29話 『ひどい誤解』
「目的はこの店のポーションですね!? だから誰もいない時に店内に入ってきた……でも残念! 私がきたからにはそうはさせません! ポーション屋のポーションは私が守ります!」
「ちょ、ちょっと待ったぁー!! なんかすごい誤解してますけど俺は泥棒じゃーー」
「問答無用!」
俺の話に一切耳を貸してくれない彼女は店内の隅に置いてある円柱状の箒を素早く手にとり、構えた。
「待って、本当に待ってください! 俺は泥棒じゃなくて冒険者でーー」
「ふっふっふ、そんなバレバレな嘘で私を騙せるとでもお思いですか?」
(嘘じゃないよバカ野郎!!)
彼女は箒を乱暴に振り回す。
その振り回された箒はすぐに俺に向かって振られる。
その攻撃をすぐに避けようとしゃがもうとしたが俺はふとあることに気が付いた。
この店には多くのショーケースがある。
中には商品であるさまざまなポーションが置いてあるのだがそのショーケースの一つが俺の真後ろにも配置してある。
もし俺がここでしゃがんで攻撃を避けた場合、確実に箒は後ろのショーケースに直撃しガラスを割るだろう。
ポーション屋にきた時に聞いたがポーションとはとても高額なものらしい。
……今の俺の所持金である銅貨数枚では買えないほどに……弁償できないほどに……。
しかも目の前の彼女はこのポーション屋で働いているのだろうがもし高値のポーションを割るなんてことしたらクビになるのではないだろうか?
………………。
そんな思考が俺に回避という選択肢を選ばせてはくれなかった。
「ごはっ!!……ぐふっ……」
箒の攻撃は俺の腹に見事に直撃。
思いの外ダメージが半端なく俺は腹を片手でおさえながら前から床に倒れた。
(あー、めちゃくちゃ腹痛い……あーそんなこと考えてる場合じゃない……早く誤解とかないと)
倒れたまま誤解を解く方法を考える。
だがその途中で俺は意識を失った。
☆☆
「どんなもんですか! 私だって泥棒ぐらい倒せるんですよ!」
店内にいたいかにも怪しい男を倒した私は満足げに箒を元の場所に戻す。
この男は自分を冒険者だと言っていたがそんなわけない。
本当に冒険者なら武器の一つや二つ身につけているはずだ。なのに男が身につけているのは大きなリュックだけにしか見えない。
どこからどう見ても泥棒だった。
「まったく冒険者なんて変な嘘言うなんてこの泥棒もかなりバカですね……ん? なんですこれ?」
倒れてた男のポケットから紙が一枚はみ出ているのを見て私はそれをとり目を通す。
そこには、
「ギルド……カード? 冒険者モルス……え?」
そう書かれていた。
私は一瞬自分の目を疑う。
え……待って……。
もしかしてこの男の人は、
「ほ、本当に冒険者だったの!?」
う、嘘!? 何も武器を持ってなくて変な服着てるこの人が冒険者なの!?
だったらさっき自分のことを冒険者って言ってたのも本当のこと!?
もしかして……全部、私の勘違い……?
「…………う、うわぁぁぁぁ!! わ、私はなんてことを……! ま、まずいです! この人死んでませんよね!?」
どうしよう!? もしこの人が死んでたら私、殺人犯だよ! と、とりあえずなんとかしなきゃ!
「くっ! こうなったら!」
私は自分がいつも持ち運んでいるポーチの中からポーションが入った瓶を取り出す。
ポーションはとても高い。
私が一ヶ月働いてやっと一本買えるぐらい高い。
だから本当は使いたくない……。
(でも私が全面的に悪いからなんとかしなきゃ!!)
私は倒れた彼に口を開かせる。
手に持ったポーション瓶の蓋を開けて彼の口に流し込んだ。
このポーションにはある魔法がかかっているおかげで即効性がすごく、飲めば体力はすぐに回復する。
本当はいざのとき……自分のために使うつもりだったが今は彼の命が最優先。
私は迷わずポーションを彼に全て飲ませた。
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