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プロローグ 私ってもしかして悪役令嬢?

「お嬢さま!!奥様!お嬢様がお目覚めになりました!!」

シエラはそう叫ぶと、バタバタと部屋の外に駆け出していった。


ん?シエラ??シエラって誰?

っていうかここはどこ?私はだれ…???


しばらく考えているうちにシエラが高貴そうな女性を連れて戻ってきた。

「アンジェリカ!あぁ!よかった…!」

高貴そうな女性が泣きながら抱き着いてきた。

「…お母様??私はいったい…」

「3日前に階段で足をすべらせて落ちてしまったのを覚えているかしら?お医者様に見てもらったけどなかなか目覚めないからみんな心配したのよ。」


3日も寝てたのね。そりゃ意識も朦朧とするわ。

少しずつ意識がはっきりしてきて自分のことを思い出してきた。

私はアンジェリカ・ドレノワール。クレール王国のドレノワール公爵家の長女。7歳。

軍部の頂点に立つお父様と由緒正しい侯爵家から嫁いできたお母様の間に生まれた。

そしてお母様の足にすがって泣いているのが弟のアーサー。

確かアーサーが持っていたおもちゃを落としてしまって、階段から転がり落ちそうになったのを拾ってあげようとして自分が階段から落ちてしまったんだったわ…。

自分がおもちゃを落としたせいで姉が3日間も目覚めなかったら不安にもなるわよね…。


「アーサー、心配かけてごめんなさいね。」

「おねえさまっ…!ぼくこそごめんなしゃい…」


あぁ!なんてかわいいのかしら!!

お姉ちゃん、なんでも買ってあげたくなっちゃうわ!

ト〇カがいい?プラ〇ールがいい??

…ん??この世界にそんなものあったかしら?

いや、そもそもこの世界には車や電車なんてないじゃない。


………。


どういうこと…?

この世界にはないけど確かに私は車や電車を知っている。

それだけじゃなくてこの世界にはない知識やアンジェリカではない人物の記憶が頭の中に確実にあるわ。

もしかして異世界転生ってやつなのかしら…。

だとしたら一体ここは何の世界…?


「アンジェリカ??どうしたの?まだ具合が悪いかしら?」


黙り込んでいた時間が長かったのか、お母様が心配そうに尋ねてきた。


「お母様、すみません。寝すぎたからか頭がぼーっとしてしまって…。少しだけ休んでもよろしいでしょうか?」

「もちろんよ。起きたばかりなのだから無理はしないで。シエラ、温かいミルクでも持ってきてあげて。」

「かしこまりました。」



侍女のシエラが厨房へ向かうのと一緒にお母様とアーサーも部屋を出て行った。

一人になったのでもう一度頭を整理してみましょう。

今の私はクレール王国にあるドレノワール公爵家の長女・アンジェリカ。もう一つの記憶は日本に住む25歳のOL・高橋凛菜。凛菜としての記憶は家で大好きな恋愛シミュレーションゲーム「ときめき☆プロジェクト~戦国時代編~」をプレイしてたら突然大きく揺れたところで切れてるのよね。

痛みの記憶もないから地震で家屋倒壊して即死ってところかしら…。ボロアパートだったし納得だけど、なんとも悲しい最期ね…。

大好きな黒田官兵衛様ルートをプレイして悶えてるところだったから、ある意味幸せな最期とも言えるかもしれないけど。



…?何か引っかかるわ…。



そうだ!

ときめき☆プロジェクトにはこの世界と世界観がそっくりな「貴族学園編」があったはず!

戦国時代マニアだった私は戦国時代編ばかりを周回していたけど、他にも「魔法学園編」や「現代学園編」みたいな世界観の違うバージョンでシリーズ化されていたーー。


もしかしてここは貴族学園編の世界観なの?


貴族学園編は攻略対象のビジュアルが好みだったから一通りプレイしてみたのよね。

世界観だけでなく国名や王家の名前もアンジェリカの知識と一致するわ…。

だとしたらアンジェリカもゲームのキャラクターの一人だったかしら?

アンジェリカ…アンジェリカ………。

あっ?!王太子ルートの悪役令嬢の名前、たしかアンジェリカじゃなかった?!


「完璧令嬢・アンジェリカ様」

学園の女王として君臨し、自分の婚約者と仲良くなるヒロインを疎ましく思い、自分の手は汚さずに陰湿ないじめを繰り返すーーー。


そうだ、このアンジェリカだ。

なかなかしっぽを出さないけど、あまりの卑劣な手口に断罪された際には勘当されて娼館に堕とされるというバッドエンド付き!



……なんてことなの…。

ラノベかよ!って突っ込みたくなるようなテンプレな悪役令嬢転生を体験することになるなんて…。

しかも困ったことに記憶が断片的すぎてバッドエンド回避するには情報が心許ないわ…。


一番単純なのは王太子殿下との婚約回避でしょうけど、現実的に考えて王太子殿下の婚約者候補筆頭は間違いなく私。

家柄も申し分なく、殿下とは同い年。しかも婚約を見据えて幼いころから厳しく育てられたから、自分で言うのもなんだけど同年代のご令嬢たちと比べてかなり優秀な方だと思うのよね。

そんな私が王太子殿下との婚約を回避するには相当な理由が必要になってしまう…。



…なんだか考えるのめんどくさくなってきたわ。


そもそもの話だけど、なんで婚約者に浮気された側が娼館にまで落とされなきゃならないわけ?!

そりゃ婚約者にどこの馬の骨ともわからない女がすり寄ってきたら誰でも怒るでしょうよ!

もちろんいじめるのはダメだけど、浮気した方にだって正義はないんだからお互い様じゃないの。

そんな訳の分からないご都合主義な展開のために私があれこれ努力して回避する必要なんてないんじゃない?

せいぜい、ヒロインをいじめてると思われない程度に上位貴族として遠回しにいさめる。あとは放っておくぐらいでいいわ。


うん。決めた。

婚約はなるようになる。ヒロインも、あまりにもひどい行動以外は基本放置。

それでも婚約破棄されたら…お父様に泣きついて隣国にでも留学させてもらおう。

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