1話 私は同性愛者になってしまったのか?
それからというもの、ダビデは毎日そわそわしていた。
それはもちろん、あの雪山と温泉宿の件以来、ヤコブのことを意識してしまって仕方がないからである。
あの日を境に彼を見る目が変わってしまったような気がしてならないのだ。
そして、これまで何度も勝手に濡れてしまう謎の現象が起き、どれもヤコブと接した時ばかりだということにも気付いてしまっていた。ずっと偶然だと誤魔化してきたが、もう認めざるを得ない段階が訪れていたのだった。
(私はーーーご先祖さまに性愛反応を示しているんだ……)
この結論に至ることは必然だったと言えるだろう。
だが自分は元々男であり今も男に戻りたい気持ちも捨ててなく、心まで女になる覚悟など到底出来ないと思っているのも事実だ。
なぜか自分はこの世界に、女になって来てしまうという奇妙な運命を背負うことになり、それは自分への罰であり神の思し召だと思っている。
だが、自分はやはり男なのだーー体は女でも性自認が男である以上、男としての人生を歩むべきだと思う気持ちが強かった。
しかしここに来て問題が発生してしまったーー
それは、ヤコブに性愛感情を抱き始めている事実である。
(私はーーー同性愛者になってしまったのか・・・?)
同性愛ーーそれはダビデ達にとって信仰に反する行いであり罪とされている。
だが肉体が女であれば男を好きになることは同性愛にあたらないのか?
いや、自分は中身は男なのだから同性愛となるのか?
だが今の自分がもし女性を好きになったとすれば、女性同士なのだからそれは同性愛になるのではないか?
そもそも今の自分は女性に性愛感情を感じなくなっているーー異世界に来てそれどころではなかったからだと思っていたが、女性を見ても何とも思わないことにも気付いていた。
今の自分は男を好きになっても女を好きになっても、同性愛になってしまうのではないかーーー?
ダビデは人一倍真面目な性格でそして揺るぎない信仰心の持ち主だった。信仰に反する同性愛は死に値する行為であることを彼は誰よりも理解しているつもりだ。
まるで重い愛の十字架を背負ってしまったかのような感覚に陥ってしまい、その重さに耐えられず押し潰されそうになるのだった。
そんな中、また新たな事件が起こってしまうことになるーーーー




