大図書館は迷宮のようで(お題:竜、天国、本/著者:ghost920)
おばあちゃんが昔言っていた。この本を開けるなと...
きれいな装飾が施された分厚い本。大図書館の最奥で見つけたものだ。家は代々、国の基幹施設である『大図書館』を運営している。俺はその8代目で『ハルト・フォン・ビブリオテーク』。親父が早くに死んだことで、14歳で大図書館を任された。色々大変だったけどなんとか3年間を乗り切ったところだ。
本は不自然なほどきれいで、鎖にまかれていた。明らかに開けるなって感じだけど、本は片づけなくてはならなくなった。そう、この図書館は閉鎖されるのだ。魔法の登場からすでに1世紀。人類は飛躍的進歩を遂げた。書物は減少の一歩をたどり、最近は客もめっきり減ってしまった。魔法による情報の保存は書物よりも簡単で、すぐに探せるし、何よりこんな迷宮みたいな建物がいらないのだ。俺も使ったことがあるからわかるが、図書館は確実に消える。
改めて考えると、少し寂しい気持ちになった。幼いころはここを探索してよく遊んだものだと感嘆にふけっていると、向こうのほうから「さぼるな!」という甲高い声が聞こえる。
「まーた見ない間にさぼってるわね!」
「さぼってねーし...」
幼馴染の『エリカ・テティス』。作業を手伝ってくれているのだ。彼女の平らな胸が目の前に来て、次は年齢の割に幼い顔と紅く長い髪、燃える瞳が俺の顔を覗き込む。
「なにそのやばそうな本?」
しらないよ、と適当に返して鎖に魔法をかける。強力な固定化魔法がかかっていたが、所詮は古い魔法だ。少し苦労したが鎖は解けた。
エリカはビビりだからか、大丈夫なのか何回も問いただしてくる。いっつもこんな感じだから、俺はまた適当に返答して本を開ける。今思えば、エリカの話をしっかり聞けばよかったと思う。
開けた瞬間、本からまばゆい光が放出される。トラップか?!
「あぶない!エリカ!」
とっさにエリカを抱いて地面に伏せる。けがをされたらたまったもんじゃない。エリカの小さい悲鳴と同時に、背後で爆発が起こる。周囲にあった本が散乱し、一部が焼け焦げた。
まばゆい光は収まり、聞いたことのない威圧的な声が響く。まるで世界が終わるのかというような、恐怖と、絶望、その中に自愛や救済が含まれる不思議な声。
「ちょっと...!いつまで乗ってんの!」
顔を髪と同じくらい真っ赤にしてエリカが俺を押しのける。だが、俺はそれどころではない。こんな圧倒的威圧感、絶対に強力なモンスターだ。エリカだけでも助けたいが、俺の魔法がどこまで通用するか...
振り向くとそこに現れていたのは、巨大で、恐ろしく、まさに恐怖を象徴するかのような!真っ白いドラゴンだった!と、一瞬勘違いした。そこにいたのは確かにドラゴンかもしれない。だけど、すごく『小さい』。どれくらいかというと方に乗れるくらい...これじゃトカゲだ。
拍子抜けしてポカーンとしていると、トカゲは不機嫌そうに話しかけてきた。
「おい!人間!我の話を聞いているのか?!今、すごく失礼なこと考えたな?!」
「だってトカゲじゃん...」
つい本音が出てしまった。後ろでエリカも首を縦に振っている。
「おのれぇ!我はヘブンズロードと謳われる、ドラゴンだぞ!」
その名を聞いて、俺は表情を凍り付かさざるを得なかった。そう、俺が生まれるよりもっと前、世界を混乱に陥れた破滅の竜の名前だ。
俺は今でも思う。あの時、本を開けなければと。
to be continuity




