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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第5章〜帝天と八子〜

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第35話 スカウト

 それから舞子が寝るまで何事もなかった。


 しばらく日記を書いていないことを思い出して、寝る前に書いていない日から書き始めた。


 もう夜中で少し眠いが、忘れてしまう前に書いておきたい。


「(雅道様ですね?八子様がお呼びです。私に付いてきてください)」


 それは突然だった。


 八子が…………?


 俺は舞子側の人間やで…………?


「(は、はぁ…………)」


 渋々、行くことにした。


 日記を書いた紙は急いで隠したせいで、少し折れた。


 廊下に出ると、安良子さんも出ていた。


 きっと、安良子さんも呼ばれたのだろう。


 というか、呼ばれるようなことしたか…………?


◇ ◇ ◇ ◇


 八子の部屋は、全体的な御所の雰囲気とは違い、豪華な装飾が施されていた。


 とは言っても、派手派手しいというほどではない。


 相対的にそう見えるだけだ。


「あなたたちが、雅道と安良子ね?」


 今の八子は、朝見たときとは違い、少し威圧感を放っているような気がした。


 けど、怖がるほどではない。


 この人が萎縮…………?


 たまたまか…………?


「「は、はい…………」」


 俺は恐怖よりも、困惑で少し言葉を詰まらせた。


「伝えてちょうだい」


 八子は、俺たちを連れてきた男性に指示をした。


 その男性は八子の方に向いていた体を、俺たちの方へ向けた。


 正直に言って、この男性の方が威圧感はある。


「八子様は、あなた方を八子様の乳母、そして侍司として仕えるよう、御所望である」


「「え…………!?」」


 …………頭の回転が追いつかない。


 遅れて、理解が追いつく。


 …………八子側につけと!?


「もちろん、八子様に仕えれば今の待遇より良くするつもりである」


 この通りか分からないけど、あの上級女房が言っていた環境が良いって…………。


 というか、なんで俺たちなんや…………?


「あ、あの…………お気持ちは嬉しいですが、なぜ私たちなのでしょうか?」


 先に聞いたのは安良子さんだった。


「噂を聞いてね。あなたたちが来てくれれば、この子を安心して育てられると思ってね」


 さっきは困惑して気付かなかったが、舞子と同じく子供を抱っこしていた。


「「…………」」


 俺たちは言葉を出せなかった。


 ここで安易に鞍替えは出来ない。


 ましてや、敵側だ。


 舞子は俺を信用して、側の侍司にしてくれた。


 ここで鞍替えすれば、不義理も良いところだ。


「どうするの?」


挿絵(By みてみん)


 八子からも迫られ、俺たちは意を決して答えを出した。


「「私たちは——」」

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