表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界失敗転生!? 元殺人鬼の青年は異世界で冒険者になるようです  作者: 平凡もやし
一章 新たな宿屋と金《ゴールド》ランク冒険者
75/277

73話 『元殺人鬼VS魔術師 後編』

やっと元殺人鬼らしくなる……

 コロンと何かが床に音を立てて落ちた。

 その落ちたものに最初に気付いたのは剣を振ったモルスかその剣を向けられたマクシスか。

 それはわからないが痛みを感じたのはーー


「あ……あ? て……? て、手があぁぁああ!?!? 私の手がぁ!? 手がぁあぁあぁああ!!」


 ーー間違いなくマクシスだっただろう。


 ☆☆


 マクシスは一瞬なにが起こったか理解できなかった。


 目の前の冒険者(モルス)が足元に落ちていた剣を拾い自分に振ってきたのがわかった私はそれでも慌てはしない。

 先ほどモルスが振ったナイフの速度(スピード)からモルスの攻撃ならば見てから避けれると思ったからだ。


 小さくて軽いナイフでの攻撃でさえマクシスは見てから避けれたのだからナイフに比べればはるかに大きく重い剣でのさらに速度(スピード)の下がった攻撃なんて簡単に避けられる。

 そうマクシスは考えモルスが剣を振る動作を限界までみようと思いギリギリまで動かないように決めた。

 しかし突然モルスが振った剣の速度(スピード)が上がった。


(さっきより速くなったけど余裕で避けられる)


 マクシスは背後に飛び退いた。

 完璧に攻撃を回避した。


 ーーそう思っていたマクシスだが自分の左腕になぜか違和感を感じた。


 なんとも言えない違和感を。

 その違和感にマクシスは首を傾げてからゆっくりと自分の左腕に目を向け、見た。左腕をしっかりとあった。だからそこにもしっかりあるであろう左手にも目を向けた。


 そしてーー、


「あ……あ? て、手があぁぁぁぁぁ! 私の手がぁぁぁぁ!!」


 自分の左腕の先……左手がなくなっていることにやっと気付き、絶叫を上げた。


 絶叫を上げながらマクシスは自分の手首から先のない左腕ーー血がだらだらと流れ出すーーを見てそのまま床に膝をつく。


 なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは、なんだこれはーー。


 ーー理解し難い事実。


 ーー理解したくない事実。


 ーー理解できない事実。


 今までに味わったことのない痛みに、事実に思考が埋め尽くされ、気が一瞬で狂いそうになる。


 そんなマクシスの気など知らず、いや知ってかなのか、冷ややかな声がかけられる。


「そんな(わめ)かないでください。安心してくださいよ、ちゃんと左手(・・)だけ切り落としたんですから。マクシスさんって右利きですよね? ならあるか知らないけど今後の生活にも大した支障は無いと思いますよ」


 そんな青年(モルス)の声に顔を上げる。

 そこにはまるで子供のように無邪気に笑う青年が立っていた。


 ーー右手に血に濡れた剣を持って。


「お、お前がやったのか!!?? お前がやったのかぁぁぁぁ!!!!」


「あーうるさい。耳が痛くなるから黙っててくださいよ。そうですよ、俺がやったんです。あなたの左手はーー俺が切り落とした」


「!? ぐはっ!!」


 マクシスの口にした絶叫にただそう返してモルスは先ほどマクシスが自分を蹴った時と同じように蹴りを、顔面にいれる。


 なんでこいつが俺を見下しているんだ!?

 なんで俺がこいつを見上げているんだ!?

 めちゃくちゃな思考はぐちゃぐちゃになりマクシスは吹き飛ばされ壁に体を強打した。

 左手を失った痛みがズキズキとマクシスの体を襲う。


 一度冷静になろうとしたマクシスは倒れながら何が起こったのかを考える。

 なぜ左手がなくなった?

 青年の攻撃が左手に当たったから。

 なぜ避けれなかった?

 予想よりはるかに青年の攻撃速度が速かっから。


(待て冷静になれ私! 失ったのは左手だ! まだ右手がある! 右手の手のひらには魔法陣が刻まれている……これがあれば私はまだ威力の高い魔法を放つことができる!)


 まだ勝てる。まだ負けていない。

 そうわかったマクシスは顔を下げ、顔を歪ませる。

 痛みによる苦痛しかなかったマクシスの顔に邪悪な感情がまた出てくる。


「バカなやつめぇ!! 私にはまだ右手があるんだよぉ!! 死ね、くそ冒険者! 爆炎(ファルバ)ーー」


 そう言いマクシスは魔法を放とうと手を広げモルスに向けた。


「ーーあー手が滑った〜」


 だがマクシスの手の赤い魔法陣が光り出した瞬間モルスは手に持っていた剣を振る。

 そしてーー


「うぁぁぁぁぁぁぁ!! 手が手が手がぁぁぁぁー!!」


 左手と同じように右手がコロンと落ちた。

 先ほどと同じようにマクシスは絶叫を上げた。

 右手がない。右手がない。右手がない。

 それは勝つ方法を失ったということと同義。


「すいません。またあの魔法? 使ってくるのかと思って、つい条件反射で……あ、わざとじゃないですよ? ほんとに手が滑って」


 また笑うモルスをもう見上げることができないほどにマクシスは叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。

 さっきまで自分が勝っていたじゃないか!

 圧倒的に私の方が強かった!

 負ける要素なんてなかった。

 あの冒険者、ランス・ウィリアムにも勝った!

 なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ。


 マクシス。

 本名マクス・カーシー。

 彼は闇ギルド【魔石】のリーダーだった。

 闇ギルド【魔石】を作ったのは彼であり多くの仲間を集めた。

 そんなマクシスには理想、目的があった。

 それは世界から弱者をなくすこと。

 記憶水晶(メモリークリスタル)に宿る魔力は多くの人間に与える。

 その魔力に適応したものは強者になることができる。

 マクシスは魔力に適応できず死んだものたちには何も思わなかった。

 適応できず死んだものたちは運が悪かったのだ。

 そんなことを言って自分は悪くないと、自分のやっていることは正しいと信じて疑わなかった。

 マクシスは自分を捕まえようとする多くの人を殺した。

 罪悪感などこれっぽっちも湧かなかった。


 だから理解できない。

 なんで自分がこんな酷い目に。

 なぜ?

 誰か助けて誰か助けて誰か助けて誰か助けて。

 誰か助けろ誰か助けろ誰か助けろ誰か助けろ。

 だがマクシスを救うものなんてもういない。

 同じ闇ギルドのギルドメンバー、部下たちは全員死んだ。

 マクシスに待つのは死のみ。

 だがマクシスは認められないその現実に涙を流し床に頭をつけて、モルスに向かって土下座する。


「た、た、助けてくれ!! 殺さないでくれ! やだ、死にたくない死にたくない死にたくない!!」


 命乞い。

 プライドなんてものはどうだっていい。

 マクシスは叫ぶように喋る。

 必死に必死にわずかな、あるかもわからない生存の可能性にかけて。


「死にたくないんですか? ならしょうがないな……緊急依頼の内容はあなたの捕縛か殺害だしな……」


「ほ、本当か!!?? な、なら剣をおろーー」


「なーんていうと思った?」


「……え……」


「ーーもし目の前の悪党が殺されそうになった途端に命乞いして、殺さないでって言ってきたとして……。ーーあなたはそいつを許すの? 殺そうとする手を止める? はは、そんなわけ、そんなわけないよなぁ? どうせ容赦なく殺すでしょ?」


 理解できない言葉だった。

 理解したくない絶望だった。


「死にたくない? 悪党が今更何言ってんだか。死にたくないなんてあなたに今まで殺された人たちも、ここに倒れる冒険者たちも、みんなが思ったことだ。あなたに始末されそうになった俺も。そんな俺が命乞いした悪党を許すと思いますか?」


 マクシスは涙を流しながら顔を上げモルスを見上げる。

 そこにあったモルスの赤い目には誰もが感じ取れそうなほどの殺意があった。

 ナイフを振ってきていた時とは雰囲気がまるで別人だった。


「ま、待て!! 待ってくれ!! 私はこう見えても魔術師としてはかなり優秀だ! 私を殺さないでくれたらお前に力を貸す! 絶対に後悔はーー」


「あ、命乞いとか聞き飽きてます。さよなら」


 マクシスの命乞い、必死の言葉も虚しくモルスの剣は振り下ろされた。

 マクシスは絶望する。


 死にたくない。


 それがマクシスが最後に思ったことだった。


 ☆☆


「ふぅ〜終わった終わった。首を切り落としたしもう間違いなく死んだでしょ……いや魔術師だから死んでないとかありえるのか?」


 俺は首無し死体ーー自分が首を切ったーーを見て言った。


「……ちょっと遊びすぎたな。さっさと心臓さしとけばもっと速く殺せたよ絶対」


 心臓を刺せばもっと速く終わっていた。

 なのにそうしなかった理由はマクシスが俺を殺そうとしたから。

 自分を殺そうとしたやつを楽に殺したくはなかった……と思ったからだ。


「死体ってどうするんだ? いつもなら放置だけど緊急依頼で捕縛または殺害しろって言われている人だし……」


 俺は困ってどうするか考える。

 その時地下通路の方からこちらに向かってくる足音が聞こえた。


「え? ま、まだ他の人が……ってランスさんとゴーグさん!?」


 部屋の入り口前にはゴーグとなぜかピンピンしているランスの姿があった。





最後まで読んでいただきありがとうございます!ぜひブクマや評価、感想をくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ