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出来損ないのノア  作者: きなこ
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オトウサン

「はぁ、あ、はあ、ノア、はっ」

その瞬間、名前を呼ばれた。

その人物は息苦しそうに呼吸を繰り返している。

「、、、は?」

俺は思わず呟いた。それと同時に吐き気が俺を襲う。

「ノア、ノアぁ。」

どうしても逃げたくなって、逃げれなくて、でもなんとかしないといけなくて。

気持ち悪いを全部詰め込んだような吐き気のせいでうまく体が動かない。

「ごめんなさい」

口から飛び出たその言葉は俺の脳内を埋め尽くす。

不規則に息が吸われる音が響く。

「ノア。」

また名前を呼ばれた。

そしてその言葉がストンと暗闇に落ちた。

「ごめんなさい。」



「おいおい、ちょっとお行儀が悪いぞ?

パパとして躾けてやらねぇとなぁ。」

頭上から声がした。意地悪で、どこまでも嫌味な声。

ああ、なんだ。そういうことか。

息を吸って、吐き気を抑える。

落ち着いてきたと同時に、また吐き気に襲われた。

さっき俺は、魔石から目が離せなかった。

魔石を手に入れることしか考えられなかった。

後ろを振り向くと、そこには1人の男がいた。

シャツの前をだらしなく開けているが、そこから見える筋肉は彼の強さを表している。

銀色の長い髪がシャラン、とゆれた。

「、、、お前、何週間も帰らずに、いきなりがそれか?」

総司令官が冷ややかにそいつ、コールを見つめる。

「おいおい、硬いこと言うなよ、お義父さん?

俺には俺の人間関係ってのがあるんだよ。」

総司令官は呆れたように息を吐いた。

「まぁ、帰ってきたならいい。

働いてその分を返せ。」

コールははぁーい、と舐めたように返事をする。

「総司令官、あいつを甘やかしすぎですよ。もう少し厳しくてもいいと思いますけどね。」

お父様にあいつはねーだろ、と喚くコールは無視だ、無視。

「祖父のことを総司令官と呼ぶのもないだろう、ノア。ニアを少し見習ったらどうだ。」

「キャハハ、あたしは家族のことが大好きだからねぇ。おとーさん、おじーちゃん。」

「ククク、いいねぇ。

俺はお前みたいな奴、大好きだぜ。」

コールはいやらしく目を細める。

やっぱ苦手だ、こいつ。

「それにしてもノア、俺の能力にまんまとハマりやがって。

お前の冷静で綺麗なお顔が台無しだぜ。」

七つの業因が一番目、傲慢

コールの能力は、「宿業を慢する」。

初めて魔石を食べたときに、自分に最も合った属性である七つの業因が定められる。

それを自分なりに解釈し、変形させて得られるのが神の力、能力だ。そこで初めて宿主となる。

コールの属性は傲慢、能力としては相手のトラウマを見下し、刺激すること。

こいつらしい。

すると、うぅ、とうめく声が聞こえた。モニカさんと亦凡さんだ。苦しそうに顔を歪めている。

総司令官もいつもよりほんの少し眉間の皺が多い気がする。

俺は、コールの能力で冷静になったが、みんなはもう我慢できないだろう。

この魔石の甘いようで、辛いようで、硬いようで、柔らかいようで、美しいようで、可愛らしい、その全てに。

人の不幸は蜜の味ー。

まさにそうだ。

人の負の感情も、蜜の味。

亦凡さんが、さっとスマホを取り出した。

「、、、もしもし。亦凡だ。

 、、、ああ。今から魔石を食うやつを決めたくて  な。

 、、、そんなこと言うな。頼んだぞ。

 お前の医療力ならできるだろう。

 、、、おう。じゃあ頼んだ。」

亦凡さんが電話を終える。

「二グラムを呼んでおいた。

これで怪我しても大丈夫、だな。」

「悪いな、亦凡。」

総司令官の言葉に亦凡さんは軽く頷いた。

そして、総司令官が手に持つ魔石を部屋の真ん中へと置いた。

総司令官は魔石に対する執着が薄い。

それは個人差によるものだ。

しかし、手にずっと持った上、それを一度手放せるのはとても薄い証拠だ。

ニアがくかぁ、と大きなあくびをした。

妙に気まずい沈黙が漂う。

俺もだんだんと先ほどの熱が帰ってくる。

瞬き。

その瞬間、亦凡さんが魔石に向かって走り出した。

それを合図にみなが目を光らせた。

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