力で投げた果物は二人組の片割れの頭に直撃した。
たしかに狙って投げた果物だったがまさかあそこまでうまく当たるなんて……もしかしたら自分には何かを投げる才能があるのでは? なんてバカなことを考えながら俺は人だかりを抜けた道で足を止めている二人組に追いつくために走り出す。
今なら追いつける!
人だかりを進みながらそう確信する。
「やっと追いついた! さぁ観念しろ!」
まるで警察みたいなことを言って俺は二人組の盗賊? に追いついた。二人組の片割れはーー俺が投げた果物に当たってーー倒れており、もう一人の方を倒れている方を心配してか「お姉ちゃん! 大丈夫?」と声をかけていた。
だが俺が追いついたことに気付きすぐにこちらを向く。今にも飛び上がりそうな盗賊? の反応に俺は少し驚いた。
「あ、あわわ! そ、その……す、すいません!」
「それは俺に言っても意味ないでしょ……はぁー、そこの倒れてる方は大丈夫? 生きてる?」
「いたた……ってあんたさっきの!? やばい追いつかれた!」
「あー頼むからまた走り出すなよ? また走られたら追いつける自信ないから……」
倒れていた方も俺に気付きすぐに体を起こす。
そしてまた走り出そうとするので俺は倒れていた方の腕を掴む。
「! あんた、離しなさいよ!」
「離して欲しかったらまずはルールさんから盗ったものを返してくれ」
「は? な、何よそれ?」
「何って……君が今背中に隠した紙袋だよ」
体を起こしてすぐに俺が口にした言葉に反応して倒れていた方はすぐに右手に持っていた紙袋を背中に隠した。
「こ、これは……も、もらったのよ!」
「そんな嘘に騙されるわけないでしょ……じゃあ本当にそれがもらったものなら紙袋に何が入っているかもわかるよな? 何が入ってるんだその中には」
「えっと……ほ、宝石よ! でっかい!」
「残念。その紙袋の中に入っているのはピアスだ」
盗賊のばればれな嘘にそう言葉を返して俺は倒れていた方が背中に持っていた紙袋を奪い取る。
「なっ!? か、返しなさいよ!」
「うるさい。ちょっと静かにしてて」
「? 痛い!!」
「お、お姉ちゃん!?」
いちいちうるさい二人組の片割れの頭に少し力を込めてチョップするとそれなりに痛かったのかそうリアクションして二人組の片割れ、うるさい方は地面に倒れた。
それを見て驚く二人組の片割れ、静かな方を見て俺を一言言った。
「また逃げ出したりしなければ君たちを衛兵さんの所や自警団の所に連れて行くつもりなんて俺にはない……だから一旦大人しく俺についてきて」
「は、はい……」
地面に倒れている二人組の片割れを脇に抱えて俺は果物を借りた屋台の方に一旦戻る。
二人組の静かな方はうつむきながらも黙ってついてきた。
どうやら観念して逃げることを諦めたようだ。
☆☆
(うぅ……追いつかれちゃったな……)
僕たちは僕たちを追いかけてきていた人に追いつかれた。
お姉ちゃんは呆気なく倒され、僕は今追いかけてきていた人にうつむきながら黙ってついていっている。
お姉ちゃんが捕まったので僕は一人で逃げるなんてことはしない。考えもしない。
僕たちは一体どうなるんだろう……と不安を抱きながら僕は黒い革鎧に黒い髪と全体的に黒い人についていく。
『また逃げ出したりしなければ君たちを衛兵さんの所や自警団の所に連れて行くつもりなんて俺にはない……だから一旦大人しく俺についてきて』
そんな言葉を信じてついていく。
そんな僕の足取りは自分でもわかるほど重いものだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!ぜひブクマや評価、感想をくださると嬉しいです!




