第110話「ワルキューレ」
デリトとウルレカッスルの激闘が繰り広げられる中、ウルレカッスルは最強の"権能"〈女神の全知全能〉を発動。彼は過去の異世界転生者の力をすべて使いこなせる存在だった。さらに、デリト自身がウルレカッスルによって創られた"三代目異世界転生殺し"であることが明かされる。そこへ死んだはずのユークリートが現れる。
デリトはウルレカッスルと戦っていた。
「<インフィニット・ウェポン>!」
空中に現れた無数の兵器が同時に火を吹いた。
「”権能”<絶対防御>。」
輝かしい甲冑に身を包んだウルレカッスルは全てをバリアで完全に防いだ。
「なっ・・・。それはネゲテーテの・・・。」
「その通り。これはネゲテーテの”権能”です。」
ウルレカッスルはデリトの反応が分かっていたかのように表情を変えずに答えた。
「”転生の女神”が”権能”を使えているのもウルレカッスルがなにかしているのか。」
「ええ。これは転生女神長にのみ与えられるXクラススキルです。それを・・・」
瞬間、常にまぶたを閉じていたはずのウルレカッスルの目が見開いた。
開いた目は真夏の太陽のように七色に輝き、そして闇の中に浮かぶ月のように暗い印象を与えた。
ウルレカッスルのその目が開く瞬間をデリトは今までの長い付き合いの中で初めて目にしたが、今まで戦ったどの魔王や異世界転生者よりも恐ろしいという印象を受けた。
「”権能”<女神の全知全能》と言います。」
余裕がある優しげなウルレカッスルの声はその反面、圧倒的な絶望を与えた。
「<女神の全知全能》だと・・・?」
「ええ。この転生女神長にのみ与えられる<女神の全知全能》は死んだ異世界転生者の”権能”を全て使うことができるのです。」
「全ての”権能”を使えるだと・・・?そんなことができてたまるか・・・!チート以上のチート能力じゃないか・・・!」
デリトは自らの<チート・キラー>がチート以上のチート能力だと言われていたことを思い出した。
「あなたの<チートキラー>も同様ですね。実は<チートキラー>は、所有者だった異世界転生者が死んだのちに私が”初代異世界転生殺し”マクスガムへ渡し、彼が魔王になる前に私自身が<女神の全知全能》によって使用していた”権能”です。言うなれば、」
ウルレカッスルはデリトを迎え入れるように手を広げた。
「私は”二代目異世界転生殺し”。あなたの前任です。ただ、私では<チート・キラー>を使いこなせなかった。
”管理者”によって、異世界転生を司るシステムとなってしまった私は、人の心を忘れてしまったのです。
だからこそ、あなたを創り出し、ルシファーの前世の記憶をコピーすることで人の心を持った、三代目となる”異世界転生殺し”デリト=ヘロという兵器を生み出した。」
「また、”管理者”か・・・!ユークリートによれば”管理者”とは”物語宇宙”を創り出し、管理している神なんだろう?
つまりはお前をはじめ、”転生の女神”や”魔王連合”はその指示で動いているということか?異世界を一つに統一することが神の意思だというのか・・・?」
「・・・・・・。」
デリトの問いにウルレカッスルは何も答えなかった。
その代わりに右腕をデリトのほうへ伸ばし、手のひらからレーザーを発射した。
「なっ・・・!<ダイヤモンドバリア>・・・!」
すぐさまデリトはバリアを出現させたが、すぐに壊され、光にのまれた。
「とある異世界転生者が使っていた”権能”<全破壊光線>。バリエーションも無く、応用は利きませんが全ての物質を蒸発させてしまうほどの超強力なレーザーを発射します。たとえバリアを張ろうともそれこそ防御の”権能”でも無ければ・・・」
「・・・残念だったな。かろうじて生きているぞ。」
爆煙の中から現れたのはデリトとモレネだった。
「成る程。いつの間にかライゼレの<操り人形の祝宴>が解除されていたのですね。」
実はエライトの一撃によってライゼレの気がそらされ、”業”が解けていたのだ。
「防御そのものの”権能”ではないが”権能”クラスの防御力超強化バフだからな。助かったモレネ。」
「いえ。ご無事で何より。」
だが、さすがに攻撃の”権能”そのものと比べると効果は薄く、バリアを張ったとはいえ、デリトもそれなりのダメージを負っていた。
「それにしても、お前の話でひっかかったことがある。もし、<女神の全知全能》が転生女神長にのみ与えられる”権能”ならば、ユークリートは何なんだ?
あいつも転生女神長だっただろう?」
「・・・彼女は偽の転生女神長です。」
ウルレカッスルはゆっくりと答えた。
「何だと!?」
ユークリートのつくった”O.W.H.L.”のメンバーであったモレネは衝撃を受けた。
「真の転生女神長は私でしたが、”異世界転生殺し”計画へ集中するために
記憶を書き換える”権能”を使って、転生の女神を中心に全世界の人を対象として私とユークリートの存在を入れ替えたのです。」
「そんなことが・・・」
「ええ。転生の女神という”物語宇宙”の理のひとつを司る神にさえ効果的なほどの絶対的な力。それが、”権能”なのです。
ただ、不可解なのは、ユークリートも含め、転生の女神全員の記憶をもとに戻したはずなのですが、ユークリートはその素振りを見せなかった。なぜ・・・」
ウルレカッスルが何か言いかけた時、空から何かが舞い降りてきた。
「答えを知りたい?」
にや、と邪悪な笑みを浮かべたのはウルレカッスルに実体を壊されたはずのユークリートだった。
「ユークリート死んだんじゃなかったのか!?」
デリトは驚いて声をかけた。
「あなたも死んでなくて良かった。うーん、そうね。あれは死んでるわ。」
そう言って、ユークリートが指さしたのは先程ウルレカッスルに槍で貫かれ、地面に横たわったユークリートの体だった。
「どういうこと・・・?」
モレネは頭を抱えた。
その時、デリトたちの周りに何人ものユークリートが舞い降りた。
「成る程。あなたも”権能”を得ていたのですね・・・。ですが、私はあなに”権能”を与えた記憶がありません。普通の転生の女神では”権能”を与えることはできても、得ることはできないはずです。」
ウルレカッスルは怪訝な顔をした。
「その通り。ただの転生の女神では”権能”を自分自身に与えることはできない。でも、貴方が私にあなたの記憶を上書きした時、この”物語宇宙”には私が”転生の女神長”だと誤認識された。
それによって私も少しは<女神の全知全能》を使えるようになったのよ。
あなたほどすぐに”権能”を切り替えることも、人に与えることはできないけれど、私も”権能”を選んで使うことができる。」
「・・・そうですか。つまりはあなたの存在は、私が引き起こしたこの”物語宇宙”のバグというわけですね。
”転生の女神長”には転生の女神や異世界転生を管理するという役目があったので、誰かにその役割を委嘱する必要があったとはいえ迂闊でした。」
「ふふ。私ひとりやワルキューレのみならず、全異世界中の記憶も書き換えるなんてあまりにも大胆すぎたわね。」
ユークリートは何かありそうな含みのある笑みを浮かべた。
「ですが、あなたの真意が分かりかねます。ユークリート、あなたは自分の記憶が書き換えられていたことに気づき、さらにワルキューレの三番機だと気づいたのに私に従わない理由は何でしょう?」
ユークリートとウルレカッスルの二人の話にデリトが割って入った。
「待て待て。そもそもワルキューレって何なんだ?」
「私が説明しましょう。」
デリトの問いにユークリートが答えた。
「ワルキューレとはつまり、ウルレカッスルという異世界でメインのシステム、つまり”異世界転生システム”の補助プログラムに過ぎない存在。
人ではなく、神でもない。存在ともいえるか分からない曖昧なもの。私自身でさえ”自分が何か”と定義できない可愛そうな”もの”よ。」
自嘲気味にユークリートは答えた。
「・・・そこまで分かっていて、私に逆らう理由は何ですか?ワルキューレの中で私の代理に据えたのはあなたが最も優秀だったからです。一時期でも私の代わりを務められるほどの。」
「そうね。だからこそというべきかしら。それとも、あなたに”転生の女神長”を体験させてもらったからなのかもしれない。つまりは欲が出てきたのよ。」
「欲だと?」
デリトが怪訝そうに聞いた。
「そう。」と少し切り立った残骸に立ったユークリートは妖艶な笑みを浮かべ、下にいるデリトを見た。
「私が”物語宇宙”の神になる!”管理者”という創造主を超えて異世界全てを統べるの!」
そう言って偽の転生女神長ユークリートは天に向かって大きく腕を広げた。
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