6話 夜の火遊び(意味深)
和やかに食事をしていたのに急に泣き出したダビデ。
自分が裸を見てしまったからかと焦るヤコブだがーー
「どうしたんだ?ダビデ……」
「すみません。私の故郷の味に似ていたのでつい懐かしくなってしまって……」
(なんだそういうことか……)
ほっと胸をなでおろすと同時に、故郷の味に涙する彼女を見ていると温かい気持ちが胸に広がっていく。
(時代は違えど我々は同胞だからな。それにしても…この子は感情表現が素直というか正直だな)
純粋無垢な彼女を見ていて自然と笑みが溢れてくる。
何かしてあげたいと思わせられてしまうのだった。
(そうだ……!)
何かを思いついたのか突然立ち上がるヤコブ。
「今から少し面白いものを見せてやろう」
***
「わあ…!これは焚き火ですね、ご先祖さま」
ヤコブが用意したのは焚き火だった。
日が沈み、ランプの灯り以外に光源がない森の中では貴重なものだ。
夜営をするときはこうして火を灯して暖を取るのである。
「これをこうやって……ほらできたぞ」
2人は向かい合うように座るとパチパチと音を立てて燃える炎を見つめるのだった。
ゆらゆら揺れる炎は見ているだけで心が落ち着くものである。
しばらくの間沈黙が続くが不思議と気まずさはなかった。
「……ダビデよ。先程のことだが。君は年頃の娘なのに些か無防備ではないか?男が全てそのような生き物とは思わないでほしいが、中にはそういった輩もいるということを肝に命じておくのだ」
ダビデは黙って聞いている。
自分以外の男に裸体を見られることは耐えられないと思い、ヤコブはあえて注意したのだった。
「はい。肝に命じます」
素直に言うことを聞く姿に満足感を覚える。それと同時に焚き火の炎に照らされる彼女を改めて見つめる。
女性にしては短い髪だが癖毛で柔らかそうで、中性的な顔立ちではあるが整った美しい顔をしている。
頬は血色が良く健康的で、肌も肌理細かく美しい。
長い睫毛に縁取られ、凛とした大きな綺麗な目をしていて吸い込まれそうな魅力があった。
全体的に線が細く華奢に見えるのだが胸だけは豊満だ。そのアンバランスさが逆に魅力的に映るのかもしれない。
腰のくびれやお尻の形もよく、脚線美も素晴らしいものがある。まさに完璧なプロポーションと言えるだろう。
先程見たダビデの裸体を思い出し、ヤコブは顔が熱くなるのを感じた。慌てて視線を逸らすことにする。
思わず欲情してしまいそうになる自分を戒めるために、ヤコブはある女性のことを心に思い起こす。
(ラケルーーー私の愛した妻)
ヤコブは生前、先に亡くなった愛妻ラケルを深く愛していた。
彼の心にはまだ彼女の存在が残っていた・・・
しかし前の妻への想いとは裏腹に、彼の中で欲望という名の悪魔が囁くのだったーー