27話 『自由依頼《フリークエスト》』
冒険者が受ける依頼には色々な種類がある。
薬草などの採集をする納品依頼。
魔物を討伐する討伐依頼。
この二つ以外にも護衛依頼や探索依頼などの依頼が主なものだ。
このどれもが冒険者組合が仲介役となり冒険者に依頼として貼り出す。
依頼主は組合に手数料、冒険者に報酬金額を支払う。
これが普通の依頼。
しかし自由依頼は違う。
自由依頼を一言で説明すればただのボランティア……お手伝いだ。
普通の依頼も確かにお手伝いといえばそうではあるが自由依頼は正直言うと受ける側にまったくといっていいほど利益がない。そう。報酬金額がないのだ。もちろん組合そんな依頼を紹介するメリットがない。
冒険者にメリットがあるとすればギルドカードの実績に少し記録されることぐらいだろうか?
自由依頼の多くは落し物を探す手伝いだったり、迷子の捜索だったりと危険性が低いもので推奨レベルも冒険者ランクも指定されない。
そのためギルドカードの確認は必要ない。
あくまでもボランティアのようなものであるため報酬がもらえるかどうか依頼主の気分次第だ。
ならなぜ冒険者組合がそんな依頼をボードに貼り出しているのか……その理由は単純なことで依頼してきた依頼主が日頃お世話になっている相手であり、これからも親密な関係を維持したいため。
だから自由依頼の依頼主は冒険者たちの仕事に大きく関わる店の店主であったりする。
「実際に今あなたが受けようとしている依頼の依頼主は、この街に二つしかないポーション屋の店主なんですよ」
「そうだったんですか……」
「はい。……もしかして知りませんでしたか?」
「へ? あ、す、すいません! 『自分が受けられる依頼かどうか』ってところしか見てなくて」
「はっはっはっ、そうだったんですか」
どうやら目の前に立つ彼は本当に冒険者として新人のようだ。普通の冒険者であれば報酬金額ばかりに目がいってしまう。
「ではどうしますか?」
「はい?」
「今説明した通り、この依頼を達成してもあなたには対してメリットがありません。冒険者組合受付担当の私としてはポーション屋の店主様との関係を良好にするためにも受けて欲しいですが、一般人の私としては新人冒険者のあなたには受ける必要がない依頼だと思います」
「…………」
新人冒険者の彼はきっと銅ランク冒険者だろう。そんな彼が受けれる依頼は限られる。
でも、だからといって報酬金額も設定されておらず、達成してもランクが上がるかと言われれば微妙な実績にしかならない自由依頼よりいい依頼がないわけじゃない。
ギルドカードの実績に、
『自由依頼で落し物を見つけた』
と、
『討伐依頼で魔物を討伐』
このどちらが実績として強いかと言われればもちろん後者だ。
「受けます」
「……理由を聞いても?」
なぜ? この依頼を達成してもあなたには対してメリットが……、
「メリットがないとかあるとかは一旦置いといて、一度受けるって決めた依頼を投げ出す? のは良くないかなって……」
「……なるほど。新人冒険者らしいおかしな理由ですね」
そんなくだらない理由で受けるのか……普通の冒険者ならそんな理由じゃ依頼を受けたりなどしない。
「お、おかしな!?」
「あ、いえいえ。決してあなたをバカにしているわけではありませんよ。いい意味で、です」
「そうですか……ならいいんですけど」
こんなおかしな理由で依頼を受ける冒険者は本当に珍しい。
「そういえば、あなたのお名前を聞いていませんでしたね……お名前を聞いても?」
「モルス・ディアスです」
モルス・ディアス……か。
おかしな冒険者だ……覚えておこう。
☆☆
「あの〜……聞きたいんですけどポーション屋ってどこにあるんでしょうか?」
「受ける依頼……落し物探しの場所さえ知らないとは驚きました。……少し待ってください、ポーション屋までの道のりを教えますから」
「ありがとうございます!」
依頼主はポーション屋の店主。
金が入った皮袋、財布を落とした場所はポーション屋らしいが俺はそのポーション屋の場所さえ知らなかった。
依頼などを受けに来る前にアフォレスト街をしっかり見て回る必要があるな……。
受付の青年が渡してきた小さな紙には冒険者組合からポーション屋までの道のりが書かれていた。
その紙に書いてあった字がすごく綺麗で、定規を使ったとしか思えない矢印が書いてあり俺はかなり驚いた。一瞬黙るほどに。
「では気をつけて」
「…………! はい!」
冒険者組合を俺は出た。
紙に書いてある矢印に従い道を進む。
(こんな丁寧に書かれた道案内の紙……初めて見た……)
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