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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第4章〜儀式〜

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第30話 お引越し

 俺は、荷物をまとめて、安良子さんのと一緒に、牛車に載せた。


 舞子からの指示だった。


 制服の入った風呂敷は奥底に入れた。


 もし、見られたら大変なことになるからね。


 色んなことがありすぎて、最近忘れかけてたけど…………。


◇ ◇ ◇ ◇


 それから、引っ越す次の日まで、舞子に仕えていた。


 安良子さんは、列の中ほどの牛車に他の女房の人と乗っていた。


 俺は、舞子の牛車の側で警備していた。


 意外とスピードは遅いから、余裕でついて行ける。


「ねえ、雅道」


 牛車の中から、舞子が話しかけてきた。


 周りの音で少し聞こえにくかったけど、何を言っているかは分かる。


「何でございましょうか?」


「安良子とお付き合いをしているの?」


「…………え?」


 それは突然のことだった。


 思わず、立ち止まってしまった。


 その間も、牛車は進む。


「何をしている?」


「あっ、すみません…………」


 後ろの侍司に声をかけられ、我に返った。


 …………付き合ってる!?


 いやいや、隠しているとはいえ、俺と安良子とは未来人と助けてくれた人っていう関係。


 表面(おもてづら)でいうなら、ただの女房と元町人という関係。


 家柄的にも無理やないかい!!


「ど、どうしてそのように見えたのでしょうか…………?」


「なんとなく、そんな感じがしたから」


 そんな感じ?


 他の人が見ている業務中、安良子さんと接した記憶はあんまりないぞ?


 確かに、業務外では殆ど安良子さんとしか、接してないけどさ…………。


「なんて、冗談よ」


 中から、笑い声が聞こえてきた。


 その笑い声は、クスクスといった小さな笑いではなく、子供が楽しくて笑うような感じだった。


「そ、そうでございましたか…………」


「雅道も、反応がおもしろいわね」


 その笑い声は、御所に着くまで続いた。


挿絵(By みてみん)


 そのおかげか、この行列の雰囲気は和やかだった。

 

 御所はとても立派なところだった。


 帝天側であろうお出迎えも大層なものだった。


 しかも、あちこちに見物人がぎっしりと我先にと言わんばかりに、この行列を見ようとしていた。


 行列は、帝天の住む建物の前に止まった。


 俺は、舞子と一子を抱えた和子さんを先頭に、次々と牛車から出てくる人たちを見送って、最後尾で歩き出した。


 ここでの任務は、部屋の中でも入り口付近で警備をすること。


 流石に舞子の近くは、帝天の侍司が警備するらしい。


 まぁ、帝天に何かあったらあかんからやろうね。


「東宮舞子、ただいま御所に戻って参りました」


 舞子が頭を下げたのと同時に、舞子側の全員が頭を下げる。


「うむ、ご苦労だった」


 相変わらず無表情の一馬帝天はそれだけを言って、それ以上は何も言わなかった。


 それを悟ったのか舞子と乳母が立ち上がり、それに続いてどんどん歩みを進めていく。


 すると、舞子たちの後ろを歩いていた男の人が、突然立ち止まり、俺に先に行くようにと小さく合図を出してきた。


 解釈が合っているか分からないけど、とりあえず舞子達の後ろを安良子さんと歩く。


 安良子さんの様子は少しぎこちないように見えた。


 多分、疲れだろう。


 歩いた先の部屋は、やっぱり豪華だった。


 むしろ、想像を超えるぐらいだった。


 間取り的には、帝天の部屋の東側だった。


 西側の対極には、八子たちが住んでいる。


 俺たちは次々と運ばれてくる荷物をテキパキと配置した。


 「内装はそのまま」と指示があったから、すぐに配置できた。


「皆、お疲れ様。今日はゆっくり休みなさい」


 続々と退勤していく。


 俺は安良子さんが倒れてはいけないと思って、近くを歩いた。


「安良子さん、お疲れ様でした」


「ま、雅道さんもお疲れ様でした…………」


「大分、お疲れじゃないですか?」


「牛車に乗っていたので、雅道さんほどじゃ…………」


 安良子さん、大分やつれている気がする。


 タイムスリップの時に逆戻りしている。


「何かあったら言ってくださいね」


「あ、ありがとうございます…………」


 そういう言って、俺たちは分かれた。


 荷物は、全部運び込まれていた。


 荷物検査をされた痕跡もなさそうだった。


 …………良かった。

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