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憧れて、絶望

 とある番組を見て、何となく思い付いた作品です。


 期待せず、楽しんでいただけるなら幸いです。

 《変身アイテム》



 そう言われる特殊なスキルがある。


 噂によれば、異世界から召喚された初代勇者が、魔王討伐の為に生み出した魔道具召喚型の特殊なスキルらしい。


 そのスキルを手にした者は、召喚された魔道具を用いて、《変身ヒーロー》---------あるいは、《変身ヒロイン》と呼ばれる勇者顔負けの《英雄》へと、その姿を変えるそうだ。


 その力は強大で、かの勇者と同等か、それ以上の力を持って、今の人類の平和は築かれていると言っても良い。


 私も、恥ずかしい事に、そんなヒーローに憧れた。


 分不相応だとは、分かってる。


 私みたいな凡人がなれる訳ないって事も分かってる。


 でも、諦め切れなかった。


 努力すれば、頑張れば、いつか、そんな馬鹿みたいな理想は叶うと信じて走った。


 走って------------自分の愚かさに気付いた。


 ふと、振り向けば、そこには、先程、未来を語り合った親友がいた。


 度々、喧嘩をし………それでも、互いに切磋琢磨したライバルがいた。


 馬鹿みたいに騒がしくて、凡人な自分には不似合いな程、良い奴だった。


 なのに………………………。








「何で、現実は、こんなにも不公平で、残酷なんだ!!!!!」







 私は声を荒げた。


 腹立たしかった。


 認めたくなかった。


 だけど、何も変わらなくて、ただただ、屍となった親友の身体を抱き締めて、泣き叫んだ。





 そして、私は全てを諦めた。



 夢も、未来も、何もかも投げ捨てた。



 そんな時、私の住まう町に、魔王軍が攻め込んで来た。


 突然の襲撃で、防衛にあたった騎士団は対処する事が叶わず、町の人々は、大パニックに陥っていて---------


 ほんの数分も経たぬ内に、いつも目にしていた穏やかな光景は、焼き尽くす炎と住民達の悲鳴に変わっていた。


 そして、私はまた、大切な人を失った。


 何で、こんな事に………………。


 私は神を呪った。


 呪って呪って、最後は、私自身を憎んだ。


 何も出来ず、見ている事しか出来ない無力な自分を---------


 今にも振り下ろされようとしている刃をじっと見つめている事しか出来ない役立たずな自分を---------


 あぁ、それなのに、どうして、こんなにも………………負けたくないって、思ってしまうんだろう。




『条件達成。スキル解放。《変身アイテム》を強制使用します』



 頭の中で、そんな声が響いた瞬間、私の全身から眩い光が放たれ………………振り下ろされた剣の刃を無意識に掴んでいた。



「何だと!?」



 自身の剣を受け止められた事に驚いた魔族。


 正直、この時、私も訳が分からなかった。


 だが、自然と受け止めた剣をただの腕力だけで、粉々に砕くと、頭の中に、また、声が響き渡って来た。



《セイント・ジュエル》



 それが、今の私---------


 私の名前---------


 なら、私は---------



 私は力強く踏み出すと、町を襲っていた魔族を全て倒す事にした。

 

 悪逆非道を繰り返す奴らを一人残らず、光の速さで、倒して、倒して、倒し尽くして---------



 気が付いた時には、私は町の広場に設置された仮設テントの中で、治療を受けていた。



 担当してくれていた医療スタッフの話によると、魔王軍は撤退。


 相手側も、相当の痛手を負っていたようだが、町側の被害は、それを遥かに上回って、悲惨だった。


 少なくとも、一万人弱いた町の住民の八割が死亡。


 防衛に当たっていた騎士や魔法師も、殆どが壊滅。


 最悪の状況だった。


 それから、数日が過ぎ---------この国の国王の意向で、町は放棄される事になり、生き残った私や他の住民などは、隣の町へ避難する事になった。


 幸い、私が寝泊まりしていた寮の部屋は、多少、火事で壁が焦げていただけで、無事だった為、部屋から必要な物だけを持って、王国から派遣された護衛の騎士団に先導されて、隣町へと移る。


 移動している際、多くの倒壊した家屋。


 そこら中に、瓦礫の間から除く、焼けこげたであろう手足。


 そこに、自分の家があったのだろうか、瞳から光を亡くした虚な少女が、母親を呼びながら、「一緒にお家に帰ろう」と瓦礫を漁っている痛ましい姿が、視界に入る。



「………………」



 そんな痛ましい光景を眺めて、思わず、下唇を強く噛んでいる自分がいた。


 口元から、赤い雫が、ポタポタと滴り落ちていく。


 傷口が少しずつ、真綿で首を絞めるかのように、静かに、ゆっくりと、心を蝕んで行った。


 そして、その日から、私の人生は著しく変わって行った。






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