旅の思い出 その1
前回のあらすじ
旅がひと段落ついたことで心に余裕が生まれたリンスたち。
夜を明かす前に、今までの旅を振り返ることにした・・・
家のベッドで寝ていたのは、もうずいぶんと前のことに思えてきた。
毎朝の嫌がらせがなくなったのはいいが、あのフカフカの毛布が懐かしい。
酷使したせいでボロボロになった犬ぞりにもたれかかりながら、リンスは思いをはせていた。
一人で過ごしていたのは、もうずいぶんと前のことに思えてきた。
リンスは相変わらず手を焼くが、なんだかんだ言って時折見せる感謝は心地いいものであった。
いまだにヒビ一つ入っていない頑丈な鍋を洗いながら、ワン公は思いをはせていた。
退屈だった日々は、もうずいぶんと前のことに思えてきた。
代り映えのない世界で、あの犬の兄ちゃんのおかげで刺激ある経験ができた。
燃えカスとなったコクピットに座りながら、幽霊は思いをはせていた。
ちゃんと定職についていたのは、もうずいぶんと前のことに思えてきた。
開発中のスカルタンク2号をおしゃかにしたことで、クビになってしまった。
魔法使いの小娘から分けてもらったキノコ鍋をつつきつつ、髭面の男は思いをはせていた。
希望に満ち溢れていたのは、もうずいぶんと前のことに思えてきた。
道中出会ったDr.コレクティアンとかいうやつに、変な声だと馬鹿にされたのは理解できない。
謎の巨大頭蓋骨に腰掛けながら、マサルは思いをはせていた。
「さあ、そろそろ寝ましょう。 明日はいよいよ町にでるわよ。」
廃墟となった砦の上で、異なる人生を送ってきた者たちが共に就寝に入った。
まだまだつづく