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虹の国のメイシア ~タロット譚詩曲~2  作者: メラニー
第五章 夜の国
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117話 楽園 23/33

ナギィと森榮しんえいは、森の中に身を潜めていた。

御嶽うたきから飛び出したものの、出てすぐの場所で、清明シーミーたちの声が聞こえたので、用心して身を隠したのだ。


案の定、清明たちがぞろぞろとやって来た。

清明は十三人。

どうやら、御嶽への侵入ができないようだった。

それだけ、カマディの力が他の清明に比べて強大だという事なのだろう。

しかし、清明たちも黙ってはいない。

あの手この手で、どうにか御嶽に張られた結界を破ろうと、念を込めていた。



「ネーネー、どうしよう……。オバアはどうなってしまうさぁ? 」

「しっ! 」

「ネーネーったらぁ…… 」

「ちょっと黙っているさぁ! 見つかったら、どうするばぁよ! 」


「でも……ここにいてても、オバアが言った事が出来ないからよ、」

「わかってるさぁ…… 」


ナギィは焦っていた。

このままでは、どうしようもない。家へ帰ることも出来ない。帰れなければ、オバアが言ったようにメイシアがここへやってきてしまう。

オバアがここまでして自分を行かせたからには、「メイシアの成すべきことに協力する」事は、とても重要なことなのだろう。


しかし、ここで動いたなら、絶対に清明たちに見つかる。

見つかったなら、どうなるだろう。

拘束は免れないかもしれない。

そこまで卑劣な事をする人たちではないと思ってはいるが、最悪の場合、自分たちの身の安全と引き換えに、オバアが御嶽から出されるかもしれない。


今するべきこと……

ナギィは考える。


オバアは、メイシアと共の行動しろといった。

しかし今、このスイはトイフェルによって攻撃されようとしている。

そして、それをきっとまだ、ここにいる清明たちは気が付いていない。

もし、今それを清明たちに告げたところで、オバアが手引きしたと清明たちは思うだろう。

だがオバアにかぎって、絶対にそんなことは無いのだ。それは、確実だ。


危機はそこまで迫っている。

オバアの力が絶大なのは目の当たりにしたが、トイフェルを今から迎え撃つとなると、この清明たちの力もきっと必要になるはずだ。どうにか誤解を解いて、清明たちが一丸となってほしい。

一体どうやったら……



『イヒヒ! ワッチに任せるさぁ!』


不意に、誰もいないはずの背後で、聞き慣れない子供の声がした。


「ひっ! 」


驚いて、振り返ったが、そこには誰もいなかった。


「ネーネー、どうしたさぁ? 」

森榮には聞こえていなかったようだ。


ナギィは咄嗟に声を出してしまった事を後悔しつつ、ゆっくりと前を向いた。

今の声で清明たちに見つかったかもしれないからだ。




しかし前を向くと違う理由で、状況が一変した。

清明たちが騒ぎ出した。


「ネーネー、あれ! 」


森榮が指さした。

ナギィは目を疑った。

初めてなのだ。


今まで、あんなに話には聞いたいたのに。

興奮して眠れない夜、布団の上で。好き嫌いして食べないとゴネた食卓で。時間を忘れて遊び過ぎて帰りが遅くなった玄関先で。散らかして、片づけをしなかった部屋で。

いつも話に登場していたのに、一度も見たことが無かったアレが、そこにいたのだ。


「……キジムナー………… 」


子供の体躯に、赤いバサバサの髪。目も鼻も大きく、耳はひときわ大きく、尖っている。

そして、褐色の背中には白い翼が生えていた。

その翼で、清明たちの頭の上をパタパタと飛んでいたのだ。


清明たちが悲鳴を上げてた。


恐怖に慌てふためく清明たち。

それを見て、キジムナーはいかにも愉快そうに腹を抱えて笑っていた。

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