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俺の後ろで部活作り

悠然としたこの空間はあいつがいないから起こるのであって、あいつがいれば何か事件を持ってくるに違いないので、できればいない方がいい。



俺の前には小沢が座っている。

小沢の微笑が目の前に………熱血野郎ってのはバカ笑いしかしないと思ってたよ

熱血野郎には似合わない微笑をしながら、口を開けた。


「なあみのる…………」


それは実に乾いた声だった。


「なんだ?」


その微笑を続けたまま


「俺たちなんでこんなことになってんの?」


俺も微笑…………それから爽やかな笑顔で俺は返す


「さあな」


この状況を作り出したのは昨日のことである。


_______________________________________________



朝のホームルーム前、俺はニナに部活動の話を持ちかけていた。

そして、結果として出たのが、部活動を作るという話であるのだから、全くめんどうだ。


自称魔王のバカみたいなニヤッとした顔は行動力に満ち溢れんばかりのオーラを放っていた。


「さあ!どうやって作るの?」


何の話だ、こん畜生!

俺はやる気ゼロの怒りをぶちまけた声で言った。


「部活よ部活!」


そんな連呼されてもなぁ〜


「早く教えなさいよ!」


そう急かすな、俺だって教えたくてやってるわけではないのだ。

仕方ない、言うか………


「まず、部活動作成の申請書じゃないか?そんで持って名前やら目的やらを決めて、部員を集めて、場所の確保………うーーんそんなもんか」


俺が提案したことはできるはずもないことだ。

誰がこんな中二くさい奴と関わりたいだろうか。

いるわけがない。

正直、軽く軽蔑されるか、いい病院を教えてもらえるかのどっちかだろう。


「部員は何人必要なの?」

「四人ぐらいじゃないか?」


すると、自称魔王のドヤ顔が出た。

さも、嬉しそうに教室を出て行こうとするので、俺は「昼休みでいいだろ」と言い留めておいた。


ニナはホームルーム真っ最中、部活動を一生懸命書いたようで、先生が話している間も出欠確認の時も「はい」っと一言述べただけだった。


できないことをやらせている自分に心が痛い。


さらに、授業中ニナは後ろでまだカリカリと何かを書いていた。


そんなにかかるか?






授業も終わり、俺は鳴海たちと弁当を食おうと思った矢先、俺はニナに声をかけられた。


「下僕、ちょっとついて来なさい」


はい、スルーーーーーーーーー


「ちょっと、下僕‼︎」


はいはい、スルーーーーーーー


「ねぇ、みのるったら!」

「なんだよ」

「さっきから呼んでるでしょ⁉︎」


ニナは実に不満そうである。

なんでそんなに怒るんだ?


「俺は下僕なんて始めて呼ばれたわ‼︎」

「全くダメね」


急にまとめやがって。

そのセリフそのまま返したい。


「いい⁉︎今日からあなたは私の下僕よ」

「なぜ、俺がお前の下僕にならなきゃいかんのだ‼︎」

「いいじゃない!」


誰か助けてください。

慈悲をください。


「さあ、下僕!隣のクラスに行って、カリフォンドを呼んできなさい!」

「誰だよ⁉︎」


そして、俺は次の言葉にさらなる残念を思うのだった。


「悪魔大司令官よ!」





で、俺は今隣のクラスに来て、小沢を呼んだところだ。


「よう!どうした?」


相変わらず、なにか熱意を感じる。


「いや、呼んで欲しい奴がいるんだけど…………」

「ああ、分かった!」


そう言うと、小沢は教室に戻って行った。

えっ?俺まだ何も言ってないけど…

そして、後ろに誰かを連れて戻ってきた。

小さくてよく見えない……


「みのる、こいつのことだろ?」


そう言って、俺の前に出てきたのは、小さな体だが、その体からはどこかで感じたことのあるものだった。

それに頭から角がちょこんと………って…ええっ⁉︎


「おお!驚いた顔してるな?」


そう茶化す小沢だが、クラスの目が痛い。

そう思うのも小沢の席がこいつの前だからである。

友は類を呼ぶってこういうことだな。


「初めましてカリ・アル・フォンドと申します」


咄嗟の自己紹介だったので、戸惑ったが、ニナよりはまだマシだ。


「総帥がなにかご迷惑をお掛けしましたか?」


とてつもなく外国人とは思えない自称魔王の配下はご丁寧なまでに言葉が慎ましかった。


「いや、俺はカリフォンドを呼びに行ってこいって言われただけだ」

「そうですか、では参りましょう」

「お、おう」


そう言うと、そそくさと俺のクラスに入って行った。


残された俺と小沢………俺は叫ぶ


「何があった小沢ぁぁぁ!!」

「俺にもわかんねぇぇぇ!!」


少し収まったところで、事情を把握する。

どうやら、小沢も俺と同じ境遇だったらしく、自己紹介の時後ろのやつが「悪魔です」と名乗ったらしくクラスは大騒ぎになったそうだ。


そんなことを廊下で話していると教室から異世界コンビが出てくるので、これはまずいと思った。

小沢も同じくそう思ったらしく、俺と走り出した。


「ちょっと、待てニナどこ行くんだ」

「そうだぞ、カリフォンド」


異世界コンビはキョトンとした顔で、


「何言ってるの?あなたたちも行くのよ」


当然!と言ったような顔で言われるとこちらもなかなか言い返せない。




職員室に着き、俺らは原田の前に立っていた。


「んで、どういうことだ?」


そう言ってくる原田は実に不満げだった。

すると、我こそはとカリフォンドが前に出て事情を説明する。



「なるほど、まあいいんだがそういう同好会みたいなのは部員が5人じゃないといけないんだ」


おかしい、部活動は普通4人だった廃部にならないはずだ。


「同好会だと、来ない奴もいるかもしれないからな」


すると、ニナが前に出て、


「先生!」

「お、おう………なんだ?」


突然でびっくりしたのか体がビクんと言っているのが目に見える。


「時間をください、来月あたり転校生が来るかもしれません」

「んーでもなぁ…………」


考えんなよ、すぐやめさせろ!

しかし、俺の考えはすぐ打ち消された。


「いいんじゃありませんか?原田先生」


原田の名前を呼んだのは、学校一美人と評される弥生先生だ。


この先生は謎が多く、学校でも美人の噂と天秤にかけられるぐらいだそうだ。


「弥生先生がそう言うならいいか」


随分とあっさり決めるな!おい!


デレデレの原田はもう使えないので、俺はもう諦める他なかった。




原田に案内されたのは学校から出て、別棟に行きそれの二階のさらに奥だった。

別棟は学校の裏にあり、二階建て四室の建物だ。

また、随分と掃除が行き届いておらず、まるで廃校した学校のようだ。

どうやら、こちらには2、3年誰も来ていないようだ。


「お前らの部室はここでいいよな?な?」


なんでそんなに焦っているのかとても気になるが、今はいい。


「じゃ、じゃあ後は楽しんでくれ」


そう言うと、原田は大人気なくも走り去って行った。


その後、俺たちは大掃除に励み

ついでに他の部屋も掃除した。


_______________________________________________



そして、俺は今に至る。

掃除も終わりゆったりと流れる時間、外からは野球部やらサッカー部の声が聞こえ、吹奏楽部の高い音色が聞こえる。

カリフォンドとニナは何やら今日は忙しいらしく、先に家に帰り俺たち2人はこの薄気味悪い別棟にいるのだ。


そろそろ夕方だ。

夕日が俺たちの背中を赤く染め、生徒たちの心も自然と学校から出たくなるような雰囲気。

俺は小沢と共に久しぶりに長々と話しながら帰宅した。



その時、俺はまだあの別棟のことについて全く何もさっぱり知らなかった。

そう、いつまでもこんな平和な一日が過ぎるなんて思っていない。

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