石焼き芋(お題:秋/著者:小鳥遊賢斗)
子供の頃、近所に石焼き芋屋さんがよく通っていた。
いつから石焼き芋屋さんというものを知ったのか、僕はよく覚えていない。だが、恐らく本当に小さな頃から通っていて、物心ついたらそこにあった、ということなのだろう。
当時は恰幅が良かったせいか、買うとおまけで大きいサイズのものをくれたりした。
僕はそれをありがたく受け取っていたのを覚えている。
小学生のある時、暇を持て余した僕と友人は、石焼き芋屋さんに話し掛けながら、横に着いて行ったことがあった。
大した接点も無いのに、一体何を話していたのか、今では全く覚えていない。
ただ、毎日同じような遊びをしていて飽き飽きしていた僕らにとって、少しだけ迷惑なその遊びは、とても楽しかったのを覚えている。
こんなこともあった。石焼き芋が欲しくて500円を姉にねだったのだが、出してもらえなかった。
その時何故そうしたのかは覚えていないが、僕は姉が部屋に行ってからリビングで泣いていた。
何がそんなに悔しかったのか、そこまで石焼き芋が欲しかったのか? これも今となっては覚えていない。
結局姉がリビングに来た時、そんな状態の僕を見兼ねて、石焼き芋を自ら買ってきてくれたのだが。
それはとても嬉しかったのを覚えている。
そして季節が過ぎ、僕は段々と大人になり、中学になる頃には、石焼き芋を買うなんてことはもう無くなった。
いつしか僕の意識から石焼き芋のことは完全に無くなり、いつしか、石焼き芋さんは街を回らなくなっていた。
いつから街を回らなくなったのか、僕は全く覚えていない。
ただ、石焼き芋屋さんは幼い頃の僕に、沢山の暖かな思い出をくれた。それだけは、今も色濃く覚えている。




