第2話 憧れのセイバーになりたくて
頑張ります。
暖かい光があった。
手に取りたいと手を伸ばした。
伸ばしても届かない光。美しいと思った。
届かいないんだ。
ならつなげよう。
それが俺の大事な信条だった――――――――
――――――――――あぅ?
真っ白。
光。
誰?
顔?
笑ってる。
安心する。
もう少しだけ寝て居よう。
安心するから。
「この子は私に似ているわね。」
「いやいや俺の方だって、ほらみてみろよこの眉。俺にそっくりじゃないか」
「そうね。私たちの子だから、お互いのいい部分を受け継いだのよ。」
「――――――――生まれてきてくれてありがとう、アスト」
良い音が断片的に聞こえてくる。それを繰り返してはまた眠りについた。
気づけばそれは日常で、僕はもう5歳だった。
「アストちゃん。今日は私たち教会にお呼ばれされちゃったから、一人でお留守番だけど大丈夫?あぶないことはしちゃだめよ。」
「アスト!父ちゃんが帰ってきたら、セイバー様のような剣術を教えてやる。だから大人しく待っとくんだぞ。約束できるな。」
二人とも心配なんだ。
「うん。分かった。危ないことはしないよ。お父さんとお母さんも気を付けてね。」
笑顔で二人とも見送った。
別れ際、なんてかわいいのかしらとか、感極まって泣いてしまいそうになっていたけど大丈夫かな。
ふうさてと、お父さんは剣術を教えてくれると言っていたし、お母さんもきっと僕がセイバーになるのを応援してくれると思う。
いつも見ているセイバー様。
セイバー様はとてもかっこよくて勇敢でこの都市を悪い敵から守ってくれている。
この都市の外には怪物。通称、エゴイスタと呼ばれる怖い怪物がいるらしい。
なんでそうよばれているんだったけ?
そうだ、神様が名付けたんだった。
確か悪い人間はみんなエゴイスタになってしまうから、神様がエゴイスタになる人間を外に追い出しちゃうらしい。
怖いよなぁ。でもセイバーになるためにはそんな怖い怪物と戦えるようにならなきゃなのか。
怖がりな僕には少し難しいかもな。
でもやっぱりセイバー様はかっこいい。
あの真っ黒な鎧に兜の二本角、紅く輝く剣。
何度も見ても本のセイバー様はかっこいい!
実際にはまだ見たことないけど。
セイバー様は普段、都市の外や門にいるから見る機会がない。
僕はそもそも家の外に出してもらえないから、外を見ることも出来ないけど。
でも次の誕生日には学校って場所で友達を作れるらしい。
楽しみだな。どんな子がいるのかわくわくする。
ちょっと頭を使いすぎたのかなぁ......眠たくなってきちゃった。
ほんの少しだけ寝ちゃおうかな。
ダンダン。
ダンダンダン。
ダンダンダンダン――――――
――――――パリン!!!!
「なに!?」
夢中で飛び起きる。
何かが壊れる音がした。
それが何かは分からない。
今も何か外で聞こえるてくる。
激しい音だ。
待って!?
僕の家の玄関から音が鳴っている。
何が起きているの?
恐る恐る、確かめるように近づいていく。
覗いてみると。やっぱり音は玄関の扉から聞こえていた。
何かを伝えるような音。
何かが必死に何かをひっかく音。
それが何なのかわからない。
まったくの未知が頭を窮屈に締め上げてくる。
痛い。
聞いているだけで耳が痛い。
うるさい。
何かがおかしい。
僕は怖くなってベッドに包まって隠れることにした。
何も聞きたくない。
怖い。
分かんない。
早く終わって、早くどうにかして!
セイバー様!助けてよ!
心の中の絶叫が木霊する頃には、扉から音は聞こえなくなった。
代わりに2回だけ何か強い音がした。
終わったの?セイバー様が助けに来てくれたのかな?
急いでベッドから飛び出して、玄関の扉を開いてしまった。
ガチャリと開けることのできなかった扉を開き、見たことのない外を見た。
ただその先の世界は赤色だった。
セイバー様みたいな人が何故か、お父さんとお母さんを捕まえていた。
「え?お父さん?お母さん?」
僕の声は聞こえていなかった。
振りむいてもくれなかった。
「セイバー様?なにがあったの?」
僕の問いかけに白銀のセイバー様が答えてくれた。
「君の両親は《《罪人だった》》。だけど君は罪人じゃない。安心してほしい、エゴイスタになる前に楽にするから......すまない。」
聞こえないくらいのつぶやきが聞こえた。
兜の下は悲しそうにしていた。
そうなんだ。
あっさりと受け入れている自分がいた。
難しい感情だった。
怒りたいのに、泣きたいのに、突然すぎた。
僕は今日、二人の両親を失った。
玄関の扉をゆっくりと閉めて閉ざす。
頬から顎を伝って水滴が零れ落ちた。
口の中は塩の味でいっぱいで、胸が張り裂けそうなくらいいっぱいだった。
不規則な呼吸で息が詰まる。
戻りたいのにもう、明日は同じじゃない。
不安の波で心が押しつぶされる。その手前だった。
でも、玄関の扉が開いて誰かに抱きしめられた。
それが誰かは分からない。
誰でも良かった。心地の良いふんわりとした香り。銀色の何かが視界の端に映った。
今はこの安心に背を預けてしまった。
少年を胸に抱いてベッドに寝かせる。
両親を失うという経験は筆舌に尽くしがたい絶望だろう。
少年が失うにしては速すぎることだ。
耐えきれないはずだ。
それでも私は処刑した。
それが私に課せられた使命であるから。
最高神ラスト様に仕えるリターナーとしての使命。
本当は私だって....................
もういい戻ろう。これ以上は怪しまれる。
ただ彼の助けになればと思い、アスト少年の評価値を上げておく。
「こんなことしかできない無能でごめんなさい。」
「ペイルライダー様!どうかされました?」
「いや、なんでもない。直ちにその者たちをペイルジアの外に追放しろ。」
「了解しました。」
セイバーたちが少年の両親を護送車に詰める。
その護送車が視界から消えるまでずっと見つめていた。
「私はいつになったら死ねる。」
神に問うが答えは帰っては来ない。
この力は私の死を知らせない。
「さようなら、アスト少年。」
私は呼び出した死の馬を操ってその場を去った




