屋敷前にて
一旦部屋へと戻り、タンスを漁り下着だけ義替え、昨日と同じ制服で玄関へと向かったタカハシ。
其処にはまるで社交ダンスでも始めるかの様なドレスを着たマリコデスが待っていた。
その煌びやかな衣装に対し、タカハシはマリコデスの事を『可愛い』と感じるより先に『何故ドレス!?』と疑問を感じてしまう。
「あー、うん。待った?」
「大丈夫!私も今来た所!」
ドレスを着たマリコデスに対して『何故そんな服を選択したのか、他の選択は無かったのか』等確認したい数々の想いを飲み込み、ただ一言『待った?』と確認したタカハシに対し返された言葉『大丈夫』。
タカハシは思った。
大丈夫ってそのドレスで外歩くつもりかよ!?つか靴!!制服用の革靴!!革靴でドレスって!!
あとドレスピンク過ぎ!!革靴黒過ぎ!!バランス悪すぎ!!後寝癖!!後ろ髪跳ねてますから!!
舐めてるよ!舐めきってるよ!!昨日ドラゴンが襲ってた街だよ!?炎吹かれてた街だよ!?
何故ドレス!?それで戦えるの!?まぁぶっちゃけギャグやるだけで戦わないんだけどさー!!
だったらそのドレスでギャグやれんのかって話!!おかしいよね!?おかしいよね!?
数々の想いを飲み込みタカハシが発した言葉は一言。
「オケじゃ行こう」
「おー!」
気合いを入れ右手を上げるマリコデスだったが、その仕草はドレスを着てやるには似つかわしくなかった。
2人が玄関のドアを開け外へ出ると目の前には昨日と違う街の風景が広がっていた。
それは郊外にある2人の屋敷からでも判る程の復興の『活気』であった。
街から退避していた人々が戻り、そして被害を受けた街を復興しようと活発に動く姿は、タカハシの目には躍動感溢れる輝かしい物に感じられた。
「なんかあっちの方ごちゃごちゃしてて埃っぽいね」
「ちょ!?なんて事言うの!?一生懸命生きてる!!生きてる活動よ!?」
「あー。うんわかった。でも埃っぽいのは事実よね」
「いや確かに埃っぽいけど!!人間の生の営み埃っぽいって言っちゃダメ!!」
「性の営みってタカハシエロいー!」
「いやエロいって!?エロいかエロく無いかで言えば確かにエロいかもだけど生の営みは、ん?性の営み?いやいやそうじゃ無くて、生ね生!ナマよナマ!!」
「ナマ!ナマ!ってタカハシ、ビール頼むサラリーマンみたい」
「あー、うんサラリーマンで良いや。エロいタカハシよりサラリーマンタカハシのがマシだ」
エロいやらサラリーマンやらとマリコデスから揶揄されたタカハシは反撃とばかりにドレスと革靴の組み合わせを追求する事にした。
「ところでマリコデス、そのドレスと革靴の組み合わせはどうかと思うよ?」
タカハシの突然の反撃にマリコデスは驚き目を見開いて答える。
「え!?何を言ってるのタカハシ!?この舗装されてない道をハイヒールで歩けと!?
そう言うのタカハシ!?何歩も歩かない内に足疲れるよ!?ヒール脱げるよ!?
片方だけヒール無くして私シンデレラなっちゃうよ!?」
「シンデレラならねーよ!!」
「シンデレラは無理でも、この悪路を歩くなら革靴で決まりでしょ!昨日この道見た時から思ってたのよ」
革靴必須だったらドレス辞めろよ、制服着ろよ。
内心ではそう考えつつタカハシは答えた。
「なるほど!このタカハシ浅はかだったと言わざるを得ない!ナイス革靴!万歳革靴!」
だったら制服着ろよと言えない自分を『逆にカッコいい』のではと思い込むタカハシ。
何が『逆』なのかは判らない。
「じゃ行こうタカハシ!私たちの朝食はこれからだ!」
気合いを入れ右手を上げるマリコデスだったが、やはりその仕草はドレスを着てやるには似つかわしくなかった。