30話 『解けた誤解』
「うぅ……ん? あれ……ここは……」
目を開けると見知らね天井が最初に目に映った。
ここどこだ……? 俺はどうしてソファーに寝てるんだ?
自分がこんな状況になっている理由、記憶にあることを思い出してみる。
たしか……俺は自由依頼を受けてポーション屋に向かって……店に誰もいなかったから一度店を出ようとしたはず……。
(あ、思い出した!)
店を出ようとしたらポーション屋の人? らしき人に泥棒と勘違いされて箒で思いっきり腹を叩かれ意識を失ったんだ!
ちゃんと思い出せてよかった……。
「とりあえず……ここはポーション屋なのか?」
ソファーから体を起こして周りを見てみる。
見る限り俺は個室のソファーに寝かされていたようだ。開けっ放しのドアの奥にはポーション屋にいくつもあったショーケースが見えたのでここは多分ポーション屋だろう。
気になるのはなぜ泥棒と勘違いされた俺がここに寝かされているのか、だ。
もしや俺が寝ている間に誤解が解けたのだろうか?
「あ! 目が覚めました? よ、よかったぁ〜……!」
「ん?」
声がした方、開けっ放しのドアの前に目を向けるとそこには俺を泥棒と勘違いし、その結果俺が意識を失うことになった原因を作った張本人である彼女が顔だけをひょっこりと出してこちらを見てそう言った。
なぜかその声は震えていて、安心したという思いがすごく伝わってきた。
「だ、大丈夫ですか!? どこか痛いところとかありませんか!?」
「と、特にはないです! 大丈夫です」
大きな声で彼女は俺のことを心配するように聞いてきた。
もしかして本当に誤解が解けたのだろうか?
「あ、あのぉ〜その様子からなんか大体わかるんですけど……俺を泥棒と思ってたのが勘違いだってわかってくれたんですか……?」
念のために誤解が解けているのか解けていないのかを俺を確認しようとした。
俺のその言葉を聞いた瞬間に彼女は突然、勢いよくソファーに座る俺の前まできて膝をおり、
「冒険者モルスさん!! 先程は大変な勘違いをしてしまい本当にすいませんでしたぁ!!」
「(へ? そ、そこまで謝ることなのか!?)」
俺に土下座した。
今までの人生で誰かに土下座されたことなんてあるはずもない俺はしばらく完全に固まる。
土下座なんて初めて見た……。
しかも土下座しているのが女性……。
なんか考えただけでこっちが悪いことをしているような気分になる。
とりあえず俺は早くそんな気分を消すために口を開いた。
「ど、土下座なんてやめてください! 泥棒と勘違いされた俺だって……多分悪いし、あなただけが悪いってわけじゃないと……思います。だからとりあえず頭を上げてください」
はたして俺に非はあったのだろうか?
そもそも俺が誰もいない店内に入ったのが悪いのでは?
……いやでも外からだと人がいるかいないかわからなかったし……。
じゃあ冒険者の証明であるギルドカードを最初に見せればよかったのでは?
……大声でいきなり泥棒扱いされてそんなこと考える暇がなかったし……。
……俺何も悪くなくないか?
い、いや多分俺にも非はあったんだ! うん!
「そ、そんなことありません! モルスさんの話を聞かずに勝手に勘違いした挙句、モルスさんを攻撃した私が全面的に悪いんです!」
確かにそうかもしれない。
一瞬納得しそうになってしまう。
「そ、そんなことないですよ! 俺も多分悪かったんですよ! だ、だからまず土下座するのやめてください!」
彼女に土下座をやめさせるために、俺は頭を下げてお願いする。
「なっ!? も、モルスさんがなんで頭下げてるんですか!? は、早く頭上げてください!」
「だったらそっちが先にあげてくださいお願いします!」
頭上げて! だったらそっちが先に頭上げて!
しばらくこんな会話が店内で繰り返され、お互いに頭を上げたのは1、2分後のことだった。
☆☆
「本当に先ほどはすいませんでした!」
「いや気にしないでください。それに意識を失った俺をポーションで回復させてくれたのもあなたなんですから……。そういえばさっきから気になってたんですけど、なんで俺の名前を?」
「ギルドカードに書いてありましたから。本当に私はとんでもない誤解を……」
「ストップ、ストップ! このままだとまたさっきの繰り返しになりそうだからやめましょう!」
彼女がまた謝りそうな雰囲気だったので一旦会話を無理やりとめて俺を聞いた。
「あ、あなたの名前は?」
一番当たり障りのないこと。
彼女の名前だ。
聞かれた彼女は元気よく自分の名前を言った。
「私の名前はソフィー。ソフィー・オウレンと言います。ここのポーション屋【フェア】で働かせていただいているポーション配達員です!」
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