08-怪しき影は、すぐ側に
~戦隊イエローサイド~
「何だよ………これ………」
第三王子が、あの女に、殴り倒された後、戦隊の仲間達や近衛騎士に任せて、あの女の後を追い掛けた《コング・イエロー》だったが………。
例の《《あれ》》が、保管されている大型の倉庫に到着するなり、言葉を失った。
今、彼が、目の前に広がる光景は、自分にとって、信じられないものだった。
彼の目の前に広がるのは、一方的に、彼女に蹂躙される異形の怪物達。
その周りには、彼女が、元に戻したであろう人々が倒れている。
しかし、彼が驚いているのは、そこではない。
「怪物の体液を浴びても………怪物になっていない………?」
そうイエローが驚いているのは、彼女の周辺で倒れている人々が、彼女との戦いで飛び散っている怪物の体液を浴びても、怪物化していない点だった。
普通、《増殖型》の怪物共の体液を一滴でも浴びてしまえば、何をどうしようとも、同じ怪物へと作り変えられてしまう。
そして、一度、作り替えられてしまえば、元に戻す手立ては、これまで、一つの例もなく、存在しなかった事だ。
しかし、彼女の浄化の力で、元の人間の姿に戻ったであろう人々は、奴の体液を浴びても、元の姿のまま、地面に伏している。
だとすれば---------
「あの女の浄化の力があれば………」
あの怪物共と渡り合えるどころか、討つしかなかった人達も救える。
そう言い掛けて、慌てて口を紡ぐイエロー。
「いや、そんな筈はない………。あいつは、王子を躊躇なく、殴り飛ばすような悪鬼だ。俺達に、力を貸す事なんかありえない」
それに、あの女は、レッドを痛め尽くした奴だ。
共に、肩を並べて戦う事なんか、想像し難い。
それ以前に………。
「俺が、あの女を許せる筈がない!!!」
憎々しげに、今も、怪物共と戦う彼女の背を見つめ続けるイエロー。
戦いは、イエローが、沸々と湧き上がる怒りと憎しみが満ち満ちるまで、続いた。
そして、最後の一体を浄化し終えた時だった。
イエローの存在に気が付いた彼女が、肩越しに、イエローの方へと見上げて---------イエローとの視線が合った瞬間、彼女は、小馬鹿にしたように、鼻で笑って、その場から姿を消した。
「っ………!!! あの野郎………!!!」
イエローの背に、何やら、黒いものが、燃え上がる炎のように、立ち込め始める。
「あの女は………あの女だけは………!!!」
その立ち込めた黒いものが、イエローの背後で、形を成し始め、何やら、生き物のように、蠢いていた。
その靄のようなものの口元が、三日月型のように、邪悪に、醜悪に、獣のような笑みを浮かべると、静かに、イエローの身体に、吸い込まれるようにして、入っていた。
その時だった。
「っ!? な、何だよ!? これは!!!」
突如として、イエローの身体に、異変が起き始めていた。
変身中だというのに、両腕が、異形に膨れ上がり、何だか、意識が、遠のいて行って………。
「た、たす………け………」
その声は、誰にも、届かず、イエローの身体が、足元の影のようなものに引きづり込まれて行った。
その後のイエローの行方は、誰にも分かる事はなかった。




