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それでもいい
カップの中身を、ゆっくりと飲み干す。
最後の一口は、少しだけ冷めていたけれど、その分、味がはっきりとわかった。
私は席を立つ。
「……ごちそうさまでした」
小さくそう言って、カウンターへ向かう。
おじいさんは、変わらない手つきで次の珈琲を淹れていた。
お金を置こうとした、そのとき。
「ここには、いろんな珈琲があるよ」
ぽつりと、そう言う。
「またおいで」
私は一瞬だけ、言葉に迷ってから、
「……ありがとうございます」
と答えた。
店の扉を開ける。
外の空気は少しひんやりしていて、でも、どこかやわらかかった。
さっきまでとは、同じはずなのに、少し違って見える。
胸の奥に、まだあたたかさが残っている。
私は、ゆっくりと息を吸った。
コーヒーの香りはもうしないけれど、代わりに、外の空気がちゃんと入ってくる。
――それでもいい、と思った。
私は、ここにいる。
そして、歩き出した。




