14段目(お題:階段/著者:ゆりいか)
絞首刑の時の階段の数は決まっていて、おおよそ13段くらいだそうだ。
13という言葉は不吉で、13日の金曜日はイエスの処刑日だし、最後の晩餐に集まったのは裏切り者のユダを含めて13人。
銀貨30枚で農地を買ったユダの気持ちは如何ほどだったのだろうか。
受刑者は階段を登り、首に縄をかけて釣り上げられる。
現代の絞首刑は高い所から落とすことにより、首の骨を折って即死させる。
ただ、昔はそういう配慮はなく、じっくり時間をかけて首を絞めるため、非常に苦しい処刑方法だ。
けれど、もし14段目があるとしたらどうだろうか?
偶然にも縄がちぎれ、受刑者が地面に足をついた。14段目だ。
彼は神に生きろと命じられたのか、それとも単なる偶然なのか。
その答えを知るものは誰も居ない。だからこそ、14段目を踏んだ人間は処刑を免れることができた。
私はその14段目に希望を持とうとしている。
組織を裏切ったのは、ちっぽけな正義感だ。
麻薬が横行し、街の雰囲気が悪くなる傍ら。
見知らぬ他人が麻薬でラリる分には構わないが、妹が薬物中毒でチンピラとつるんでいたのには堪えた。
だから、その場でチンピラを射殺したら、そいつが組織の幹部の息子だった。
「観念したらどうだ! 出てこい!」
廃ビルまで追い詰められた私は、必死に逃げた末に屋上へとたどり着く。
外には黒塗りの車が並び、絶対に逃げることはできない。
捕まれば、死ぬよりも辛い目にあう。それならば、自殺をしたほうがマシだ。
「多分、大丈夫だ……大丈夫。14秒数えてから、打とう」
懐から取り出したのは、チンピラが持っていた薬物。
致死量には十二分に届いていて、これを一気に体に打てば死ぬ。いや、万が一に助かることもある。
いわば、仮死状態に賭けて、偽の自殺を演じるのだ。
「5、4、3、2、1……グウッ!」
使いまわしの不潔な注射器で思いっきり注入する。
すると、薬効が早かったのか、一気にめまいが襲い、トリップが始まる。
朦朧とする意識の中で、私はあることに気づいた。
「そうだ、14段目に行かなきゃ。アハハハ! 行クぞォ!」
ああ、そうだ。14段目にイくには、処ケイ台カら飛び降りるシか無い。そウダよな。
屋上をゆっクりとあるき出した。ちょうど十三歩だと思ウ。
「そーレ!」
14歩目ヲ踏むタメに、私ハ喜ンで屋上から飛ビ降りチャった。
トマトのように潰レた私は、14歩目のヨロコびに打ちヒシがれながら、寝タ。




