一日の始め
再び、大切なものを失ってから、3年の月日が過ぎた。
私は、王都にある学園へと紆余曲折を経て、入学。
成績としては、凡人故というか、《《とあるボお仕事》》が原因というか、良くも悪くもない。
いや、悪くて、中の下辺りかな?
まぁ、なるようになる………………のかな?
ちょっと、自信ないけど------------
とりあえず、さっさと、帰って眠ろうかなー。
そんな風に、思っていた時が、私にもありました。
「待ちなさい」
げっ!?
この声は---------
大きな欠伸をかきながら、それとなく帰路に就こうと、扉へ手を伸ばそうとした時だった。
背後から、聞き覚えのある声に呼び止められ、思わず、顔が顰める。
恐る恐る振り返ると、そこには、やはりというべきか、怒りにオーラを纏った一人の少女がいた。
いや、笑ってはいるんだよ?
いるんだけど、目が笑ってないんだよね。
相変わらず、迫力あるなぁ~。
「フィン・フィオーネ君。さっきの授業、また、居眠りしてたでしょう。いったい、これで、何回目なのかしら?」
フィンというのは、私の名前だ。
一応、良いところの貴族の長男でもある。
といっても、名ばかりで、きちんと家の名を背負えているかと言えば、そうじゃないんだよな?
どちらかといえば、お荷物的な感じか。
それに比べて、嫌味ったらしく、説教をして来るこちらのお嬢様は、名家、期待筆頭って所だな。
《シズク・アルベスタ》
王国内でも、権力の最上位の家の出で、学園のトップ。
学園の生徒会長でもあり、国王の信頼も厚い剣の腕も立つ才女で---------一応、俺の《婚約者》って事になっている(親同士が勝手に決めた)らしい。
その為、俺が授業中に、不真面目な態度を取ると、こうして、教室を出る度に、私に対して、ネチネチと説教をしに、呼び止めて来る。
まぁ、私なんかよりも、才ある弟の方が、遥かに優秀なので、この婚約は破棄される可能性が高いと踏んでいるが………………。
つか、家督も、弟に譲るんで、この女も受け取ってくださいませんかね?
ネチネチと嫌味ばかり言って来て………。
何? 暇なの?
というか、いつもの如く、話も終わりそうにないんで、こういう時は---------
「大変申し訳ありませんが、私、急ぎの用があるので、失礼しますね」
「ちょっと、待ちなさい!」
何か、言い掛けていたが、いつもの事だ。
それよりも、気を取り直して、寝よう。
《《今夜も忙しくなりそうだしね》》。
夜---------
夕日が、完全に沈み帰った頃、それが、私の本当の一日の始めとなる。
いつも通り、真っ黒な外套を身に纏い、学生寮から抜け出して、城下街へと繰り出す。
そして、建物という建物の屋根伝いに、パトロールを行っていく。
これが、私の日頃の日課だ。
その上で、目的のものを見つけるなり、スキルを発動する。
そのスキルとは---------《変身アイテム》だ。
《ジュエル・コンパクト》
《ダイヤ・スタイル》
右手に、コンパクト型の変身アイテムを掴むと、それを開いて、写し鏡を見つめて、言葉を紡ぐ。
ただ、それだけで、私は超絶的な身体能力と戦闘能力を備えた超人へと姿を変えられる。
「た、助けてくれえええーー!!」
「よいしょっと!」
屋根から勢い良く飛ぶなり、目標の頭、目掛けて、踵落としをお見舞いする。
足元に、視線をやると、蜘蛛の巣状に広がる地面に、頭部がめり込んだ狼型の魔物の顔があった。
「………………え?」
声のする方へ顔を向ける。
すると、そこには、今、足元の魔物に喰われそうになっていた初老くらいの男性が、何が起きたのか、分からぬという顔で、魔物と、私の顔を交互に、視線を巡らせて、腰を抜かしていた。
全く、そんなんじゃ、また、喰われかねないぞ?
まぁ、さっきまで、命の危機に瀕していた訳だし、当然の反応かな………。
「さっさと、逃げなさいな………」
ため息混じりに、そう言い残して、私はまた、駆け出した。
※暫く、プロローグ続きます




