★友達
りりんからは、散々理由を聞かせてる様にと視線で訴え掛けられたが、黙秘で通した。
イカ下足君に話した時に笑われたのもあるが、それを教えるとちょっとだけ、彼女の機嫌を損ねそうな気がするから。
家……というか、拠点が欲しくなった理由は単純だ。
りりんに付いて行商広場を歩いていた時に気が付いたのだが、女性の服に関してになるのだが、随分と色々な種類の物が売られているのだ。
彼女に手を引かれていなかったら、突発的に購入してしまっていたかもしれない物も中にはあった。
是非とも着て欲しいモノの、他の者の前では着て欲しくないモノもある。
そして、それを全て入手するのには所持品の枠が足りないのだ。
――そう、りりんに!
露出の高い服を着て見せて貰う為に!!
是非とも家は手に入れなくてはいけない!!!
家があれば、その中でだけ着て貰う事も出来るのだ!!!!
イカ下足君には笑われてしまったが、その為だけに? と言われても、そう思ったのだから仕方が無い。
幸いな事に、りりんもそういった施設があるのならば欲しがると言う自信があった。
私が彼女に着て欲しい服を入れる為の場所を欲するのと同様に、りりんは自身で使う事になりそうな素材を貯め込む癖があるのだ。
その保管場所と言う方向性で話せば……。
――……変にごまかさずに、素材の保管場所という事にして説明すれば良かった……。
後悔先に立たずということわざがこちらにはあるそうだが、まさにその通り。
そういう事にして話しておけば、彼女に不満げな顔をさせる事も、詮索するような目を向けられる事も無かったのだ。
かといって、今からその理由を言うとどう見ても後付けにしか聞こえない……。
少し途方に暮れながら、彼女の気持ちを他に向ける為の話題を考える。
イカ下足君も、他の話題を振ってみてはくれているのだが、彼女の気を逸らせる事ができて居ないのを考えると、中々難しいらしい。
仕方が無い。
本当の理由を彼女に教える事にしよう。
……嫌われたらどうしたらいいだろうか……。
「私はただ……君に、エロい服を着て見せてもらう為の場所が欲しかったのだ。」
確か、露出の高い服を表現するのはこの言葉で良かったはずだ。
イカ下足君には通じたし。
それなのに、私の周囲は突然沈黙に包まれてしまった。
行商広場の中に居るというのに。
見ず知らずの人々がつい先ほどまで賑やかに話していたというのに。
狼狽して周囲を見回すと、なんだか生暖かい視線を向けながら親指だけを立てた握りこぶしを私に向ける男性や、逆に唾でも吐きそうな顔で立てた親指を下に向ける男性の姿。
そして困った顔をする女性達。
訳が分からず、りりんに助けを求めようと視線を向ける。
きょとんと目を丸くしていた彼女の顔が、視線が合った瞬間、ふにゃっとゆがむ。
――あ。
その表情もかわいい。
思わず、その表情に意識が集中した途端、りりんがゲラゲラと笑いだす。
つられたように、周りにいた者達もクスクスと笑いながら、露店巡りを再開していく。
中には、私の背を軽く叩いて激励の言葉を口にする者もいる。
訳が分からない。
お腹を抱えながら笑い続けていたりりんの笑いの発作が去ったのは、それから暫くしての事だった。
「アルはアホだねぇ……。」
彼女は笑いすぎで出てきた涙を拭いながら、ため息混じりに言葉を続ける。
今までと何ら変わる事のないその態度に、ホッと体から力が抜けた。
「そういうのは、モノを見てから決めさせて頂きます。」
「お、着てくれるって。
良かったなぁ、アスタール君。」
「いや、モノによっては断る!」
「僕には、大概の物は着るって言ってる様に聞こえるんだわ。」
「そうねー。
よっぽどでなければねぇ……。」
「本当かね?!」
よっぽどのラインがどの辺りかは分からないが、大体の物は着て見せて貰えそうな返事に落ち込みかけていた気分が浮上する。
「買う前に、要相談ね?」
「うむ!」
「食いつきすぎだわ~!」
イカ下足君の言葉に、皆で笑った。
――友人というのは、もしかしたらこういうものなのだろうか?
助けが欲しいときに、さりげなく言葉を足してくれるイカ下足君に、ふとそう思う。
りりんやイカ下足君の中では普通にあるに違いない、こういった交流が初めてなのだと話したら、彼は驚くだろうか?
それとも、呆れる?
一緒になって笑いながら、私は頭の隅の冷静な部分でそんな事を考えていた。
2018/6/20 加筆・修正を行いました




