<秘密破れ>第二部
翌々日の朝、新聞に目を通した小説家は顔を青ざめた。
「これ見てくれ!ここ、この部分‥」
そこに書かれていたのは少年の父のことだった。
“少年の部屋のドアに錠前発見!監禁の疑い高まる”
「もう一つ下‥そうそこ‥」
“少年行方不明・警察全力で調査中・自殺の可能性も”
「自殺はともかく調査はマズい…親戚がいないこと、つまりすみかがないことはもう知られてるしな」
ミュージシャンがさも不安という顔で言った。
「しばらく空き家へ逃げ込もうか」
少年が言った。
だがそれから四日後の夕方、茜色の街にいたところを三人はあっけなく警察に捕らえられてしまったのだった。
「お前たち、薊色の街の家で食料を盗んだな?」
取り調べで、いかつくて厳格な警官が三人に尋ねた。
「家の主人が異変に気づいて家中を調べたそうだ。そして屋根裏部屋をみたときは腰を抜かしたそうだ。心当たりがあるな?」
警官はいまだ厳格な目つきで続けた。
「そのときの顔が見たかったね」
ミュージシャンがいたずらに言った。
「息子監禁の事件を思い出してな。この辺の街のすべての家に、家宅捜査を強制したんだ。テレビのないお前たちは知らんかっただろう」
「新聞に出ていなかったのは?」
少年が冷静に尋ねた。
「お前たちに知れることを恐れたからだ。苦労したぞ、まず新聞社に…」
警官がベラベラ話しているとき、三人はとても悔しい想いでいた。表に出すのが恥ずかしく強がっていたものの、内心では泣きたいくらいズタズタに潰れていた。特に少年は。
「少しチャンスをくれ!時間を!」
少年が警官の話の腰を折って言った。そして
「一晩だけ頼む!どうしても時間がいる!」と続けた。警官はもちろん、二人も口をあけたまま驚いていた。
「ダメダメ。逃げるに決まってる!」
警官が言った。
「完全に包囲してくれていい。やらなきゃいけないことがある。そして、僕には時間がない」
少年はものすごい剣幕で言った。
「良かろう…」
警官は迷ったがやがてそう言った。そして
「ただし二時間!二時間だけだぞ。その間周囲を完全に包囲する」と続けた。
話のわかる警官だった。少年は「ありがとう」と言って場所を教えると、二人と一緒に外に出た。
「なにする気だ?まさかお前…」
「大丈夫、逃げるつもりはないから。ただ、大事な話がある」
三人はクローバー平原についた。周りをぐるりと警官に囲まれ、おかしな空間である。
秋も終わりに近い。冷たい風が三人の頬を撫でつけ、隅にある柳の木も寒そうにしている。
三人はまず空き家に入った。そして持ってきた鉛筆と紙を机の上に置いた。
丸窓からは輝く星たちが三人を見下ろしていた。