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★地球世界にも魔法はあるらしい

 目の前で楽しそうに魚の調理を続けるリリンを眺めながら、私はある事実に首を傾げている。

この、『地球世界』には魔法は存在しない。

そう教えてくれたのはリリンだ。

自分自身で『うぇぶさいと』を巡って調べた結果も、彼女の言葉と同じものだった。

それなのにコレはどうした事だろう?

目の前でリリンが行っているゲームスキルによる調理の高速化は、どう見ても魔法を使っているようにしか見えないのだ。

これはリリンがスキルを使っている時だけに限らず、イカ下足君たちがスキルを使っている場合も同様。

それについて私が「魔法を使っている」と言うと、彼らは口を揃えて言うのだ。

『ゲームのスキルって便利だよね』と。


 思えば、このセカンドワールドというゲームの存在自体がおかしいともいえる。

最初のうちは私自身も気づけなかったのだが、このゲームは『魂』を『仮想世界』に落とし込んでいるのだ。

いくら技術が進んだとしても、こんなことが人間に出来る訳がない。

となると、このゲームの作成には地球世界の神が絡んでいるということになってくる。

その神がなにを思ってこのゲーム世界を作ったのかは想像もつかない。

思惑は知れぬものの、そのお陰で私はリリンとの逢瀬を楽しむ事が出来ているのだ。

その神には感謝しかない。

リリンの暮らしている地球世界に行くつもりである私にとって、彼の世界にも魔法が存在しているという事が知れたのは大きい。

とはいえ問題はやはり、私の世界の魔法が地球世界で使えるかが分からないという部分か……。

セカンドワールドの中でキトゥンガーデンの魔法が使えないところから、地球世界でも同じである可能性が高い。

わがままな話かもしれないが、キトゥンガーデンへ帰る方法を確保しておきたいのだが……。


「アル、もうすぐ全部出来上がるよ」

「……うむ」


 リリンがせっせと作っているのは、私が苦手――と言うよりも、忌避してきた『魚』の料理だ。

だが、調理をしている彼女の方からは美味しそうな匂いがする。

リリンが作ってくれている、という認識のせいだろうか?

その事実だけで、あんなに臭いばかりだと思っていた魚が美味しそうな匂いに変身するのだとしたら、これはとても不思議なことだ。

 それはそれとして、リアルの方で食事を作ってくれている従妹には悪いのだが、彼女よりもリリンの方が料理が上手いのではないかと思う。

従妹の料理の腕が悪いのではなく、リリンの場合は、こう……タイミングを良く知っているというか、最適な瞬間が見えている(・・・・・)ように感じるのだ。

口に出して言ってしまうと、『スキル補正』と言う返事が返ってきそうなのだが。

むしろ、ゲームのスキルに邪魔されて本来の能力を発揮しきれていないようにすら見える。

本来の彼女が作る料理は、一体どんな味がするのだろう?

現状ではその疑問を解消する方法がないのが悲しいところだ。


「アルぅ……」

「どうしたのかね?」

「なんかね、ハーブソルトは調薬スキルみたいなの。作ってもらってもいいかな?」

「うむ、任せたまえ」


 好きな女性に頼られるのは、それがどんな内容であっても嬉しいものだ。

私は大喜びで彼女からの依頼に取り掛かる。


「とりあえず欲しいのは、大葉ソルトとバジルソルト、それからバジル・タイム・セージの三種類のミックスソルト」

「うむ」

「なんか、自分でやってみたら何故かこんな状態に……」


 そう言いながら見せてくれたのは、『ブラックマター』という消し炭のようなもので、どうやら作成に失敗すると必ずそれが出来上がるらしい。


「そんで、『調味料を作るためには調薬スキルが必要です』ってアナウンスが流れたの」

「なるほど」


 唇を尖らせながら文句を言っている彼女もまた愛らしい。

そんなことを思いつつ、言われたものを作っていく。

大して難しいものでもないから、三種類のハーブソルトは特に失敗もなく出来上がる。


☆ハーブソルト(大葉)☆

アイテムランク:G

説明:調味料

素材の臭みを取り除く為、料理の質が上がる。

最低価格10G


☆ハーブソルト(バジル)☆

アイテムランク:G

説明:調味料

素材の臭みを取り除く為、料理の質が上がる。

最低価格:10G


☆ハーブソルト(バジル・タイム・セージ)☆

アイテムランク:F

説明:調味料

素材の臭みを取り除く為、料理の質が上がる。

3種をバランスよく配合しているため、効果が高い。

最低価格:20G


 最後のものだけアイテムランクと価格が高いのは、使った材料が多いせいだろうか?

出来上がったものを早速リリンに渡すと、彼女は大喜びでそれを受け取って私の頭を撫でてから料理の続きを始めた。

どうせご褒美にするなら、頬にキスくらいしてくれても良さそうなものだ……なんて思ったものの、それを口に出すとまた彼女が固まってしまいそうだ。

私はその様子を想像して、ひっそりと口の端を持ち上げた。

次回から不定期更新になります。

多分、ついったーで更新報告……するはず? なので、アドレス載せておきます。

https://twitter.com/X3IhvbNhRwqFsDJ?lang=ja

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