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異世界でも探偵やるのは難しい!!  作者: 虎ノ介


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3/3

不可解な結末

「もしかして“オットー”が盗んだんじゃないか?」


「なんでそう思うんだ?」ベントは首を傾げながら聞く。


「アイツが授かった能力は【盗みの極意】だろ?


だったら、能力を授かった直後に試しに使って、その時たまたまエマのブレスレットを盗んだ可能性がある。」


俺も能力を受け取った後、すぐに使ってみた。


十歳そこらの子供なら、好奇心で能力をすぐ使いたくなる可能性は高い。


「確かに、それはあり得るかも。それじゃあ、すぐにオットーを探そう。」


そう言ってベントは走り出そうとした。


「ちょっと待て。仮に俺たちがオットーを見つけて、ブレスレットを持っているか問い詰めたとしても、嘘をついて言い逃れるだけじゃないか?」


この世界では物的証拠を得ることがほとんどできない。


防犯カメラがないだけで、ここまで大変なのか……。


「その時は無理やり服の中を調べればいいんじゃないか?


相手は平民なんだから、貴族が多少乱暴なことをしても怒られないだろ?」


「確かにそうかもしれないけど、私なら盗んだ物をずっと持ち歩いたりはしないよ。」


普通、盗品を犯人がずっと持ち歩くことは少ない。


どこかに隠している可能性の方が高い。


「それじゃあ、どうしろって言うんだよ!」ベントは少し怒ったように言う。


「そんなの簡単だよ。貴族は何をやっても許されるんだろ?」


前の世界ならかなり危ない行為だけど……。



【第三ホール】


「なんで俺たちは貴族なのに、平民の後ろをこそこそ歩いてるんだ?」


ベントは相当プライドが高いようだ。


子供の頃から“貴族は偉い”と教え込まれてきたのだろう。


「これは尾行だよ。」


「尾行?」ベントは横で首を傾げる。


「尾行っていうのは、相手を監視して行動を調べたり、証拠を集めたりすること。」


「つまり、俺たちは今オットーを監視して証拠を集めてるのか?」


「そういうこと。」


「でも、なんでオットーが第三ホールにいるって分かったんだ?」


「執事さんに“オットーっていう平民はどこにいますか?”って聞いたんだよ。


そしたら第三ホールにいるって教えてくれた。」


前の世界なら、プライバシーの観点から居場所なんて普通は教えてもらえない。


しかも今の俺たちは探偵でもないから、尾行なんて普通に犯罪だ。


……これは悪行にならないよね、神様。


「これからどうするんだ?」


「まず、オットーがブレスレットを持っているかどうか、私が確認する。」


「そんなことできるのか!?」


「せっかくの能力なんだから、有効活用しないとね。」


鑑定を発動させると、平民たちが身に着けている物の情報が頭の中になだれ込んできた。


『マリーおばさんの手製の服』、『兄のおさがり』など様々だ。


全員分を確認したが、ブレスレットのような装飾品は一つも見当たらなかった。


「駄目だ。誰もブレスレットみたいな装飾品は持ってない。」


「どうやってそんなこと確認したんだ!?」ベントが驚きながら尋ねる。


俺はさっきやったことをベントに説明した。


「じゃあ、お前……さっきの数秒で数十人分の持ち物を鑑定したのか?」


「そうだよ。」


文字を読む必要がなく、情報が直接頭に流れ込んでくるから楽だな。


「鑑定にそんな使い方があったんだな……」ベントは感心したように呟く。


「そういえば、ベントはどんな能力を獲得したの?」


「俺の能力は、お前みたいに応用は利かないぜ? 【超再生】だ。


怪我をしてもすぐ治るらしい。」


ベントは少し残念そうに言うが、絶対その能力強いだろ……。


数分ほど待っていると、神父たちが平民たちに声をかけ始めた。


どうやらそろそろ解散らしい。


貴族は終わればすぐ帰れるが、平民はまとめて帰されるようだ。


「シュゲル、オットーが他の平民と違う方向に歩き出したぞ!」


確かにオットーは、他の平民とは逆方向へ向かっている。


「多分、あっちに盗品を隠してるんだ。静かについて行こう。」


気づかれないようオットーを追うと、彼は大きな壺の前で立ち止まった。


周囲を見回してから、壺の中へ手を入れる。


その瞬間、ベントが後ろから飛びかかった。


「うわっ!?」


驚いたオットーは、そのまま壺の中へ落ちてしまった。


急いで中を覗き込むと、オットーは大事そうに何かを抱えている。


「ベント、多分あれがブレスレットだ!」


ベントはオットーを壺の中から引っ張り出した。


「お前、何を持ってるんだ?」ベントが問い詰める。


オットーは怯えた様子で、手の中の物を差し出した。


ああ、この顔を俺は見たかったんだ。


“絶対にバレない”と思っていたトリックが暴かれた時の、怒りと驚愕、そして絶望が入り混じった表情を。


やはり子供の方が感情が顔に出やすい分、美しい。


『善行を行いました!!』


そんな言葉が頭の中に響いた。


どうやら善行を行うと、こうして知らせてくれるらしい。


ベントがオットーから奪い取った物を確認する。


しかし、それは俺たちが探していたブレスレットではなかった。


「これは……羊皮紙?」


オットーが持っていたのは、丸められた羊皮紙だった。


「なんでこんな物を平民のお前が持ってるんだ!?」


確かに、中世では羊皮紙は高級品で、普通は貴族しか持てないはずだ。


「僕が壇上で能力を授かった時、試しに能力を使ったらポケットに入ってたんだ。


売ればお金になると思って取っておいたんだよ。」


「もう戻っていいぞ。ただし、この羊皮紙は没収する。」


オットーは悲しそうに肩を落としながら、平民たちの集団へ戻っていった。


ベントが羊皮紙を広げる。


「シュゲル、お前って魔力壁を壊せるか?」


「いや、そんなことできるわけないだろ。」


おそらく“魔力壁”とは、魔力による封印のようなものだろう。


「だよなぁ。この紙、読もうとしても魔力壁でぼやけて見えないんだ。」


覗き込むと、文字の部分だけが薄くぼやけていて読むことができない。


「見た感じ、これは契約書じゃないかな?」


下の方には、赤い血判が二つ押されている。


「鑑定で調べられないのか?」


「分かった。やってみる。」


鑑定を発動すると、この紙の情報が頭に浮かんできた。


『魔力壁により、持ち主のみ判別可能。


ルキア教・中神官バルバトスが所有者です』


「持ち主は、バルバトスって人らしい。」


「バルバトスって、さっき俺たちの儀式を担当してた神官だぞ!


これ、届けた方がいいよな?」


「確かに。」


落とし物を届ければ、また善行になるかもしれない。


急いで、先ほどまで儀式が行われていた“与えの間”へ向かった。


どうやら貴族の儀式はすでに終わっているようで、中にはエマと老執事しかいなかった。


「ベント、シュゲル! 私のブレスレットは見つかった!?」


「いや……見つからなかった。ごめん。」


するとエマは再び泣き出してしまった。


そんなに大事な物だったのか……。


「とりあえず、この落とし物をバルバトスさんに届けよう。」


「そうだな。まだ壇上にいるみたいだし。」


ベントが壇上を指差す。


「バルバトスさん、これ落としませんでしたか?」


ベントが羊皮紙を差し出した。


「ああ、それ私が探していた物だよ。見つけてくれてありがとう。」


バルバトスは笑顔で受け取る。


「すまないが、中身は見ていないよね?」


「はい。魔力壁があって読めませんでした。」


その瞬間、一瞬だけバルバトスの表情が歪んだ。


だがすぐに笑顔へ戻る。


「それなら問題ない。これは重要な契約書でね、他人に見られてはいけない物なんだ。」


やはり契約書だったのか……。


エマたちのところへ戻った時、頭の中に不可解な声が響いた。


『悪行を行いました。』

少し文章の書き方を変えてみました。

読んでくれてありがとうございました

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