表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章 -冒険- (異なる次元)
35/59

35.新しい生活・セアン


 僕とエレーンの旅立ちはしばらくお預けされる事になった。


それはなぜか?セアンが望んだからだ。

この奇妙でハンサムな蒼い目の青年はなぜか僕から離れようとはしなかったのだ。


 セアンの住居はタジマが用意してくれた。(僕の隣の部屋に!)


まあ、身寄りもない上に日本の事情にも疎い事を考えれば仕方のない事ではある。

しかし、僕にもプライベートくらいはあるのだ。

なぜに個人的なレンタルビデオの趣味まで詮索されなくちゃならないのか。

それについて僕はタジマに携帯メールで抗議をしてみたのだが…「それだけ慕われているんでしょう。師匠として」などと返された。


そうなのだ。

セアンは勝手に僕を『師匠』と呼ぶのだ。


---


 良く晴れたある朝、僕はベランダのガラスサッシを大きく開く。


空には雲ひとつなく、落葉し終わった街路樹に冷たい風が吹き付けていた。

(空気はきりっとして本格的な冬の到来を告げていた)


猫のエレーンは大きく伸びをすると僕の脇をすり抜けてベランダの手摺りに飛び乗った。


 「Good-Mooooooonin’!!! MyMaster!(おはよう師匠)」

大きな声で隣のベランダからこちらに叫ぶ外人。


Hey!と大げさな身振りで挨拶をされてエレーンはシャーッと威嚇した。

「朝からうるさいわね」そっけなくヒゲを震わせて彼女はベランダから部屋に飛んで入る。


 「おぉぉ、やはり夢ではなかったですね。エレーンさんは話ができるんですねえ!」

流暢な日本語で切り返すセアンに僕は「おはようさん」と片手を振った。


 「ごはんは食べたのか?」と僕が聞くと、セアンはびっくりしたような顔を見せた。

ぷるぷると震えだしたセアンは次の瞬間にはベランダから引っ込んだ。

(日本語が伝わらなかったのかなと僕は首を捻った)

数秒の後、チャイムが鳴ったドアを開くと、セアンが部屋に飛び込んできた。


セアンの手にはお箸が握られていた。


僕はエレーンと顔を見合わせると、にっこりと笑った。(お箸が使えるなんてね)


 朝食は釜で炊いた白いごはんと焼き鮭とわかめの味噌汁と梅干だ。


「いただきまーす!」

セアンは臆せず僕達と共に食事を楽しんだ。

「おしいでーす」と繰り返す彼に、「美味しい」と言うのだと説明する。

(それにつけても、梅干を食べた瞬間のセアンの顔は見ものだった!)



 2005年の12月はそのようにして始まったのだ。



挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ