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転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
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45話 "躊躇はない"

目が覚めると、薄暗い石造りの部屋に居た。

眠気で思考が回らないし、視界はぼやけて明確に見えない。

なんでこんなところにいるんだろう。


体を動かそうとして違和感を感じる。

手が縛られてる、立った状態で縛り付けられているみたいだ。

足が痺れて倒れそうだったが、手が縛られているおかげで倒れなかった。


少しずつ記憶が戻ってきた。


路地で少女を助けようとしたら、細身の男に眠らされたんだ。

小太りと細身の二人組。小太りは明らかに悪い輩といった感じだったが、細身の男はこっちの警戒が和らぐように話しながら、不意を突いて無力化してきた。



そういえば少女は?


段々と戻ってきた視界、頭を動かして周りを観察する。

ジメジメした湿った空気、石造りで薄暗い小部屋。

天井からつるされた金具や不気味な木製器具。

地下牢の拷問部屋としか感じ取れない。


狭い部屋の中に少女の姿はないが、代わりに一人の男が居た。

小太りで腹立つ顔、私を攫った奴だ。


男はテーブルで何かをいじっている。

綺麗な長剣。あれ?なんかだいぶ見覚えのあるような...


「ちょっと!それ、私の剣!」

「...んん?ああ、なんだ起きたのか」


男が剣をテーブルに置いて近寄ってくる。

下卑た笑い、オークくらい醜い顔だ。


「あなた達が拉致とかやってる賊?これから私は奴隷として売られるの?」

「ハッ!話が早いじゃねえか」


ケタケタと気色悪く笑う男。

行動の全てがムカついてくる。


「本当はあのガキだけの予定だったが、お前が割り込んできたからな」

「あの女の子は?あの子はどこ?」

「牢に入ってるよ。出荷する奴は牢に入れとくんだが、お前は員数外なんだよ」

「...員数外?」

「予定にないんだよ。ウチから出す分はとっくに満たした、そうなるとお前はここに置いとくことになる」


ゆっくりと近づいてくる。

私の体を舐めまわすように、物色するような目で見る。

縛られた手を動かして縄を触る、結構古い縄みたいだ。


「出荷する奴に手を出したら殺されるが、員数外なら何してもいいんだよ...」

「ちょっと、臭いから近寄らないで」

「口はクソ生意気だが、体はまあまあ良さそうじゃねえか」


男は私の目の前まで近づくと、ズボンを下ろし始めた。

武器は持っていないようだ。



「ずっと籠りっぱなしで溜まってたんだよ...、ちょうどいグボギャッ!」


手の縄を引きちぎり、男の頭を掴んで向こうの壁に叩きつける。

思い切り壁に叩きつけたから、頭の形が少し変形した。

男が痛みで地面に崩れ落ちている間に、テーブルに置かれていた剣を取る。


「よかったぁ、剣が壊されてたらどうしようかと...」


刃も欠けてないし、鞘や柄も問題ない。

剣を抜いて男の方を向く。


「ゴホッ...ゴホッ...、おい待て!」

「ん?」

「俺を殺す気か?お前みたいなガキに、人を殺した経験があるのか?」


血を吐きながら男が喋っている。


「ないよ、モンスターしか殺したことはないもん」

「ほらな...。人を、殺す覚悟があるのか?ゴホッ...、ないだろ?ここからの出方を教えてやるよ、どうやって一人で出る気なんだ?」

「一人じゃないよ、私の相棒が来てるはずだから。それと...」

「は?」


剣を振り上げる。


「師匠に教わったんだ。『救いようのない悪人を斬るのに、躊躇は不要』って」

「おい待っ」




短槍が見当たらないので探していたけど、棚の方に置かれていた。

これで装備は全部元通り、脱がされていた革鎧も着なおせた。

床に転がる頭を蹴らないよう気をつけながら、ドアに耳を当てて外を探る。

人通りがないのを確認したら、ゆっくり開けて慎重に外を見る。


どうやら廊下があるみたいだ。

人は見当たらない、慎重に慎重を重ねてこっそり部屋を出る。

右側は廊下の突き当り、左側しか道がない。


きっと、シュウはここを探し出して来てくれている。

なんとなくそう信じているが、探して見つけるまでに時間はかかるだろう。

それまでの間に、ここに捕まっている人たちを助けなきゃ。

あの小太りは牢に入れてる、って言っていた。

まず牢を探さそう。



私が縛られていたのは一番下の階だったらしい。

同じ階には拷問部屋らしき部屋がいくつかあるだけで、人は一切居なかった。

あいつが私で遊ぶためだけにこの階に来たのだろうか、本当に気持ち悪かった。


上につながる階段を登り、少しだけ顔を出して覗く。

一瞬人が通っていったが、それ以外に人通りはなさそうだ。


近くに空いていたドアを見つけ、剣を片手に滑り込む。

中に見えるのは賊が一人、後ろ手にドアを閉め、賊が振り向く前に近づく。


一閃、驚く時間すら与えずに首を落とす。

すぐに剣を構えなおし、他の賊を探す。


が、部屋の中には他に見当たらない。

小さな牢が並ぶ部屋、牢の中には数人の少女や女性が閉じ込められていた。


急に部屋に現れ、賊を切り殺した私を全員が驚きと恐怖の目で見ている。

幸い口が布で塞がれていたので、悲鳴が響くことはなかった。


助けることしか考えていなかったから、ここから何をするべきかが思いつかない。



「えーっと...。私、みんなを助けに来たんだよ!賊じゃないからね!」

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