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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第5章〜帝天と八子〜

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第33話 ベロンベロンだー

 安良子さんは部屋に着いた瞬間、眠りについた。


 何回も叩かれて、まだ少し痛みが続く。


 安良子さん、酔うとあんな風になるんやな…………。


「(雅道、安良子は大丈夫?)」


「(舞子様…………)」


「(雅道も、何回も叩かれてたけど、大丈夫?)」


「(はい、なんとか…………)」


 まぁ、痛みはまだあるんですけどね…………。


「(本当に大丈夫?)」


挿絵(By みてみん)


 舞子は心配した顔で俺の頭を撫でてきた。


「(え…………?)」


 なんだ、この複雑な気持ちは…………。


 舞子にこのようなことをさせてはいけない。


 けど、なんだか安心する。


 この2つが脳内で喧嘩している。


「(た、大したことではありませんから…………)」


 俺は、少し後退りした。


 このようなことをさせてはならない、その気持ちが勝った。


「(そう…………何かあったら、絶対に言うのよ)」


「(しょ、承知いたしました)」


「(それと、今夜は安良子の様子を見ておいて。心配だから)」


◇ ◇ ◇ ◇


「う、うーん…………」


 安良子さんは乱れた髪のまま起きてきた。


 俺はちょくちょく寝ながらも、安良子さんの様子を見守っていた。


 安良子さんは寝てから、寝返り一つ取っていなさそうだった。


 1回も目を覚ましていないのだろう。


「…………って、なぜ雅道さんがいらっしゃるのですか!?」


「昨日、酔っ払って、暴れてたんですよ…………。というか、体調はどうですか?」


「…………え?」


 安良子さんは何も覚えてない様子だった。


 まぁ、あそこまで酔っ払ってたら覚えてないのも無理ないか…………。


「も、もしかして、雅道さんにご無礼をしてしまいましたか!?」


「ま、まぁ、何回も叩かれましたけど…………どうってことないですよ」


 いや、正直に言って、痛かった。


 けど舞子を守ることが俺の職務やし、それよりも安良子さんが処罰されたら、俺が1人でやって行けるか分からない。


 まだ元の時代に帰れる方法も分からないのに…………。


「も、申し訳ありませんでした…………!!」


「とにかく、あのまま舞子様に触れなくて良かったです。俺は大丈夫なので」


「ま、舞子様にも…………!?」


「ま、まぁ…………。こうやって、俺が居るわけですから…………」


 安良子さんの顔は明らかに青ざめていた。


 もはや、倒れてしまうのではないかと思うほどに。


「すぐに謝罪に行かないと…………」


「そんなに急いだら——」


「あっ…………」


 部屋中。


 いや、御所中に響いたかと思うほどに、安良子さんが自分の十二単に躓いてコケた。


 御所用の服を着ていた俺は、咄嗟に動けなかった。


「いてて…………」


「大丈夫ですか!?」


「は、はい…………動けますので…………」


 安良子さんはそう言いながらも、立ちにくそうだった。


 俺は肩を貸す。


 前もそうだった。


 安良子さんは大丈夫じゃないことまで大丈夫と言ってしまう。


「安良子、大丈夫!?」


 安良子さんを立ち上がらせている間に、舞子がドタドタと到底出さなそうな足音を立てて、やって来た。


「「ま、舞子様!?」」


「すごい音したけど、大丈夫!?」


「ま、舞子様…………急に走るのはお辞めください…………」


 後ろからは、清見女房がやって来た。


 そう言えば、和歌の授業が入ってると言ってたな。


「昨日に続き、今日までお手を煩わせてしまって申し訳ありません…………!!」


 安良子さんはせっかく立てたのに、すごい勢いで土下座をした。


 足は痛くないのだろうか…………?


「大丈夫だから、今日はこのまま部屋に居ていいわよ。一子は私がお世話するから」


 流石の舞子もこの状況には、アワアワしている。


 俺も平然を装っているが、脳の処理が追いついていない。


「いえ、私のせいで舞子様にご負担は掛けられません」


「そう言って、安良子に何かあったら、私まで悲しいのよ」


 舞子の目は本当だった。


 お世辞でも何でもない。


「足を挫いただけですから、大丈夫でございます」


 その心配を吹き飛ばすように、安良子さんの目も本気だった。


 確固たる意志があるのだろう。


「…………そう。せめて、雅道に支えてもらいなさい。雅道、良いわね?」


「承知致しました」


 今更、断わる理由なんかない。


 泥酔した安良子さんをおんぶしたのだから。


「ゆっくり来なさい」


 そう言って、舞子は戻って行った。


 ゆっくり来なさいとは言っても、服はほとんど昨日のままだから、用意することはあまりない。


「…………では、よろしくお願いします」


「はい」


 俺は安良子さんをおんぶした。


 疲れのせいか、少し重く感じる。


 けど、安良子さんの身に何かあるよりマシだ。


「申し訳ありません…………雅道さん」


「これも俺の仕事ですよ」


 こんな公で、安良子さんが居ないといけないとは言えない。


 少し、気恥ずかしい。


 もちろん、そんな意味は無いのだが…………。


「失礼いたします。安良子と雅道、参上いたしました」


 俺は部屋に入ってから、安良子さんを降ろした。


 部屋には沢山の女房が居て、昨晩のことがあってか、少し白い目で俺たちを見ていた。


「…………早かったわね。本当に大丈夫なの?」


「はい、本当に申し訳ありませんでした…………」


「いいのよ。それよりも、歌合(うたあい)するわよ」


 歌合…………。


 宮中恒例の暇つぶし方法兼、実力を測るためのものだと聞いたことがある。


「そうね…………清見女房と安良子が対決してちょうだい」

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