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28匹目 やっと見えました

「グルルル」


「あ、いや、ごめんなさい。やっぱり何でもないです。気にしないで下さい」



 喉が潰れたような鳴き声に度肝を抜かれて、思わず口走ってしまったことにハッとなるより早く「オンリョウとは何だ」と反応してくれたランドキングビーさんに慌てて謝った。思うのは自由だけど流石に口に出しちゃ失礼だよね、危ない危ない。


 しかし何だったんだ今のは。


 目をパチクリさせていると、暗闇から大きな火の玉が出現した。

 火の玉は辺りをまばゆく照らしだして、洞窟の光となる。何か燃やしている風ではないので、火の玉、というより発光体と言った方が正しいか。洞窟内での多大な燃焼は命取りになるので、これは助かる。



 目の前で、アンシェントリザードさんの全貌が明らかとなった。


 やはりデカかった。

 身体を丸くして尾は腹に隠れているけれど、それでも体長30、40メートルはあるだろうか。楕円をした幅も太く、10メートルくらいは軽くありそう。

 全体的には、丸々と太ったイモリやヤモリが潰されてしまったような体躯をしている。

 水分を含んでヌラリと光る皮膚は無数の大きなイボ状で覆われており、色は暗褐色で、不規則に黒い斑がはいっている。これを土塊などと表現したのも得心がいく。

 此方を向く顔の頬あたりには確かにナマズのようなヒゲがあり、小さな黒目が離れて付いていて、それは静かに私とランドキングビーさんを見据えていた。

 ぱっくりと割けた口から僅かに光の片鱗が残る。発光体は、このアンシェントリザードさんの能力のものだった。


 この最深部は巨大なアンシェントリザードさんが居ても、あと二匹は入りそうなかなりのゆとりが残るドーム状の空間となっており、私達とアンシェントリザードさんとの間に結構な距離があった。そう、距離があるのだ。加え、アンシェントリザードさんは悠然と横臥して構えている。のにも関わらず、この歴戦の兵を前にしたような畏怖と緊張感。目視可能となったことによって、ようやく私にも場の雰囲気が伝わった。ピリピリしてて、あのナイトメアの暴君を見た時と少し似ている。さすがは天下無敵のドラゴン系といったところか───。




「ヴォエエエエエエーーーッ」



 ………………そうですか、そうですか。どうやらその豚の断末魔のような御声は貴方様のもので間違いないようですね、ええ。カラオケなら音痴だけど私の方が多分上手いな、うん。ようやく勝てそうな相手を見つけれたなぁ。

 アンシェントリザードさんの言葉に、ランドキングビーさんが私の方に顔を向けた。ぎゃーーーーっ!しまった、心の声でも伝わってしまったか!?




「な、何を言われたんですか?ランドさん」


「グルルル、グルル」




 ほっ、よかった。「言語を聞いてみたいと言っている。何でもいい、何か文を話してみろ」ですか。よーし、そういう頭を使わないことなら任せてください親分!




「えっと、私の名前は山田花子といいます。親が吉〇の新喜劇が好きでこの名前を付けられてしまいました。西暦199〇年5月5日のこどもの日に生まれました。誕生写真は女の子なのに兜や鎧でいっぱいです。18歳で、〇〇女子大生です。女の子ばっかりなので格好いい女の子に凄くときめいてしまいます。入学してまだほんの少しなので新生活が楽しみなのですが、四年制なのでいつか禁断の扉を開いてしまいそうで自分が恐ろしいです。アルバイトは現在していません。高校のときは小さなコンビニでしてました。ヤクザっぽい店長でしたがクマちゃん好きな可愛い人でした。男性経験はありません、彼氏は随時募集中です。結婚は30までにしたいなとは思っているのですが、正直、相手が見つからない気がしてなりません。見つからなかったら大人しく親孝行、老介護でもしてたまに自分に美味しい肉やブランド物を与え贅沢をさせるつもりです。あっ、趣味は」


「…グルルル」



 ランドキングビーさんから「もう十分だ」と制止の声がかかったので、私は素直に口を閉ざした。ランドキングビーさんがアンシェントリザードさんの方へ顔を戻す。視線を受けたアンシェントリザードさんが「ヴォエ、ヴォエ」と応えて、目蓋を閉じながらため息を吐き、首を横に振った。

 ……………内容に呆れて首を振ったわけじゃないよね?




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