エピローグ
†
「『呪いのゴーストランド失踪事件』から4年後、『呪いのゴーストランド拷問事件』……か……」
車椅子に座りながらネットに上がったまとめサイトを閲覧し、音読している。白髪白眉に、左手の甲の大きなやけど跡が特徴的な女性――ノゾミ。
「センスのない事件名」
冷たく言い捨てたのは、長い黒髪が美しい盲目の女性――ヤヨイ。
「で、サイトにはなんて?」
そう言ったのは2人の付き添い――マリ。
「うーん、総じて言えるのは……」
「「言えるのは……?」」
「皆、怖い噂が大好きな馬鹿って事かな!」
にっこりと笑うノゾミに釣られ、ヤヨイとマリが苦笑する。
マリがノゾミの車椅子を押し、その隣に杖をつき歩くヤヨイ。
3人の目的地は母校である中学校であった。
事件のきっかけ、子供同士の些末な言い争いの現場。懐かしの教室へ。卒業生ですと言って、割と簡単に入ることが出来た。
ここに来た目的は、心中だった。
2度目の事件から2年後。それぞれこうして普通を装って外を歩くことが出来るようにまで回復して、遂にすべてを終わらせに集まったのだ。
「事件はハルナが犯人、ウチとノゾミが被害者、マリが助けを呼んだ友人として収束したけど、この中で1番苦しんでないのは誰だと思う?」
ヤヨイの問いにノゾミがマリを見やる。
「分かってる、私が最後でいいから」
「そ、分かってるなら良いけど。じゃあノゾミからだね」
「うん……」
ヤヨイが鞄から小さなペットボトルを3つ取り出すと、3人で囲った机の上に並べた。
どれもラベルはなく、ほんの少し透明の液体が入っていた。
「じゃあね、ヤヨイちゃん。パパとママとノゾミの、大切な思い出の場所。ノゾミは呪いなんて認めたくなかったけど、あれは本当に呪いだったね。ヤヨイちゃんと一緒に苦しんだ記憶は、最後の瞬間まで忘れないよ。一緒に立ち向かってくれてありがとう。心強かった」
「ウチもだよ」
「マリちゃんも助け呼んできてくれてありがとね」
「……うん」
「それじゃあね」
1本のペットボトルの液体を飲み干し、静かに目を閉じる。
「じゃあね、ヤヨイちゃんと……裏切り者の偽善者ちゃん……」
沈黙が満ちる教室。
ノゾミは微かにつり上げた口角をそのままに、そのまま眠った。
深い深い眠りに落ちていくノゾミを見守りながら、ヤヨイが口を開く。
「次はウチだな」
「……うん」
「あっちに逝く前に、いくつか教えてやるよ」
首から一つのペンダントを取り出し、それを握りしめながらヤヨイが続ける。
「色々分かんないことあんだろ? あれ以来ウチな、もうありとあらゆる亡霊達の声聞こえまくりなんだよ。で、『裏野ドリームランド』からどんくらい声が聞こえるかってーと、ざっと20人くらいだった。この異常さ分かるだろ? 遊園地に20人近い人間の魂が縛られてるんだ。まあ、それが教えたいことのひとつ。ふたつめ、ミラーハウスの鏡は可動式だった。あの、ぎぃって音あったろ? あれが鏡を動かす音だった。あとは……最後、助け呼ぶの遅すぎだった」
そう言うとヤヨイもペットボトルの水を飲み干した。マリはただ聞くことしか出来なかった。
「あ……後一個、これは地下室に入ってない裏切り者には分かんない話だと思うけど、ハルナの中身、あれ、ノゾミのお父さんだったらしいよ。まあ、人格的にはノゾミの知らない一面、ジキルとハイド的な事だったらしいんだけどさ。まあ、信じられないだろう……けど、そう考えると……あんな地下室があったこととか色々……合点が……っ……く、から……」
遠のく意識の中で、なんとかペンダントを開くヤヨイ。
「これ……」
ヤヨイの必死な様子にマリがそのペンダントを覗く。
瞬間、体の芯から凍り付くような感覚で鏡から目が離せなくなるマリ。
「なに……? これ……」
「あー、……ミラーハウスの中で割れてた鏡……。持ってたんだけど……はぁ、はぁ、拷問の時以来ずっと……はぁ、ノゾミパパの声がするから、持ってたの……この時のために……」
「それって……」
ガクガクと震えるマリ。鏡の中で自分が笑い出す。
「うん……ハルナと同じ運命を辿って死んで……裏切りも……の……」
そのままへたり込み動かなくなるヤヨイ。
残されたマリは動けないまま、だんだんと自分の中に他人が入ってくるの感じながら、目を瞑った。
最後までお読みいただきありがとうございました。
乱文ご容赦くださいませ。




