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妖精の身体論

妖精メイドが主人に対面するとき、カーテシーという独特の礼法がある。

両手でスカートの裾をつまみ、片足を斜め後ろに引いて、もう片方の膝を軽く曲げるものだ。異国から伝わった挨拶で、紅魔館では根づいている。アリスが里の祭りで人形劇を見せるときも、観客に向かってこの種の礼をする。


妖精メイドが礼をするとき、地面にはつま先だけ着いていることがある。あまり地に足がつかない種族なのだろう。

館の階段を下りていく群れを眺めると、人間と同じように段を踏む者、足をつかずに体を進行方向に傾けて浮いている者が混ざっていて、統一感のない印象だった。


支えがなくても空中に留まることができ、窓拭きや壁の飾り付けに向いているが、台車を押したり穴を掘ったりするのは不得手である。掃除用のカートを前に、持ち手を押したり引いたりしながら足をばたつかせ、台車ごと横転してバケツの水をひっくり返した者もいた。



館の庭で、数匹の妖精メイドが庭に穴を掘っていたことがあった。

通りかかった美鈴が声をかけると、妖精たちは、メイド長に穴掘りを頼まれたんだと答えた。人が入れる深さまで掘ってもらう、と。


代わる代わるシャベルを握っていたが、土を刃先で少しすくってぽいと投げ、捗らない様子だった。削ったところの土の色が変わっていても、穴と呼べる物ではない。この様子では何日かかるか分からない。


見かねた美鈴はシャベルを受け取り、刃に足をかけて踏み込み、ざくざくと土を掘った。妖精たちは口々に、どうやっているのかと不思議がっていた。


「……シャベルは腕だけで振り回さず、こうやって土にまっすぐ差して、体重をかけて踏みながら使うこと。へその下に丹田というところがあって、そこに気を下ろしたら地に足がつくかもしれません」


美鈴はそう言いながらしゃがみ込み、メイド服の上から妖精の腹に触れると、妖精は「くすぐったい」と身をよじらせた。シャベルを持たせて手取り足取り教えていたが、あまりぴんと来ない様である。結局、仕事の合間にちょくちょく庭に行き、頼まれた穴を一人で掘ってしまった。


後日、美鈴はメイド長に呼び出されて、余計なことをしないようにと釘を刺された。

妖精は手が空くと良からぬことをするから、失敗しても害の少ない穴掘りを任せて時間を潰していたらしい。事前にそうと言ってくれれば良いのだが、メイド長は毎日忙しく、細かい話は末端まで届かないのが現状である。


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