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第1話 風の聖者、召喚!(1)

 少女は不気味な森を駆け抜けていた。


 息を殺し、黒いローブを翻しながら、彼女は茶色のブーツで地面を蹴りつけて前へと進んでいく。


 腰まで届く金色の髪が激しく揺れ、端整な顔に大粒の汗が伝う。疲労で顔が歪んでも、その青い瞳は強い意志を宿し続けていた。


 やがて、その少女は海岸線の崖に辿り着いた。

 眼前に広がる海は黒く、空は黒紫色に染まっている。


 彼女はその場にしゃがみ込み、手ごろな石を掴む。荒れる呼吸を必死に抑えつけながら、少女は地面に幾何学模様を描いていく。


「はぁ、はぁ、これで、最後……っ!」


 少女は魔法陣のようなものを描き終えると、休む間もなく立ち上がった。彼女は踵を返して来た道を戻り、薄暗い森林を再び走り抜けていく。


 彼女が森を抜けると、城壁に囲まれた巨大な黒い城が目の前に姿を現した。城の姿形は西洋風のものだが、その周囲には禍々しい空気が色濃く漂っている。


 その城を目にしても、少女に怯える様子は一切無かった。


 彼女は周囲を見渡す。周囲には誰もいない、この辺りには自分一人しかいない。それを確認した直後、彼女はその場に跪き、右手を地面に押し当てた。


「ここで、私とこの島の魔力を合わせれば……っ!」


 少女は右手に意識を集中させ、ありったけの魔力を地面に放出する。


 彼女の手から白い光が発せられ、その光は少女を中心に地面を伝って広がっていく。それから一分も経たないうちに彼女の魔力はこの地一帯に行き渡り、島全体を覆うかのように一つの大きな魔法陣が浮かび上がった。


「よし、上手くいった!」


 少女は喜びを露わにするが、すぐに顔を引き締めた。

 体勢を変えないまま、彼女はさらに魔力を送り込む。


「異世界より出でよ……風の聖者!」


 彼女がそう叫んだ直後、魔法陣が緑色に変化し、薄暗い魔族島が強い光に包まれた。




 一方その頃、現代日本では。


 晴天の下、少年は歩いて下校している最中だった。


 彼の名は松峰将也。中肉中背で平均的な顔立ちの、ごく普通の高校一年生。どこにでもいそうな見た目をしていて、制服の長袖ワイシャツと黒ズボンが良く似合っている。履き慣れた白いスニーカーも、青いリュックサックも、彼の普通らしさを際立たせている。


 将也は赤信号を見て、横断歩道の前で足を止めた。


 なんてことのない信号待ちの時間になるはずだった。適当に空を見上げていれば、気づいたときには青信号に変わっている。そんな、代わり映えのない事が起こるはずだった。


 しかし、そうはならなかった。


 立ち止まってから数十秒後、トラックが豪速で彼に向かって突っ込んできた。

 将也はそれを目で捉えた。だが、咄嗟に動くことはできない。


(轢かれる……っ!?)


 将也は目を見開き、死を覚悟した。


 その時、突如として彼の足元に魔法陣が浮かび上がった。その幾何学模様から放たれた緑色や黄色の光が将也を包み込む。


 そして、トラックが少年を轢く直前に、彼は姿を消した。


 トラックは急激に速度を落とすも間に合わず、ガードレールに衝突して停止した。幸いにも車体は横転せず、怪我人は運転手一人で済んだのだった。





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