第13話 ただ感想を述べただけだよ……?
舞子の部屋から帰る途中、月がよく見えた。
町明かりがない分、よく光って見える。
もちろん、星も。
「空、綺麗ですね」
「…………そうですね」
安良子さんは、扇子で顔全体を覆っていた。
けど、それでも分かるぐらい、リラックスしている感じだった。
「でも、雅道さんが住まわれているところの方が、綺麗に見えるのではないですか?」
「げんだ——」
…………危ない。
俺は町人として、通っている。
未来人として受け入れられた訳じゃない。
こんなところで、言ったらどうなるか分かったもんじゃない。
「…………そうでもないですよ」
「…………なら、もう少し見ていきませんか?」
安良子さんは、建物の裏手に歩みを進めていた。
表よりは見にくい。
けど、真上にあるおかげで、見えなくもない。
「…………申し訳ありません。不用心でした…………」
「いえ…………、上手くやり過ごせば良かったですよね」
そもそも、俺から切り出したことだ。
しかも、会話としては変…………じゃない、はず。
「私が質問してしまったので。…………でも、会話の内容にはお気を付けください」
どういうことや…………?
別に感想を述べただけなはず。
和歌にしろってことか…………?
「和歌で言わないといけないんですか…………?」
「そういうことでは…………。行きましょうか」
安良子さんは、試験後のように表に戻って行った。
…………やっぱり、服装は関係ない気がする。
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちは自分たちの部屋に戻った。
部屋には、いつの間にか運び込まれていた装備が置かれていた。
俺は、焦って制服の置いてある棚を見た。
制服の入った風呂敷には触られていないようだった。
…………早く、処分しやんとな。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は、渡された服を着た。
この時代で服のサイズはあまり気にしなくていい。
いくらでも調整出来るからだ。
諸々の寝る準備を終えて、安良子さんから借りた服を丁寧に畳んだ。
「(雅道さん、服は…………)」
「(あっ、これです)」
扇子で、顔が見えない。
安良子さんが、扇子で顔を隠す時と隠さない時の違いがよく分からない。
「(では、お休みなさい…………)」
安良子さんは扇子をなおして、服を両手で持ち上げた。
月明かりだけで、よく見えなかったけど、耳の奥まで真っ赤な気がする。
十二単の重さは知らないけど、早足ぐらいで疲れるものなのか…………?




