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少し落ち着いてから、私は先ほど考えていたことを口にした。
「善良で真面目な難民にはチャンスを与えたいと思うんです。問題を起こしたものと同じように扱う必要はないかと……。ただ。一人のために特例が認められれば、同じ要求をする者が必ず現れます。私はこの完成された体制を揺るがし、崩壊させたいとは思っていません。下手な変化を起こすと損失は大きくなりますから」
「特例を見つけ出す方法は?」
私の考えに王子は否定することなく、質問してくれた。私は少し間を置いてから答える。
「試験を設けてはどうでしょう。能力と品行の両方を審査し、基準を満たした者にだけ、特別自治区の外で働く権利を認めるのです」
「お言葉ですが、自分は制度を変えるのは反対です。現状維持が一番いいかと」
オースティンが話に割って入る。
もちろんオースティンの意見も分かる。私もその気持ちは大きい。変化には誰だって不安を覚えるもの。けれど、変化を拒み続ければ、成長もまた望めない。
「変化には危険が伴うということは百も承知です。ですが、何も変えなければ、何も得られない。エワットの中から有能な人材を見いだせれば、魔族の侵攻で生じた人手不足も、いくらか補えるかもしれません」
睡眠をとったおかげか、かなり頭が冴える。
いつも不真面目な私だけど、こういう時にしっかりと真剣な意見を発しておきたい。折角、王子や副監査員長が私の言葉を聞いてくれる機会だもの。逃すわけには行かない。
「……確かにこの国は魔族との戦いで疲弊している。表立って出ていないが、かなり深刻な問題だ。これと言った解決策も未だ見つかっていない。……君の案に賭けてみるのも、悪くないのかもしれない」
王子はオースティンの方へと視線を向ける。オースティンは軽く頭を下げて、「我々は貴方の命令に従うだけです」と口にした。
これにより、エワットに対しての選抜試験が行われることとなった。
♢
エワット特別自治区を一通り見回り、私たちは帰ることにした。
オースティン曰く、課業が終わる前にここを去った方が良いらしい。課業後はエワットたちが外で過ごすことができる。そこに私たちがいると、注目を集めてしまうって。
何事もなく平穏に帰るには、今がベストというわけだ。
私たちは門の近くへと足を進める。
エワット特別自治区の中にある住宅地はどれも似ていて、区別がつかない。迷子になったら、結構大変だと思う。
とりあえず、織物工場に向かえば何とかなるか。いや、でもオースティンがいないとたどり着けない気もする。
エワット特別自治区の地図とかないのかな。王家秘蔵書庫を探せば見つかりそうな気もする。
そんなことを考えながら歩いていると、ふと、空から大きな布がふわりと落ちてきた。




