SS 薔薇を愛でる会における上下関係の解釈(なお本人は知らない)
――最近、またローザの動きが怪しい。
ただのお茶会といえばそうなのだが、「男性は参加不可」と大々的に掲げているのが不穏すぎる。
「お前、お前、それ……」
サイラスが口元に手を当てて、震えながら俺を指さす。
「言うな。これから潜入する」
「は?どこに!?……その格好で!?」
「黙れ、お前も道連れだ。こいつを淑女に仕立ててやってくれ」
説明するのも面倒だ。
待機させていた侍従とメイドを呼ぶ。
あまり時間がない。
「――かしこまりました」
「え!?なんで!?いーやーだー!!脱がさないで!!」
「俺一人こんな格好だと恥ずかしいだろう」
「いや、一人でも二人でも恥ずかしいよ!?」
一時間後。
――意外と似合っている俺と、隣に並ぶただの女装男が、鏡の中に完成した。
◇◇◇
私は今日も、フローラに誘われたお茶会に参加している。
その名も『薔薇を愛でる会』。
「男性は参加不可」という不思議な原則のもと、社交界で話題の男性たちについて語り合う会だ。
「ローゼリア様。……最近、殿下はどうですか?」
「そうね。この間、サイラスに上着を着せてもらっていたわ」
(侍従なんだから当たり前だけど)
昨日見た二人の様子を話す。
それだけで皆さんが喜んでくれるので、少しだけ嬉しい。
きっと、王子様に夢を見ているのね。
「きゃーーー!!」
「絵になりますわ!きっと距離も凄く近くて……」
「ええ!ええ!サイラス様がそっと囁くのですわ。ほら、風邪をひきますよ。……心配させないでください、とか!」
ヒートアップしていく女性陣。
私はいつも、ルクス様とサイラスの情報を聞かれるだけだ。
お菓子が美味しいから、文句はないけれど。
それにしても、悲鳴が上がるお茶会。
とても不思議な光景だった。
――そこで、フローラのおっとりとした声が響いた。
「皆様、やっぱり殿下が上でしょうか?私は、逆転するのも……胸がドキドキしますわ」
一瞬、場が静まりかえる。
「キャーー!!それは……!禁断!」
「え……!サイラス様が!?俺様!?」
皆さん、殿下とサイラスの話を聞きたがっていたけれど、上?逆転?
――なるほど。
私は、ようやく話の要点が掴めた。
「ええ。実は、ルクス様は(歳が)下ですのよ。サイラスは童顔ですが、あれでも……」
「キャーー!!」
ご令嬢の悲鳴に、思わず口を噤んでしまった。
まぁ、いいか。
なぜか喜んでくれているし、フローラは嬉しそうに頬を染めている。
少し離れたテーブルに、大柄な女性が二人座っていた。
「……サイラス」
「おれ、帰りたい……」
「……おい、もっと離れろ」
「勘違いしないで!?」
◇◇◇
これを機に、なぜか巷では、上だの下だのと勝手に分類される貴族男性が増えたという。
そして『解釈』を巡って、喧嘩する婦女子の姿も多く見られるようになった。
――しかし、一番の人気といえば。
殿下が、上か下か。
それが真剣に議論される事になるのだった。
◇◇◇
夜中、王宮に響いたという絶叫。
「なんでこうなったーーー!!」
それを聞いていたのは、侍従とサイラスだけだった。
「……俺も泣きたいよ……」
サイラスの呟きは、ルクスの叫びにかき消されていった。
お読みいただきありがとうございました!
本作は、過去に投稿した短編とシリーズ作品を加筆修正し、一つにまとめた再編集版です。
ローゼリアとルクスの茶番に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!




