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安良子の表と裏-一族の繁栄と政治闘争、その陰で交錯する人々-  作者: 綿ダッコ
第3章〜一大事〜

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第25話 どういうことよ!!

 タイムスリップした時よりも涼しい朝だった。


 というか、もう夏終わるんじゃね…………?


 そういえば、今日は安良子さんより早く起きてんな。


 俺は着替えて、朝ごはんを作った。


 2人分の食事を作ることが日課になっていた。 


 それでも、安良子さんが起きてくる様子はない。


 朝ごはんを持っていく時に、様子を見よう。


「安良子さん?」


 御簾の前から声を掛けても、返事が来ることはなかった。


 嫌な予感がして、俺は御簾を上げた。


「安良子さ…………寝てるだけ?」


 中に入ると、静かに寝息を立てていた。


挿絵(By みてみん)


「安良子さん、起きる時間ですよ」


 俺は体を揺すった。


 すると、安良子さんはゆっくり目を開けた。


「もう少し…………」


「何言ってるんですか、朝ごはんも出来てますよ」


「えっ、もうそんな時間なんですか!?というか、雅道さんが…………。すみません、すみません」


 良かった。


 寝坊しなくて。


「全然いいですけど、寝ているだけで良かったです」


「すぐに準備しますね…………」


「早めに作ってるので、ゆっくりで大丈夫ですよ」


「ありがとうございます…………」


◇ ◇ ◇ ◇


 今日は、立ち入りを禁止しなかった。


 だからか、結構な人数の上級女房が居る。


「そういえば、紅姫(あかひめ)はまだ来ていないの?」


 紅姫…………?


 上級女房のことかな?


 というか、誰も反応せえへんやん。


「…………お待たせしました」


 すると、1人の上級女房が入ってきた。


「紅姫、大丈夫?」


 何かあったんかな…………?


「…………舞子様、少しよろしいでしょうか?」


「ええ、良いわよ」


 紅姫は姿勢を正した。


 …………重要なことなのか?


「…………舞子様、女房を辞めたく存じます」


「…………どういうこと?」


 いや、舞子冷静やな。


 というか、なんで急に…………。


 宴をしたばっかりやぞ。


「実は、八子様からお声が掛かりまして…………」


 …………は?


 いやいや、しんどくなって辞めるってことなら、まだ分かる。


 やけど、八子から声が掛かったから…………?


「ちょっと、どういうことよ!!」


 和子さんが声を荒げた。


 それが、普通の反応だろう。


 舞子は顔色すら変える様子もない。


「舞子様を裏切るっていうの!!この大変な時期に!!」


 紅姫は、うなだれている。


 流石の舞子ですら、怒っていい案件だ。


 まだ、顔色を変える様子もない。


「何か言いなさいよ!!」


 和子さん!?


 紅姫の方へ走ったかと思えば、取っ組み合いが始まった。


 俺はすぐに和子さんを引き離した。


 初めて巳之助さんと対決した時以上の力を感じた気がした。


 巳之助さんも騒動を聞きつけて、部屋の中に居た。


「…………どうして、八子さんの方へ行こうと思ったの?」


 和子さんはまだ怒りが収まっていないらしい。


 まだ紅姫の方へ行こうとする。


 俺は体全体を使って、それを引き留めている。


 早く、答えてくれ。


「…………環境が良いからです」


「ちょっと!!」


 和子さんの力がどんどん強くなった。


 1人じゃ、抑えられないかもしれない。


「待ちなさい、和子」


 舞子の一声で、どうにか和子さんの力が弱まった。


 まだ体に押されている感覚が残っている。


「…………八子さんの方へ行きたいなら、行きなさい。良くできなくて、ごめんね」


 紅姫は、一礼して部屋を去っていった。


「和子」


「も、申し訳ありませんでした…………!!」


 和子さんは冷静になったのか、土下座をしていた。


「良いのよ。和子にも思うことがあったのでしょう?」


 そう言って、舞子は和子さんに近づいた。


 そして、頭を優しく撫でていた。


 お母さんと娘ぐらいの年の差に見える。


「でもね、あの人にはあの人の事情があるの。私は、それを止めないわ」


 和子さんは、完全に泣いていた。


 もはや、子供かと思うほどには。


 周りの空気が重い。


 取っ組み合いは解決したはずなのに、廊下で一息休憩したいぐらい重かった。

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