表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者の異世界旅行記  作者: 豆板醤
第3章 冬の旅と戦
46/68

44話 "正当防衛"

魔石ランタンを微かに点け、慎重に階段を下りてゆく。

ジメジメと古びた階段は、数十年は人が通らなかったのだろう。

一部が崩落し、人が何とか通れるほどに道が狭くなっている。


しばらく緩やかな階段を下ると、急に前の方が明るくなった。

階段は途中で崩落し、その下には通路が通っているのが見えた。

下に落ちないように、通路の中を覗き込む。


通路の中央、そこに誰かが立っている。

見張るように立つそいつは、黒いローブに短剣を持ち、かなり怪しい雰囲気だ。

見張りの後ろの方にある通路がおそらく本丸だろう、


ただ、このまま進もうとすれば気づかれるだろう。

クロスボウはあるが、ここで撃つ勇気が出ない。


「...サイレント」


自分の足に触れて小さく唱える。

最初に覚えたクラス3の魔術、音の発生を抑える魔法。


階段からそっと通路に飛び降りる。

足が地面に着いた時、ほとんど音は出なかった。

ただ、崩落した階段の瓦礫に着地してしまい体勢を崩してしまった。



「...っ!誰だ?」


見張りが振り向く。

急に現れた侵入者を前に、見張りの男は少し動揺している。


「ガキ...?どこから入ってきたんだ?攫った奴らに男は居なかったはずだしな...」


ブツブツとぼやき、短剣を手の中で回しながら近づく男。

俺を殺そうとしている。そして、男の目はそのことに一切の躊躇を抱いていない。


「大人しくしろ、一発で終わらせてや...グホッ!」


男が血を吐いて倒れる。

無意識の内に、大鉈を投げてしまっていた。


投げられた大鉈は首元に深く突き刺さり、少し藻掻いた後、男は死んだ。


呆然。

すぐに駆け寄るが、もう息はない。

反射的にやってしまったとはいえ、人を殺してしまった。


ゆっくりと刺さった大鉈を引き抜くと、傷口から血があふれ出てきた。


変な汗が体中から噴き出る。

『相手が先に殺そうとしてきた』と、正当防衛であると自分に言い聞かせる。

モンスターを殺すのと同じ、大差はない。

それより先にやるべきことが、サーシャを探さなきゃいけない。


立ち上がって通路の奥へ進む。

手は震えていたが、足は迷いなく進んだ。



旧牢と呼ばれていた通り、ここは古い牢獄のようだ。

何十年も使われなかった施設を、賊が不法に使っているらしい。


さっきの男は『攫ってきた』と言っていた。

こいつらが拉致とした人を違法奴隷として売っている匪賊の一派だろう。


サーシャもその標的になってしまった。

いや、サーシャのことだから、連れ去られようとする人を助けようとして巻き込まれたのかもしれない。


匪賊がサーシャを売り物にできると思えば、今も生きているだろう。

だが、売り物には向かないと判断されてしまえば、最悪の場合殺されてしまう。

相手は倫理のない犯罪者集団、早いところ助け出さないといけない。


前の方から足音が聞こえてきた。

慌てて壁に伏せて様子を伺う。


ちょうど壁のそばにあった障害物に身を隠し、足音が過ぎ去るのを待つ。


通り過ぎたのは見張りと同じような格好をした男。

その男は見張りが居た方へと歩いて行った。


このままいけばあいつは死体を見つける。

そうなれば警戒されてしまうだろう。


こっそり男の背後をついていく。

クロスボウを手に、慎重に弓を引く。


「...っ?!死んでやがる、モンスターが来たのか?」


男が見張りの死体を発見した。

矢をつがえ、クロスボウにサイレントとエンチャントを付与する。

深呼吸、男の頭に照準を合わせる。


「この傷、モンスターなんかじゃないな...。クソッ、侵入し」


震える手を握り締めてトリガーを引く。

音もなく矢が放たれ、男の頭に深く突き刺さった。

悲鳴を上げる暇もなく絶命し、地面に倒れる。


さっきよりも殺人への罪悪感が薄れた。

遺体を直視すると吐き気に襲われるので、すぐにその場を離れて通路を進む。



通路の奥には鉄格子の扉があった。

鍵は開いている、さっきの男が閉め忘れたらしい。

扉の奥は棚と椅子が二つ置かれた部屋、どうやら見張りの待機部屋みたいだ。


棚の方には一枚の紙が置かれている。

賊の暗号か何かで書かれていて読めないが、拉致した人の輸送管理表だろうか?

あまり時間を使うわけにはいかないので、軽く漁って部屋を進む。



部屋の奥には廊下と下に進む階段がある。

廊下の方を軽く覗くと、吹き抜けになっているのが見えた。

吹き抜けの下は階段の先と繋がっており、牢屋のある広い通路になっている。


廊下をゆっくりと進む。

下の階、通路をブツブツと呟きながら歩く細身の男がいる。

木札に何かを書くのに夢中で、周りに注意は払っていない。


先に進むにはあの男が邪魔になる。

排除するしかない。


矢に魔力を込め、サイレントを付与したクロスボウにつがえる。

さっきと同じように頭に照準を定める。

男は気づいていない、狙うなら今だ。


トリガーを引く。

さっきより簡単に引けた。


放たれた矢は音もなく一直線に進む。



男の頭に矢が突き刺さる寸前、魔力の障壁がそれを防いだ。


「...魔術師相手に、魔術での奇襲は下策だぞ」


細身の男がゆっくりと振り返る。

手にしていた木札を投げ置き、懐から刃の付いた杖を取り出す。


相手は魔術師、奇襲も失敗し位置もバレた。

俺が居る通路の先は行き止まり、この位置での戦闘はまずい。


「来い、侵入者の除去は早めに終わらせたいんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ