<家出>第三部
「いいか?家に強盗が入った。お前は警察になにを聞かれても黙っているんだぞ」
父が帰ってきて言った。
「冗談じゃない。アンタのことを言ってやる!そうなりゃ逮捕は間違いない」
「待て!いいか容疑がかかるんだぞ?でもオレがここでお前は外出していたと一言言えば乗り切れるんだぞ?」
「僕が盗んだわけじゃないんだから関係ないさ」
「ちっ!」
舌打ちをして父はハンマーを取り出した。
「だがこうしてしまえば証拠はねえさ!」
そういうと父はハンマーでドアの鍵を壊した。
「強盗の野郎と同じやり方だ…残念だったな」
そう言い放つと父は携帯を取り出した。
「もしもし?警察か?今すぐ来てくれ…住所は…」
五分後、警察がやってきた。警官の一人が父に話しかけた。
「ご家族の方は?」
「息子がいます。案内しましょう」そういって何人かがゾロゾロと少年の部屋に押し寄せた。
「君はこの部屋にずっといたのかな?」
「はい、ずっといました」
父は不安でたまらないという顔をしている。
「じゃあ何か音を聞いたりしただろうね?」
「いいえ。壁が防音になっていますので」警官は顔をしかめた。
「防音?何のために?」 「それは…」
「勉強をするためです」少年の言葉を遮って、父が言った。
「いやあ近所からの騒音がひどくてね。支障が出ないようにと」
警官に納得した様子はなく、疑っていることは明らかだった。
「じゃあお二人さん、事情を聞きたいからついてきてよ」
少年の心は踊っていた。もうこれで外へ出てしまえば帰ってくることはないと、少年は振り返らずに車に乗った。
二人は証拠が見つからないということで、一時的に解放された。
「先帰る」少年が言った。
「なんでなにも言わなかった?」父が不思議そうに尋ねた。
「僕が言わなくてもいずれ捕まるからさ」
「何だと!?」
「もう運命なんだよ。アンタは捕まって自由を手に入れられない。僕は手に入れる」
父は今にも怒りで狂いそうだった。
「長くいきることよりも自由を求める。アンタと違ってね」
「何を言っているのかわかっているのか?帰ったらすぐ鍵をかけてやる!」
「ぜひぜひかけておいてくれよ」そのときはもういないよ、と心の中で舌を出した。
こう言って少年は帰っていった。
取り残された父は怒りで真っ赤になり、座っていた椅子を思い切り蹴飛ばすと、唾を吐いた。
少年は計画通り窓から投げておいた軽い荷物をかつぎ、そのまま家出した。途中、雨が降ってきたので暗いゴミ捨て場で雨宿りをした。隣には栗毛色をした猫がいて、少年と並んで雨を見ている。
「君となら心が通じ合いそうな気がするよ」
やがて少年は立ち上がり、あてのない旅に出た。途中までお供するようについてきた猫とお別れをして、また大きく息を吐いた。
雨はいつの間にか止んでいた。




