46
「……ずっと不思議だった。赤い花の中にいつも一輪だけ黄色い花がある。調べてみたら、兄が所属していた部隊全員分の墓に、誰が置いたか分からない花がいつも一輪だけ置いてある。…………ケイト・シルヴィ、お前が置いていたのか」
まるで探偵みたい……。
私を真っすぐ見つめるレイに向かって「そうだよ」とニコッと微笑んだ。
「キールって本当に黄色が好きなんだよ。今更もう言えないって言ってたけど」
「……兄が?」
私の言葉にレイは眉をひそめた。
そりゃ、疑われるよね~。大好きなお兄ちゃんの好きな色を私の口から聞くのも嫌だろうし……。
レイは少し間を置いて、再び口を開いた。
「……なんとなく分かる気がする」
「え?」
今度は私が眉をひそめてしまう。
まさか、こんなあっさりと私の言葉を受け止めなんて……。寝ている間に毒でも盛られて、人格変わっちゃった……?
「自分でこっそり買っていたものは黄色のものばかりだったからな」
レイはキールを思い出しながら呟き、口の端を少し上げた。
確かに兄弟だもんね、キールの好きな色に気付かないはずがない。さりげなくキールを知っていますアピールをしたけど、意味なかったかも。
「言いたいことは言えた? そろそろ出発するよ」
私は強引にレイとの会話を終わらせて、立ち上がった。暗い話は朝からしたくない。それに、いくらレイの考えが少し変わったからと言って、私に対しての憎しみは完全に消えないだろう。
まだ残っている依頼を終わらせることに焦点を当てないと……。
「次はどこに向かえばいい?」
話を進めるために、私はレイにそう聞いた。彼は硬い表情のまま鞄から書類を取り出して、紙をめくる。数枚めくったところで、黙って私に差し出した。
私は次の依頼を確認する。
……ほとんど被害ないじゃん。……まぁ、だから騎士団を派遣させずに後回しにしているんだろうけど。
この程度の魔族なら、目を瞑って戦っても勝てちゃう。
「しょぼい魔族って本当に戦い甲斐がなくて面白くないんだよね~~」
私はどこか落胆しながらレイに書類を返した。
この世界は少しずつ魔族や魔物が現れて、じんわりと侵略されている。その度に各地で潰されているから、今のところそこまで大きな問題にはなっていないけれど、ポジー村のような件は別だ。あれほど派手にされると、最優先で騎士団は動くことになる。
ブツブツと文句を言いながら、私は歩き出した。
「下っ端ばっかりをちまちま寄越さないで、とっとと魔王来てよ~~。……いや、今の私の実力で来られたらまずいか。……やっぱり、下っ端ばっかりでいいや~~。これでお金になるんだったら、万々歳~」
なかなか世間からバッシングされそうなことを言っているという自覚はある。
足を少し進めたところで、レイが後ろから「聖女」と低い声で口にした。相変わらず、私のことは名前で呼んでくれないみたい。
私は「何?」とあからさまに嫌な表情をして振り向いた。
「私の発言に対する苦情なら聞かないよ? てか、独り言だし」
今の私の言葉を聞いて、レイなら「お前はやっぱり魔族と戦うことに快楽を覚えているクソ野郎だ」なんて言いそうだもん。先に予防線張っておかないと!!




