45
私はレイの圧によって、彼の話を黙って聞いた。
「お前のことを殺したいぐらい憎んでた。悪口だって散々言ってきた。……それなのに、なんだ昨日の言葉は。……お前の言葉が正しいなら、俺の歩いてきた道は、何だったんだ。俺はずっと間違っていたのか?」
「……私の作戦で彼らが死んだのは事実だから」
私はレイの追い詰められたような余裕のない表情を見つめながら、そう答えた。
少しの間、沈黙が流れる。私は再び口を開いた。
「お兄さんを家に帰せなくてごめんなさい」
その瞬間、レイの目の奥が揺れた。彼は唇を開きかけて、閉じた。
私はレイを見つめたまま、キール・ウッドという男性を思い出していた。あまり会話をした覚えがないけれど、訓練で私が隊長にものすごく怒られて涙を流していると、慰めてくれた。
騎士団に小さな女の子がいると士気が下がるという隊長に反して、キールは雰囲気が和んでいいじゃないかと言ってくれていた。
「兄を覚えているのか?」
暫くして、レイが少し震えた声でそう言った。
「昨日言った通り、誰一人忘れていないよ。顔も声も名も全て思い出せる。……キールに弟がいたっていうのは初耳だったけどね」
「……兄の好きな色は?」
突然、何の問題……?
私はこの重い空気の中で思わず怪訝な表情をしてしまった。そして、訳も分からずに、とりあえず「黄色」と答えた。
再び、レイは固まって私をじっと見つめた。
ちなみに、キールが好きな色をさらっと答えられたのは、一度本人から聞いたことがあるからだ。
あれは、確か………、そう! キールが誕生日プレゼントで赤いネクタイを貰っていた時だった。
私もお祝いの言葉をかけて、赤が好きなのかを聞いた時だった。彼は苦笑して「皆、僕の好きな色を赤だと思っているんだけど、本当は黄色が好きなんだ。けど、今更言えなくてね」と困ったように笑っていたのを鮮明に覚えている。
というよりも、キールとの記憶の中で、その記憶が一番濃いかもしれない。
「……毎年、兄の命日に黄色い花を墓に置いていたのって」
「私だよ」
彼らが死んだ日になると、毎年、花を持って夜中にお墓に参っていた。夜中は人がいないから、私が置いたとは誰も気付かない。
キール以外の皆が好きな色なんて全く知らなかったから、この人はこの色が好きそうだろうなって花を選んで、それぞれの墓に供えていた。
……あ、でもマリック隊長の好きな色だけ知っていたかも。えっと……、緑色!!
緑は目を癒す効果があるとかなんとか言って、いつも緑色のハンカチを持っていたから覚えている。マリック隊長のお墓には、花よりも葉っぱの主張の方が大きい花を供えている。緑色の花なんてないからね。




